労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  富山商工会議所 
事件番号  富労委平成23年(不)第2号 
申立人  自治労全国一般富山地方労働組合 
被申立人  富山商工会議所 
命令年月日  平成24年3月23日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人商工会議所が①平成23年度の賃金引上げ及び賃金体系に関する団交に誠実に応じなかったこと、②一方的に新たな昇格・昇級制度等を実施したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 富山県労委は、申立てを棄却した。  
命令主文  本件申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 被申立人商工会議所の一連の団交における対応は不誠実であるといえるか。 (1)団交の出席者について
 申立人組合は、商工会議所は権限のある専務理事を一度も団交に出席させず、権限のない事務局長を出席させたと主張する。しかし、商工会議所は、Y2常務理事・事務局長又はその後任のY3理事・事務局長に交渉権限を与えて団交に当たらせているのであるから、労使協定等において交渉員を定めている等の特別な事情がない限り、そのこと自体問題にする余地がない。組合の主張する権限のある者とは何を指すのかが明確でない上、なぜ事務局長に権限がないのかということについての具体的な主張がなく、単に事務局長では商工会議所での地位が低いという程度の主張であれば、その主張自体失当といわざるを得ない。
(2)団交の前に全従業員を対象に「運用表」の説明会を開催したことについて
 組合は、これは団交前に組合員に対して「運用表」(新しい給与体系)の説明をしたことになり、組合を軽視したものであると主張する。しかし、商工会議所が団交の前に「運用表」の説明をしておきたいとの思いを持ったとしても、それ自体非難されるほどのものではなく、組合との間に事前協議約款等が存在しているわけでもないのであるから、このことをもって、会議所が組合を軽視しているとまでは言えない。また、商工会議所は出席者の中に組合員が含まれていることを認識していたと考えられるが、組合は組合員の氏名を明らかにしていないのであるから、これもやむを得なかったといわざるを得ない。
(3)団交における実質的な協議の有無について
 組合は、商工会議所が団交において実質的な協議をしないまま「運用表」の実施をしたものであって、当事者間で行われた5回の団交は形式的に行われたにすぎないものであると主張する。しかし、事実経過からすると、合意点を見出すことができなかった原因は、結局のところ、組合は年齢別最低賃金制の導入を、商工会議所は「運用表」の実施をそれぞれ強硬に求めて態度を変えなかったことにあると判断される。したがって、商工会議所が合意ができないまま「運用表」の実施に踏み切ったとしても、当事者間に組合の同意がなければ労働条件の変更ができないとする等の約束がない上、「運用表」の実施が総体的には賃金の引上げになっていることやその適用時期が切迫していたことからすると、やむを得なかったというべきである。商工会議所は、「運用表」を実施していく中で不合理な部分については改正する考えを持っていること等からすると、賃金体系について今後も協議を継続する意思を有しているとみることができる。したがって、単に形式的な団交をしていたとみることはできない。
(4)賃金の支払いについての暫定協定について
 組合は、商工会議所が「運用表」の実施を決めた後、賃金の支払いについて暫定協定を結ぶための努力をしていないと主張する。しかし、仮にそのような暫定協定を結ぶための団交をする必要があったとしても、これは組合側から申し入れる事項であると考えられる。組合がかかる団交を求めた形跡はなく、上記の主張は本末転倒といわざるを得ない。
(5)その他
 認定した事実によれば、一連の団交に関し商工会議所に不誠実な交渉態度があったとは認められない。
2 商工会議所が一方的に「運用表」を実施したことが支配介入したといえるか。
 組合は、商工会議所が協議の整わないまま「運用表」を実施したことにより組合に対する組合員の信頼が揺らぎ、組合の存在価値さえ疑われる状況になったことが支配介入に当たると主張する。しかし、仮に組合が主張する事実関係があったとしても、このことから直ちに支配介入があったと認めることはできない。  
掲載文献   

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