労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  京都精華大学 
事件番号  京労委平成23年(不)第7号 
申立人  京都精華大学ユニオンSocoSoco 
被申立人  学校法人京都精華大学 
命令年月日  平成24年3月21日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が①有期雇用の嘱託教職員の契約更新回数に上限を設けている制度の廃止に関する団交に誠実に応じず、更に団交を拒否するに至ったこと、②法人の日本語リテラシー教育部門の助手であった組合員2名が2回の契約更新の後、助手の募集に応募した際、不採用としたこと、③団交の開催について条件を付し申立人組合に強要したこと、組合掲示板の提供に条件を付したこと等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 京都府労委は、法人に対し団交応諾を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、申立人が、被申立人の嘱託教職員の雇用契約更新回数に上限が設けられている制度について、平成23年1月18日の当委員会のあっせんで合意されたルールに基づいて、団体交渉の出席人数は双方5名以内で申立人側は組合員以外の出席者が過半数とならず、かつ、被申立人の学生を出席させないこと及び1回の団体交渉は2時間を超えないこととの開催条件を提示して団体交渉を申し入れた場合には、これを拒否してはならない。
2 申立人のその余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 団交における被申立人法人の態度について
 申立人組合は、法人の専務理事Y2が予定された団交期日を遅延させ、一貫性を欠く団交の開催条件の提示を行い、団交において組合員の不採用について不誠実な説明を行い、文書化を拒否して議事進行を遅延させるなど交渉担当者として不適格な態度をとってきたと主張する。しかし、組合の主張に沿う事実も認められるものの、団交全体の経過からみれば、Y2は更新上限制度の廃止という要求に応じていない理由について具体的に説明するとともに、これに関連する組合の質問に対しても必要な調査を行った上、回答したものと認められ、このような態度は交渉担当者としての誠実交渉義務に反するものではなく、交渉担当者として不適格とは認められない。
 また、組合は、法人の組合に対する回答書に主観的意見が記載され、更新上限制度が廃止できない理由も到底その根拠たり得ないなどと主張する。しかし、法人は、上記の理由として、要員配置等の見直しを伴う教学改革が検討中であるため、これに先行して具体的検討ができないこと等を説明していることが認められ、本件回答書による回答は不誠実な対応とはいえない。
2 団交拒否について
 法人の団交拒否に至る経過をみると、①本件救済申立て以前の平成23年1月、組合が当委員会に申請していた団交の開催問題についてのあっせんが行われ、団交の開催に関するルールに両当事者が合意したこと、②その後、4回にわたり当該ルールに従って団交が開催されたこと、③同年3月30日に開催された団交において、本件ルールに反して組合が7,8名の出席を要求し、実質的な団交に入れなかったこと、④同日の団交終了後、組合員らが法人の専務理事室に入りY2の決裁業務を妨害したこと、⑤これに対し法人は、文書による謝罪を行うこと等を内容とする3項目の団交条件を組合に提示し、その受入れを条件として団交に応じる旨通知したこと、⑥組合は上記団交条件を受け入れる意思を示さないまま、団交の開催を求めたことが認められる。
 そうすると、法人が同年4月25日に団交を拒否するに至ったのは、組合が本件ルールに反する行動をとるなどして団交が正常に行えない状況となったため、法人が本件団交条件を提示したが、組合がこれに一切応じない姿勢をとったためと認められ、その時点においては、法人が団交を拒否したことには正当な理由があったものと認められる。
 しかし、既に同日から1年近くが経過しており、いまだに1年近く前の行為を理由として団交を拒否することが正当といえるかには疑念が残る。これに加え、これまでの団交において未回答の事項もあること、更新上限制度についても最終的な結着がついていないことのほか、団体交渉権が労働組合の有する権利の中で持つ重要性をも考慮すると、現時点においてなお法人が、組合が本件団交条件を受け入れない限り一切団交に応じないとの態度をとっていることは正当とはいえないものと判断される。
3 組合員2名の不採用について
 組合員らは助手の新規採用募集に応募したものであって、本件採用拒否は雇入れの拒否に他ならないが、かかる雇入れの拒否が従前の雇用契約関係における不利益な取扱いであるとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特段の事情があったとの疎明もないから、労組法7条1号の不利益取扱いには該当しない。
4 団交条件の提示等について
 前記2で述べたとおり、本件団交条件の提示は現時点では団交拒否に該当すると認められるが、提示された時点においては正当性があったと認められ、また、法人がこれを組合に強要しようとしたとの疎明もないことから、労組法7条3号の支配介入には該当しない。
 組合は、法人が別組合に対しては条件をつけずに組合掲示板を提供しているにもかかわらず、組合に対しては組合掲示板の提供につき“組合掲示板以外の場所に掲示物を掲示しない”との条件を提示したことは組合間差別である旨主張する。しかし、組合はステッカーを大学構内に貼り出したことがあるのに対し、別組合はそのような行為は行っていないことが認められる。そうすると、法人が組合に対し、別組合には提示していない上記のような条件を提示したことには合理的な理由があると認められ、同法7条3号の支配介入には該当しない。  
掲載文献   

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