労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  沖縄セメント工業 
事件番号  沖労委平成22年(不)第6号 
申立人  全日本港湾労働組合、同沖縄地方本部 
被申立人  沖縄セメント工業株式会社 
命令年月日  平成24年2月24日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   2009年秋年末要求、2010年春闘要求及び同年秋年末要求に係る団交及び団交申入れに対する被申立人会社の対応は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 沖縄県労委は、会社に対し、2010年秋年末要求に係る団交について誠実に対応することを命じるとともに、2009年秋年末要求に係る申立てのうち申立期間が経過したものを却下し、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、申立人らが2010年秋年末要求として申し入れた冬季賞与に関する団体交渉において、申立人らに対し、回答の根拠を示して具体的に説明し、必要に応じて根拠となる資料を提示するなどして、誠実に対応しなければならない。
2 申立人らの申立てのうち、平成21年11月18日の団体交渉及び同年12月7日付け団体交渉の申入れに係る申立てについては、いずれも却下する。
3 申立人らのその余の申立てを、いずれも棄却する。  
判断の要旨  1 2009年秋年末要求について
 本件申立てのうち、平成21年11月18日の団交及び同年12月7日の団交申入れに対する会社の対応を不当労働行為であるとする部分については、申立期間経過後の申立てであるから、不適法たるを免れない。
 被申立人会社は、22年2月3日の団交申入れに対し、21年11月18日の団交の際に確定的に回答済みであるとして、これを拒否したことが明らかである。しかし、遅くとも21年12月末時点においては、会社が決定した冬季賞与の支給について申立人組合がこれを受け容れたことにより、その余の交渉事項を含む同年11月18日の団交における会社の対応を受容したものと認められるから、その頃には組合と会社との2009年秋年末要求に関する交渉問題は収束していたとみられる。したがって、これと同一事項を交渉事項とする22年2月3日の団交の申入れに対し会社が拒否したことについては、正当な理由がないとはいえない。
2 2010年春闘要求について
(1) 22年3月26日及び4月16日の団交
 会社には、組合の要求事項に対して会社の考えを具体的に説明しようとする姿勢はうかがえるものの、なおセメント業界の一般的状況等を理由に組合の要求を拒否するものであった。しかし、組合も、要求事項の繰返しや一般的な希望を述べるにとどまり、具体的な質問や意見を述べたり、経営状況に関する資料の提示を要求したりすることもなく、団交を終了している。このような状況に照らせば、会社の交渉態度が不誠実であったとまではいえない。
(2) 22年6月25日及び同月30日の団交申入れ
 組合は、前記(1)の団交における会社の説明及び昇給実施を受容していたと認めるのが相当であり、2010年春闘要求は4月末日をもって収束していたというべきであるから、同一事項を持ち出してなされた団交申入れを会社が拒否したことについては、正当な理由がないとはいえない。
3 2010年秋年末要求について
(1) 22年11月17日の団交
 組合は、22年11月2日提出の「要求書」では冬季賞与について基本給の35割を支給することを求めていたが、この団交の冒頭で25割を提示し、会社に対しそれに近づける努力ができないかなどと具体的に追求する姿勢を見せた。しかし、会社は、給与規程を理由に一律になることはないことを理由にこれを拒否しており、必ずしもかみ合った回答をしていない。また、組合が支給額・率の査定結果の事前通知を求めたことに対しては、事前開示の根拠がないとした上で、前社長が発表していたのは平均的な支給率であり、個々人の支給率ではないことを理由に拒否しており、ここでも十分にはかみ合っていないと認められる。また、会社としては、平均支給率でも差し支えないかどうかを確認して、そのような代替案を提示して譲歩することも可能であったと認められるにもかかわらず、組合の要求を拒絶するという結論ありきの回答に終始している。
 以上のことからすれば、会社は組合の意見を聞き置くだけで、交渉の実質を持たない態度で交渉に臨んでいたというべきであり、組合に対し、誠実に交渉をする義務を尽くしたとは認め難い。
(2) 22年11月26日の団交
 会社の回答は、前回と同様であるというだけでなく、賞与の支給につき、会社側の裁量に基づく恩恵的給付であるとし、むしろ踏み込んだ理由を述べて組合の要求を拒絶している。しかし、この恩恵的給付であるという会社の説明は、賞与が会社の給与規程に基づくものであること等とは整合しないものであって、組合の要求を頑なに拒絶する姿勢が看取される。したがって、会社は誠実に組合と向き合い交渉する義務を尽くしていないと評価されてもやむを得ないというべきである。
(3) 22年12月7日の団交申入れ
 会社は、既に行われた2回の団交の結果、当事者間で主張が対立し、交渉が進展する見込みはなく、また、組合自身が交渉を打ち切って争議を通告しているとして、団交を拒否した。しかし、前回の団交が争議通告によって終了したとしても、団交の余地がなくなったとはいえないし、組合においても交渉を継続する意思がなかったとはいえない。他方、交渉が進展する見込みを生起させなかったことについては、むしろ会社の側に原因があったとみられる。したがって、会社の団交拒否には正当な理由がないといわざるを得ない。
(4) 22年12月11日の団交申入れ
 この団交申入れは、組合が行った争議行為に関し、会社が申し立てた仮処分命令事件及び刑事告訴の取下げ並びに支給された賞与の供託を交渉事項とするものであるが、会社はいずれも義務的団体交渉事項に該当しないとして、当該申入れに応じなかった。しかし、上記事項は、冬季賞与交渉から派生したものであって、労働条件その他の待遇にかかわる事項、あるいは交渉事項と密接な関連を有する事項である。したがって、会社の団交拒否には正当な理由がない。  
掲載文献   

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