概要情報
事件名 |
川島タクシー・川島タクシー(第2)・川島タクシー(第3) |
事件番号 |
福岡労委平成23年(不)第5・6・9号 |
申立人 |
合同労組レイバーユニオン福岡 |
被申立人 |
有限会社川島タクシー |
命令年月日 |
平成24年3月23日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が①組合員X2に対し、同人に居住を認めていた会社所有の住居を退去するよう繰り返し求めたこと、②同X3に対し、本来従事すべき業務に従事させずにその賃金を減少させたこと、③同じくX3に対し、退職を強要する発言を行ったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
福岡県労委は、申立てを棄却した。
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命令主文 |
本件各申立てをいずれも棄却する。
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判断の要旨 |
1 組合員X2に対する本件住居からの退去を求める発言について
X2が本件住居に居住することになった経緯を見ると、同人の採用に際して、被申立人会社の好意により、同人が希望する住居を見つけるまでの間につき無償で提供されたものであることが認められる。このことからすると、X2が適切な住居を見つけるのに必要な時間は既に経過しているというべきであり、会社はいつでも同人に対し、本件住居からの退去を求めることができ、同人としても、そのような要求があればこれに応じなければならない立場にあったものと考えられる。したがって、X2が退去要求を受けたとしても、やむを得ないというべきである。
会社社長及びその妻からのX2に退去を求める発言は、それぞれ1回だけで、時間も短い上、その後、会社が重ねて退去を求めたという事実は存在しない。また、結審時においてもX2は本件住居に居住していることも併せ考えれば、それらの発言が同人の申立人組合への加入を知ったことを機縁に行われたという点は否定できないとしても、単なる退去の示唆にとどまるものであって、労組法7条1号の不利益取扱いに当たるとまではいえない。
2 組合員X3に対する業務外しについて
組合は、①X3が会社に対して労働条件を明示する書面の交付を求めた平成23年2月以降、同人の賃金は前年及び前々年に比べ減少している、②会社は同人のタクシー業務に関しゴールデンウィーク期間中などに差別的配車をして同人の従事日数を減少させるなどした、などと主張する。
そこで、X3及び他の2名の乗務員について23年2月から6月までのタクシー乗務日数の対21年同期比、対22年同期比をみると、X3の乗務日数はいずれも減少しており、他の乗務員と比べ減少率が高いことが認められるものの、その差はわずかであり、また、他の乗務員よりも減少率が低い月もある。このような部分的な減少率の高さをもってX3に対する業務外しがなされたと認めることはできない。また、組合はゴールデンウィーク期間中のX3の出勤日数が他の乗務員よりも少なく、差別的取扱いを受けている旨主張するが、ゴールデンウィーク期間中の数日間のみを対象として比較検討すべき特段の事情も認められない。
次に、タクシー乗務手当と比例関係にあるタクシー売上額についてみると、23年2月から6月までの期間におけるX3の1日平均売上額は対21年同期比、対22年同期比で減少しているものの、その減少率をタクシー乗務員として稼働した者全体と比較すると、X3の減少率が全体の減少率を上回っているのは対22年同期比のみで、対21年同期比はX3のほうがむしろ低い。また、X3の対22年同期比減少率が全体よりも高いのは、タクシー乗務員全体の22年の1日平均売上額が前年より減少したのに対し、X3のそれは増加したことに起因している。このような数値からみると、X3のタクシー乗務手当の減少率がタクシー乗務員として稼働した者の平均の乗務手当の減少率よりも高いということはできず、その他、組合からX3に対する業務外しにより同人のタクシー乗務手当が減少したと認めるに足る疎明はない。
以上のことからすれば、X3の23年の賃金のうちタクシー乗務手当の減少が会社による業務外しに起因するものとまで認めることはできない。よって、労組法7条1号の不利益取扱いには該当しない。
3 X3に対する退職強要発言について
組合が退職強要であるとする会社社長の妻の発言は、X3が会社の業務上の指示に関連して反論し、無断で話合いを録音するといった態度をとったことに対し、とっさに言い返したものであって、このような感情的な対応が使用者として適切な態度であったかどうかはともかく、この発言をもって、格別にX3に対する退職を強要する意図でなされたものということはできない。したがって、労組法7条1号の不利益取扱いには該当しない。また、上記発言がなされた状況からすれば、特段に組合弱体化につながるとも認められないことから、同条3号の支配介入にも該当しない。
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掲載文献 |
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