事件名 |
都労委平成21年不第106号 |
事件番号 |
都労委平成21年不第106号 |
申立人 |
X1労働組合、同X2地方本部、同X2地方本部X3支
部 |
被申立人 |
Y株式会社 |
命令年月日 |
平成23年11月15日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
①被申立人会社がその運営する自動車教習所であるA校において、
申立人組合支部の組合員に対し、平成20年冬季賞与、21年夏季賞与及び同冬季賞与を支給しなかったこと、②賞与に関する団
交での会社の対応、③会社が21年4月に支部の組合員6名を解雇したこと、④解雇に関する団交での会社の対応が不当労働行為
に当たるか否かが争われた事案である。
東京都労委は、会社に対し、①組合員に対する一定額の賞与の支払い、②文書交付及び③履行報告を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人Y株式会社は、申立人X1労働組合X2地方本部X3支
部の組合員に対し、一人当たり、平成20年冬季賞与として金20,000円、21
年夏季賞与として金314,400円、及び21年冬季賞与として金200,000円を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合らに交付しなければならない。
記
年 月 日
X1労働組合
執行委員長 A1 殿
X1労働組合X2地方本部
執行委員長 A2 殿
X1労働組合X2地方本部X3支部
執行委員長 A3 殿
Y株式会社
代表取締役 B1
当社が、平成20年冬季賞与、21年夏季賞与及び21年冬季賞与を貴組合X2地方本部X3支部の
組合員に支給しなかったこと、21年4月に同支部の組合員6名を解雇したこと、並びに20年冬季賞与、21年夏季賞与、21
年冬季賞与及び解雇に関する貴組合との団体交渉において誠実に対応しなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為
であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は交付した日を記載すること。)
3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 |
判断の要旨 |
1 賞与に関する団交について
被申立人会社は、組合員らの年収を著しく減額させる回答をしたにもかかわらず、会社の経営資料を示さず、また、経営状況に
ついての具体的な説明も行わず、賞与の支給は事業所ごとの業績によると説明しながらも、賞与が支給されていた他校の業績につ
いて開示を拒否し、A校の売上実績と賞与支給額との具体的な関連性についても説明しなかったものであるから、結局、単に会社
の決定した事項を一方的に申立人組合(地方本部及び支部)に伝えていたにすぎない。よって、本件賞与に関する団交において、
会社が組合との合意達成を目指して、自らの回答が合理的・妥当なものであることを具体的に説明し、納得を得ようとしていたと
は到底いえないから、会社の対応はいずれも不誠実であったというほかない。
2 賞与の不支給について
会社は、A校では平成20年夏以降賞与を支給しないと回答し続け、仮処分事件の決定後の21年11月に至って、19年以前
に支給していた額の10分の1以下となる5万円の支給額を提示したにとどまり、一方、労働組合が組織されていないB校では2
年間で1人当たり合計107万円余の賞与を支給している。会社において各教習所の賞与支給額はそれぞれの売上高前年同期比を
参考に決定するとされているが、両校の売上高の前年同期比と賞与支給額との間に関連性がみられるとはいい難く、両校の支給額
に大きな差異を生じさせたことについて合理的事情は認められない。
また、前記のとおり、会社は賞与の支給に関する団交において不誠実な態度で団交を行っていることや、後記のとおり、組合に
対して十分な説明も協議も行わないまま組合員の解雇を強行したことなどから、本件賞与の支給時期における会社の組合ら(本部
を含む。)に対する嫌悪の情を推認せざるを得ない。
以上のとおりであるから、会社が本件賞与を組合員に支給しなかったことは、A校における支部の存在及び組合活動を理由とし
て行われたものというべく、したがって、組合員に対する不利益取扱いに当たるといわざるを得ない。また、会社は、不誠実な態
度で団交を続け、賞与を支給せず、その一方でB校においては賞与を支給していたのであるから、こうした対応を続けたことは組
合らの団結ないし交渉力を減退させ弱体化させる支配介入にも当たるというべきである。
3 組合員6名の解雇に関する団交について
会社は、整理解雇について、21年2月24日の団交において言及した後、3月4日及び5日には組合員に対して解雇予告を行
い、その間団交を一度開催したのみで、整理解雇が必要となるほどの経営上の合理的事情があるのかどうか、客観的かつ正確な資
料を提示するなどして組合に説明しておらず、他校への異動の可能性についても具体的に説明しないなど、結局、会社の決定した
事項を一方的に組合に伝えていたにすぎない。よって、会社が自らの主張の根拠を具体的に説明し、組合の理解を得るべく交渉し
ていたとは到底認められないのであるから、団交での会社の対応は不誠実であったというほかない。
4 組合員の解雇について
①会社は、子会社が運営するC校で新規に指導員が募集されていたにもかかわらず、A校の指導員をC校に異動させることなく
整理解雇しており、解雇された指導員は全員が組合員であったこと、②会社はわずか2回の団交を行ったのみで解雇予告を行った
こと、③前記のとおり、会社の組合らに対する嫌悪の情が認められること、④賞与不支給の不当労働行為が同時期に行われたこと
などを併せ考えれば、会社が組合員6名を解雇したことは、組合員に対する不利益取扱いに当たるといわざるを得ず、さらには
20年12月に締結した合意協定書を遵守せず、組合に対する十分な説明も協議もないまま、また、検討の余地も与えないまま、
解雇を強行したことは、組合の運営に対する支配介入にも当たるといわざるを得ない。 |
掲載文献 |
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