労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  扶桑運輸 
事件番号  神労委平成22年(不)第9号 
申立人  全日本建設交運一般労働組合神奈川県本部、全日本建設交運一般労働組合神奈川県南支部、同扶桑運輸分会 
被申立人  扶桑運輸株式会社 
命令年月日  平成24年3月5日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①申立人組合との団交において十分な資料を提供しないこと等不誠実な対応を行ったこと、②分会長ら5名の組合員を「主任」に昇格させなかったこと、③分会が掲揚した組合旗を一方的に撤去したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 神奈川県労委は、団交における誠意ある対応を命じるとともに、上記③に係る申立てのうち除斥期間を徒過したものを却下し、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、申立人全日本建設交運一般労働組合神奈川県南支部扶桑運輸分会との団体交渉において、質問に対する説明を丁寧に行うなど誠意をもって対応しなければならない。
2 平成20年11月20日における組合旗の撤去に関する救済申立てを却下する。
3 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 分会員らを「主任」に昇格させなかったことについて
 被申立人会社は、「主任」に対して月額8,700円の手当を支払っていることからすると、会社が申立人組合の分会員であることを理由として分会員を「主任」に任命しないならば、分会員は経済的不利益を受けると認められる。
 認定した事実によれば、分会員で「主任」に任命された者は分会加入以前に任命されたことのある1名だけであり、在籍年数が長い分会員ら5名が任命されていないことは組合の主張するとおりである。しかし、平成22年4月までの7年間の任命状況をみると、一度任命されると在任期間が比較的長いこと、任命された乗務員は9名に過ぎないことからすると、「主任」は乗務員が短い間隔で順次任命されるものではないことがうかがえる。また、会社は在籍年数を任命の基準に含めていない。
 「主任」の任命に当たっては、会社の定める基準等の要件を基に乗務員の中から候補者を選定することとされているところ、当該要件が乗務員に対して明示されていないなど運用面においても適切であるとまではいえないが、当該要件の内容に一見して明白な不合理性があるとは認められない。併せて、どのような基準を設けるかは基本的に会社の裁量に属するものであることからすると、会社が分会員を「主任」に任命していないことをもって、直ちに会社が分会員を差別しているということはできない。会社が不当労働行為意思をもって分会員を任命しなかったと認めるに足りる立証はなく、分会の主張は採用することができない。
 以上から判断すると、会社が分会員を「主任」に昇格させなかったことが、分会員であることを理由とする不利益取扱い及び分会の運営に対する支配介入に当たるとする組合らの主張は採用することができない。
2 団交における会社の対応について
 組合らは、会社には充実した団交を行おうという姿勢が欠けており、分会と会社の団交がスムーズに進まない理由は専ら会社にあると主張する。
 この点についてみると、分会と会社は平成20年11月5日以降、定期的に団交を行っており、団交の開催それ自体については特に問題視すべき点はないようにみえる。また、会社は、団交においてその場で回答できないことについては調査すると述べ、次回の団交で回答していること、分会に対して資料を提示又は提供していること、各年における春闘や一時金の団交において分会と会社が妥結していることからすると、本件団交は必要な文書のやり取りや交渉結果についても、一見したところ問題のないものであったように見受けられる。
 しかし、23年4月6日から6月22日までの団交における会社の対応をみると、分会が資料や団交事項に関して説明を求めているにもかかわらず、会社は説明を十分に行っているとはいえない。また、分会の要求を受け入れられない理由についても十分に説明しているとはいえない。更に、春闘要求に対する回答の意味を二転三転させている。これらのことを併せ考えると、そもそも会社は分会と真摯な交渉を行うための準備や検討をしないまま団交に臨んでいたといわざるを得ない。
 この判断は、本件救済申立て後に行われた団交での会社の対応についてのものであるが、上記のような会社の対応について頻度の高さがうかがわれること等から、本件申立て以前の20年11月から22年3月までの団交においても同様の不誠実な対応を行っていたと推認せざるを得ない。
 以上からすると、一連の団交における会社の交渉態度には不誠実な点があり、本件結審日時点においても会社の同様の対応が継続していると判断せざるを得ない。
3 分会の組合旗を一方的に撤去したことについて
(1) 平成20年11月20日における組合旗の撤去について
 本件申立ては、労組法27条2項所定の除斥期間を徒過していることが明らかであり、不適法である。(申立日は、22年3月18日)
(2) 22年6月10日における組合旗の撤去について
 分会は22年6月3日の団交において、同月10日の団交開催前に組合旗を南部市場内の会社事務所で掲揚してよいかと尋ね、会社もそれを了承したこと及び同月10日、組合の分会長が組合旗を磯子事業所入口付近に掲揚したことが認められる。
 分会が会社に組合旗の掲揚場所の変更について連絡をした事実は認められないこと等からすると、分会は会社が掲揚を認識していない磯子事業所入口付近をあえて選び組合旗を掲揚したと判断せざるを得ない。組合旗の掲揚が行われたのは労使関係が良好ではない時期であり、掲揚それ自体が直ちに適切でないとはいえないものの、会社に対するこのような分会の対応が好ましいということはできない。
 以上のことから、分会が会社の認識とは異なる場所に組合旗を掲揚したことに対して、会社が一方的な撤去で応じたとしてもやむを得ないものであり、分会の運営に対する支配介入に当たるとする組合らの主張は採用することができない。  
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成24年(不再)第15号 一部変更 平成25年7月17日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約278KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。