労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成22年(不)第69号 
事件番号  大阪府労委平成22年(不)第69号 
申立人  X労働組合 
被申立人  株式会社Y 
命令年月日  平成24年1月20日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人会社に平成22年3月31日を終期とする有期雇用契約により雇用されていた組合員Cは、同年2月下旬から腰痛のため療養休業に入っていた。申立人組合は、3月30日、会社に対し、Cの組合加入を通知するとともに、同人の職場復帰等に関する団交を申し入れた。本件は、会社が①3月31日、Cを期間満了を理由に雇止めとしたこと、②その後、当該雇止めの撤回等を議題として開催された団交においてCの契約不更新の理由を誠実に説明しなかったこと等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、申立てを棄却した。  
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。  
判断の要旨  1 会社が組合員Cとの雇用契約を終了したことについて
 認定した事実によれば、被申立人会社が申立人組合からCの組合加入通知を受ける以前に同人の雇止めを決定していたとは認められず、同通知の翌日に雇止めを決定したことは明らかである。しかし、会社では、有期雇用契約の期間満了をもって雇用契約が終了する取扱いも現実になされていた。また、Cは、就労が可能である旨記載された診断書を雇用契約終了時である平成22年3月31日に持参するよう会社から指示されていたものの、診断書を提出しなかった。
 そして、会社は、就労が可能である旨記載された診断書を提出しなかったことがCの雇用契約を更新しなかった理由であるとしているのであるから、会社のこうした取扱いが直ちに不合理であるとまでいうことはできない。
 組合は、団交申入れに対する会社の対応や組合との折衝方法の変遷等から会社の不当労働行為意思が推認できる旨主張するが、後記2での判断のとおり、会社の当該対応が不当労働行為であるとまではいえない。また、会社が組合との折衝を弁護士に委ねたり、証拠が残るように文書でのやり取りを求めたりしていたとしても、こうした対応から不当労働行為意思が推認できるとはいえない。
 以上を総合すると、会社が22年3月31日をもってCとの雇用契約を終了したことは、同人が組合員であること又は組合の正当な行為をしたことの故をもって行われた不利益取扱いに当たるとは認めることができず、その他会社の対応が支配介入に当たると認めるに足る疎明もないから、この点に係る組合の申立ては棄却せざるを得ない。
2 団交における会社の対応について
 組合は、①会社が、Cの雇用契約を更新しなかった理由に関し、4月30日の団交において、会社の4月13日付け回答書記載の雇止め理由の内容を覆し、説明を変遷させたこと、②組合が、雇止めを判断した事実、判断理由やその根拠を詳細に特定して具体的に説明するよう求めたのに対し、会社は上記回答書に記載された以上の詳細な説明を行わず、具体的な回答を拒んだり、議論のすり替えを図ったことが、不誠実団交に当たると主張する。
 しかし、認定した事実によれば、会社は4月7日付け及び同月13日付けの回答書でCとの契約を更新しなかった理由を説明し、4月30日の団交でも組合の質問にも回答しながら上記回答書の内容と同趣旨の説明をしていると認められるから、団交において4月13日付け回答書の雇止め理由の内容を覆し、変遷させたなどとする組合の主張は採用できない。
 また、会社は、組合が4月30日の団交においてCの雇用継続に関する労災での解雇制限を今回の雇止めにも適用するかについて検討するよう求めたことに対しても、検討した上、5月24日の団交で説明していることは明らかであって、組合の要求に応じてはいないものの、会社の団交での態度が自己の事情を押しつけるだけで誠意ある対応ではなかったとする組合の主張は採用できない。
 さらに、会社と組合との間でCの腰痛の原因が会社の業務に起因する労災に該当するかについて見解の相違があった状況の中では、会社が団交において、労災保険給付申請の発生年月日欄及び原因欄の会社証明を空欄とする旨並びに会社は組合の求める事故の現場検証に応じない旨表明し、そうした対応が団交でのやり取りを経ても変わらなかったとしても、こうした会社の対応が直ちに不誠実団交に当たるとか、支配介入に当たるとまではいうことができない。
 以上のとおりであるから、4月30日及び5月24日の団交における会社の対応は不誠実団交に当たるとまでは認めることができず、その他会社の対応が支配介入に当たると認めるに足る疎明もないから、この点に係る組合の申立ては棄却する。  
掲載文献   

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