労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  京都市 
事件番号  京労委平成23年(不)第3号 
申立人  京都自治体関連労働者自立組合非常勤嘱託職員部会 
被申立人  京都市 
命令年月日  平成24年2月28日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人市の行財政局総務部総務事務センターで非常勤嘱託員として勤務していたX2は、平成22年12月、同センター長のY2に呼び出されてホームページの業務外閲覧等についての面談を受けた後、申立人組合に加入した。本件は、市が①X2に対し、23年4月30日をもって任用を更新しないとしたこと及び②22年12月27日以降3回にわたって行われた団交申入れ(上記X2に対する面談等に関するもの)を拒否し、又は誠実に応じなかったこと、並びに③Y2ら市の管理職員がX2に対して服務指導を実施しようとして業務命令書を発するなどしたこと、X2が組合に相談したことを非難する発言をしたこと等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 京都府労委は、市に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、下記内容を記載した文書を申立人に手交しなければならない。
  この度、京都府労働委員会から、貴組合が平成23年3月2日付けで申し入れた団体交渉に当市が応じなかったことは、不当労働行為であると認定されました。
  ついては、今後このような行為をしないことを誓約します。
  年 月 日
  京都自治体関連労働者自立組合非常勤嘱託職員部会
    代表世話人 X1 様
京都市
市長 Y1

2 申立人のその余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 組合員X2の任用を更新しないこととしたことについて
 X2は地方公務員法3条3項に規定する特別職の地方公務員であり、同法58条1項を含め同法の規定の適用はなく、したがって同人には労組法が適用される。
 「京都市非常勤嘱託員就業要綱」10条において、嘱託員の任用期間は1年以内とし、勤務実績が良好である場合は更新することができるとされている。本件以外に、本人に任用継続の意思がありながら任用を更新されなかった事例はないことなどからすれば、X2が任用を更新されると期待することには十分な合理性があると認められる。よって、同人の任用を更新しなかったことは、労組法7条1号の「解雇その他の不利益な取扱い」に該当するものと判断される。
 X2の任用を更新しないこととした理由は、ホームページの業務外閲覧を繰り返し長時間行ったこと事実に関して上司に虚偽の報告をしたこと、その後の上司による面談を一方的に拒否し続けたこと及び上司の職務上の命令に違反したことに対する反省の意思が見られないことであり、これらの理由に該当する事実の存在が認められる。しかし、総務事務センター長Y2のX2に対する面談に至る経過をみると、Y2は、22年11月18日にX2が主導して文書交換業務についての申入れがY2に対してなされた直後の時期にわざわざホームページ閲覧記録を情報化推進室から取得した上で12月17日に面談を実施している。また、Y2はX2に対してのみ指導を行おうとしているが、同人以外にも業務外閲覧を行っていた職員は相当数存在していたものと推認される。このような事実からすれば、X2に対する服務指導に係る対応の経過はいささか不自然であると考えざるを得ない。さらに、Y2は業務命令書まで発してX2を面談に応じようとさせており、Y2のとった対応には行き過ぎがあったといわざるを得ない。
 以上のことからすれば、市の主張する面談拒否等をもってX2の任用の更新を行わないまでの理由とすることについては、その合理性に疑念を抱かざるを得ない。
 次に、X2の組合活動との関連について検討する。組合は、X2は組合の指示に従って服務指導に応じなかったのであるから、本件は正当な組合活動を理由とする不利益取扱いであると主張するが、組合がそのような指示を行ったか否かにかかわりなく、市はX2の任用を更新しないこととしたものと推認されるから、本件は組合活動の故になされたものとはいえない。また、Y2はX2の組合加入より前の12月17日に既に同人に面談して服務指導を開始しようとしていたのであるし、平成2年の組合結成以来の市と組合との関係からみて、市においてX2が組合に加入したことで同人を職場から排除しなければならないような事情があったとも考えがたい。さらに、X2が組合に加入したことを非難する言動等が市によってなされたとの主張もない。そうすると、X2が組合に加入し、又は組合活動を行ったことを理由に任用更新を行わないこととしたとはいいがたい。
 以上のとおりであるから、本件は労組法7条1号の不利益取扱いには該当せず、よって同条3号の支配介入にも該当しない。
2 団交申入れに対する市の対応について
 23年3月2日の団交申入れについてみると、市は、X2の服務指導に関する事項は労働条件に直接かかわるものではなく、団交の対象となり得ず、また、組合が2月24日に人事務執務室内で大声で抗議活動を行うなどして業務に支障を来したこと等から市との信頼関係が失われ、団交を行うことはできないと判断したと主張する。
 しかし、組合は服務指導の内容そのものではなく、服務指導の態様や服務指導の結果としての不利益処分又は任用更新の問題について交渉を求めていたものと認められ、これらは労働条件と直接かかわるものであると考えられる。また、組合の役員が人事部の執務室内で勤務時間中に市側の担当者と議論したこと等は、直接団交に関係する事項ではなく、このようなことがあったからといって団交の障害となるものではなく、これをもって信頼関係が失われたとの主張は団交拒否の正当な理由と認めることはできない。
 以上のとおりであるから、上記団交申入れを市が拒否したことに正当な理由は認められない。
3 X2に対する服務指導に係る対応について
 組合は、X2に対する服務指導は同人が文書交換業務に関するY2の提案を撤回させたことに対する報復を意図したものであって、服務指導に応じるよう強要し続けたことは労組法7条3号の支配介入に該当すると主張する。しかし、前述のとおり22年12月17日の面談の時点においてX2はまだ組合に加入しておらず、Y2が組合への介入を意図してX2への指導を開始したとは考えられない。また、その後も、面談に応じるようにとの働きかけが繰り返し行われたが、これらがX2の組合加入を嫌悪してなされたものと認める証拠はない。
 組合は、市の総務部総務課長Y3が23年2月28日の服務指導の席上、「組合を通してするのとは別のやり方があったのではないか」と組合を非難する発言をしたこと等も支配介入に該当すると主張する。しかし、この発言は、指導終了後に組合の役員の発言に答えて行ったもので、もともと意図されて行われたものではない上、その内容も組合を非難するものとまではいいがたい。
 したがって、市のX2に対する服務指導に係る対応は支配介入には該当しない。  
掲載文献   

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