労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  中島商運他1社 
事件番号  京労委平成23年(不)第1号 
申立人  関西合同労働組合、X2(個人)、X3(同)、X4(同) 
被申立人  株式会社中島商運(Y)、有限会社ベストバリュー(Z) 
命令年月日  平成23年12月7日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社Yが①申立人X1、X2及びX3を解雇したこと、②当該解雇に係る団交を拒否したこと、並びにY及び被申立人会社ZがZの労働時間及び賃金に関する団交を拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 京都府労委は、Zに対し、労働時間及び賃金に関する事項についての団交に応じることを命じるとともに、同社の労働時間及び賃金に関する事項についての団交に係るYに対する申立てを却下し、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人有限会社ベストバリューは、申立人関西合同労働組合が平成22年11月5日付けで申し入れた同社の労働時間、休日、休憩時間並びに基本給、時間外手当及び調整手当の計算方法等の賃金に関する事項について、同組合との団体交渉に応じなければならない。
2 申立人らの申立てのうち、被申立人株式会社中島商運に対する、申立人関西合同労働組合が平成22年11月5日付けで申し入れた有限会社ベストバリューの労働時間、休日、休憩時間並びに基本給、時間外手当及び調整手当の計算方法等の賃金に関する事項についての団体交渉に係る申立てを却下する。
3 申立人らのその余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 被申立人会社Zの労働条件に関する団交に係る救済申立てについての被申立人会社Yの被申立人適格について
 Zは、物流センターの管理運営等というYとは異なる事業目的を有していることが認められ、その従業員も物流センターの庫内作業というYとは異なる業務に従事していたと推認される。また、Zは独自の就業規則を作成していることが認められる。一方、Yの従業員がZの従業員に対する指揮監督も行っていたことは認められるものの、それ以上にYがZの就業規則の作成に関与するなどZの休日、労働時間及び賃金制度まで決定していたとの疎明はない。したがって、Yに上記申立てに係る被申立人適格は認められず、当該申立ては却下すべきである。
2 申立人X2及びX3に対する解雇通告について
 まず、Yの代表取締役Y1がX2及びX3に対し解雇の通告をしたのは平成22年8月15日であったが、申立人組合が同人らが組合員であることをYに通告したのはそれよりも後の8月23日である。
 組合は、同年7月にX2らが中心となって従業員に対する署名・アンケート活動(雇用や待遇等についての意見・苦情を聞き、役員との話合いを行うという趣旨のもの)を行ったこと、これに関連して同人らが労働組合を作ろうとしているという情報をY1が入手したこと等から、本件通告はY1がX2らの組合加入を察知し、それを理由に行ったものであると主張する。しかし、当該署名・アンケート活動は、実質的にはX2が以前Y1に求めた管理職登用が実現しなかったことに対抗してとった行動に過ぎず、組合結成準備活動とは認めがたいこと、X2らの組合加入は8月であってこれらの活動よりも後であることなどが認められる。これらの事実から判断すると、Yが8月15日以前の時点で、X2らが労働組合に加入又は労働組合を結成しようとしていたと認識していたとまでは認めるに足らない。
 むしろY1が本件通告を行った決定的な動機は、X2が管理職登用が実現しないことに不満を抱いて対抗的な行動をとり始め、これを企業運営上の障害と考え始めたY1がX2及びそれに同調するX3を排除しようとしたことであったと認めるのが相当である。
 よって、本件通告は労組法7条1号の不利益取扱いには該当しない。
3 申立人X4に対する解雇について
 Yは少なくとも8月15日の時点においてX4を解雇する意思を固めていたものと認められるところ、その決定的動機はX2に同調するX4をX2及びX3とともに排除しようとしたということであって、X4の解雇は労組法7条1号の不利益取扱いには該当しない。
4 団交拒否及び支配介入について
(1)労働時間及び賃金に関する団交申入れに係るZの対応について
 Zは、同社に在籍する組合員はX5のみであるところ、団交に当たっては、交渉事項として同人から特別の苦情、権利問題が提起され、また、具体的な労働組合への委任がなされることが必要であり、これを欠くことが団交に応じない正当な理由であると主張する。
 しかし、組合員が1名であったとしても、団交の交渉事項はZが主張するような当該個人に対する処分等固有の問題に限られるわけではない。本件で組合が申し入れている交渉事項は、いずれも労働条件に関する事項であり、かつ、組合員であるX5に関係する事項であるから、義務的団体交渉事項であると認められ、Zは団交に応じる義務がある。
 本件においては、特に組合の運営自体に支配介入し、これを弱体化させる意図をもって団交拒否を行ったとまでの事情は認められない。
(2)X2らの解雇に関する団交申入れに係るYの対応について
 申立人は本件審査で提出した主張書面において、解雇問題については「会社が話し合うなら組合としても話し合うというぐらいの気持ちで団交の議題に書いているだけであり、解雇問題で団交を申し入れているわけではない」旨主張しており、組合がY及びZに提出した団交申入書の文面も、Yが任意に団交を求めるのであれば組合としても団交を行うという趣旨のものになっている。
 したがって、本件申入れは団交申入れと解することはできず、これを拒否したことは団交拒否に該当しない。  
掲載文献   

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