労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成23年(不)第19号 
事件番号  大阪府労委平成23年(不)第19号 
申立人  X労働組合 
被申立人  株式会社Y 
命令年月日  平成24年3月27日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   組合員Cら3名は、申立外Z社から被申立人会社に派遣されて就労していたが、会社とZ社との労働者派遣契約の終了に伴い、Z社を解雇された。会社が大阪労働局から労働者派遣法違反に係る是正指導を受けた後、申立人組合が会社に対し、Cらの直接雇用等を議題とする団交を申し入れたが、会社は現時点では見合わせたい旨の回答を行った。組合は、大阪府労委に対し、会社が組合員らを直ちに雇用すること及び団交の実施を調整事項とするあっせんを申請した。このあっせんが成立し、Cらは会社において契約社員(雇用期間2か月)として就労を開始したが、会社は契約更新に際してCらを含む契約社員らに対し、次回の更新はしない旨記載された雇用契約書に署名するよう求めた。
 本件は、会社が①Cらが上記の雇用契約書に署名しなかったことを理由に、同人らの就労を拒否したこと、②その後、2回目のあっせんが成立したものの、Cらを速やかに就労させなかったこと、③更にその後、Cらが大阪地裁に申し立てた地位保全等の仮処分について和解(期間満了による雇用契約の終了の確認、会社による解決金の支払い等)が成立した後、組合が会社の「組合つぶし」に対する謝罪を求めて申し入れた団交を拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、申立てを棄却した。  
命令主文  本件申立てをいずれも棄却する。  
判断の要旨  1 組合員Cらに対する就労拒否について (1)あっせん案に係る労働協約の成立の有無
 申立人組合は、平成21年11月13日に成立した1回目のあっせんについて、労使双方があっせん案を受諾し署名押印していることから、その内容が労働協約として有効に成立しており、あっせん案には、契約期間については2か月を単位とし更新を前提とする旨並びに雇用計画及び賃金等の条件を変更する際は労使双方が誠実に協議する旨が記載されているから、被申立人会社が組合と協議を行うことなく雇用契約書に記載された労働条件を変更することはできないのであって、次回の契約更新はしない旨が記載された雇用契約書に署名しなかったことをもってCらの就労を拒否することは許されない旨主張する。
 しかし、あっせん案そのものには組合と会社の署名押印があるわけではなく、あっせん案に示された内容の合意が成立したとはいえないから、組合のいう労働協約は成立していないものといわざるを得ない。
(2)会社の対応に組合の弱体化を図るところがあったか否かについて
 被雇用者は会社と雇用契約書を締結した上で就労を開始するのが通常であり、会社がCら3名の契約更新に当たり雇用契約書への署名押印を求め、署名押印がなかったことを理由にその就労を認めなかったことについては一定の理由があったと認めることができる。また、会社が組合員以外の者に対して、恒常的に雇用契約書に署名押印を求めないまま、就労を認めていたという事実の疎明もないことから、会社が組合を嫌悪し、弱体化を図って契約書に署名押印を求めたとみることもできない。さらに、組合は上記あっせん案の「更新を前提とする」との文言について繰り返し更新されることと解しているのに対し、会社は一度は更新しているから文面に沿って対応しているとしており、当該文言をめぐって見解の相違があったことが認められるところ、更新なしと記載のある契約書への署名押印を求めた会社の対応はかかる見解の相違によるものというべきであって、組合をないがしろにした結果によるものであるとはいえない。
 一方、あっせん成立後における組合の対応についてみると、あっせん案に記載されていた時給の見直しを会社に要求し、見直しがない限り、あっせん案で雇用予定とされていた組合員らも就労を開始しない旨通告し、無期限ストライキまで行い、この間、あっせん案に沿って労使協議を行おうとしなかったことは、一方的であったといわざるを得ない。
 これらのことを総合的に判断すると、あっせん成立後、時給の引上げについて労使双方の意見が対立し、その後、労使いずれからもあっせん案に沿った協議の申入れがなされないまま本件就労拒否に至ったとみることができ、協議が行われなかったことについて会社にのみ責めを負わせることはできない。
(3)結論
 以上のとおりであるから、本件就労拒否は組合の弱体化を図った支配介入ということはできない。
2 2回目のあっせん成立後、Cらを速やかに就労させなかったことについて
 2回目のあっせん成立後、会社が組合に、あっせん案の趣旨に沿った雇用契約書の内容について協議したい旨の団交を申し入れたのに対し、組合は「契約の更新なし」としないことを会社に求め、その履行を協議の前提条件としていたということができ、その結果、協議には至らなかったものと認められる。両あっせん案についての組合、会社いずれの見解があっせん案の趣旨に、より沿ったものであるかは別として、組合が上記のような姿勢に徹し、結果的にあっせん案に沿った協議が行われなかったということができ、会社の対応にとりたてて組合をないがしろにした点があったとはいえない。
 以上のとおりであるから、会社が2回目のあっせん成立後、Cら3名を速やかに就労させず、その後、同人らの雇用契約を更新しなかったことは、組合の弱体化を図った支配介入とまではいえない。
3 平成23年2月21日の団交申入れに対する会社の対応について
 組合は、①使用者は議題によって団交応諾義務を課せられるのであって、仮処分和解により組合員が存在しなくなったから、組合が会社の雇用する労働者の代表者ではない旨の会社の主張は失当である旨、②仮処分和解により清算されたのは、Cら3名の賃金仮払いだけであり、会社の不当労働行為などは清算されていない旨主張し、会社は団交に応じるべきであると主張する。
 しかし、会社には謝罪を求めることのみを対象とする団交に応ずべき義務があるとはいえないし、仮に本件団交が「会社による組合つぶし」があったことを前提とし、その是正や労使間のルール作りを求めるものであったとしても、既に組合員は存在しなくなっているのみならず、和解において組合員との紛争は全て解決されているというのであり、また、近い将来、組合員が雇用されることがあるとの現実性ないし具体性がうかがえる状況でもないことからすると、組合と会社との間で改めて労使間のルール作りに向けて協議する必要性があったとは認められず、団交に応じなかった会社の対応が不誠実であったとは認められない。  
掲載文献   

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