労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成22年(不)第47号 
事件番号  大阪府労委平成22年(不)第47号 
申立人  X労働組合 
被申立人  Y株式会社 
命令年月日  平成23年11月29日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①保安担当副管理者の地位にあった組合員Cに対し、平成21年9月16日付けで同職を解任して保安担当次長とする人事異動を行ったこと、②平成22年2月、有期限雇用により勤務していた組合員Dに対し、契約の更新はない旨の記載があるなどの点で前回とは内容が異なる契約を締結させたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、会社に対し文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
 X労働組合
  執行委員長 A 様
Y株式会社
代表取締役 B
  当社が、貴組合員C氏に対し、平成21年9月16日付けで保安担当副管理者を解き、保安担当次長を命じる旨の辞令を発したことは、大阪府労働委員会において労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

2 申立人のその他の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 組合員Cの副管理者解任について
 本件解任の不利益性については、解任によってCの賃金は総額では変わらないものの、タイムカードの打刻が求められるようになったことのほか、被申立人会社における副管理者の地位は特別な責任を担うものと解すべきであることから、実質的には管理職から管理職ではない地位への降格に等しいものであって、同人に不利益を与えるものであるというのが相当である。
 また、会社は本件解任についてCの能力や仕事ぶりに問題がある旨主張しているところ、能力等を理由とする副管理者からの解任は、会社において異例のものということができる。
 会社が申立人組合及びCに対し本件解任を提案した当時の理由の説明状況についてみると、平成21年8月28日の団交では、Cは期待に応えていない、報告・提案だけで行動がない等と述べたにとどまることが認められ、会社が同人の勤務ぶりを詳細に検討した上で本件解任を決定したかについて、疑問を持たざるを得ない。
 会社はその後の団交で解任の理由としてCの法定講習(21年7月21日)での発言と休憩時間の問題を挙げているところ、前者については会社が問題視することに理由があるというべきである。
 会社がCを保安担当副管理者とした際の対応をみると、新たにこのポストを設けて業務を命じるに当たっての会社の指示の仕方にも問題があったといわざるを得ず、このような状況下で同人の勤務ぶりが期待どおりではなかったとしても、直ちに同人のみに責任があったとまでいうことはできない。
 以上のとおりであるから、本件解任直前のCの勤務ぶりについて、法定講習での発言等の不適切な点があったとしても、会社の業務の指示の仕方にも問題があること等を考慮すると、同人に副管理者からの解任という異例の取扱いをすべきほどのことであったかについては、疑問の余地があるというべきである。
 一方、本件解任当時の申立人組合と会社との関係等についてみると、会社は、組合が他の労働組合と統合し、Cが副委員長に就任したとの通知を受けた約1か月後に本件解任を提示していること等が認められる。また、21年8月10日の「衛生委員会」の開催に関して、会社は組合を別組合に比べ好ましくないものとして差別的に取り扱っていたといわざるを得ない。
 以上のことを総合的に勘案すると、本件解任は、Cが組合員であるが故の不利益取扱いであるとともに、組合の活動に支配介入したものでもあるというべきである。
2 組合員Dの労働契約の変更について
 会社が平成22年2月13日にDに対し締結を求めた労働契約書と21年3月16日付けの同人の労働契約書の内容を比較すると、①前者には契約の更新はなしと明記されているのに対し、後者には契約の更新に係る記載はないこと、②前者には賞与はなしと明記されているのに対し、後者には賞与に係る記載はないこと等が認められ、平成22年度の労働契約書は更新の有無に関する記載等においてDにとって不利なものになっているということはできる。
 しかし、他の満60歳以上の従業員についてみると、いずれの従業員についても、平成21年度の契約書には契約の更新及び賞与についての記載はなく、22年度の契約書にはこれらについての記載があることが認められ、Dの契約書上の記載の変更は会社が有期限雇用の従業員の労働契約書に記載する項目を追加したことに伴うものと解される。また、実際には、Dに対し、22年夏季及び年末の賞与が支給され、労働契約は更新されたことが認められる。
 さらに、22年度の労働契約書に契約の更新はない旨が明記されている従業員が他にもおり、これらは別組合の組合員又はどの労働組合にも属さない者であることが認められる。したがって、会社が、所属する労働組合を理由として契約の更新なしとする記載をしたということはできない。
 また、賞与の有無に関しては、他の満60歳以上の従業員全員についても賞与なしと記載されていることが認められる。
 したがって、会社が22年度におけるDの労働契約を変更したことは、組合員であるが故の不利益取扱いということはできず、組合の活動に支配介入したということもできない。なお、この判断は、22年2月頃、本件解任やこれにかかわる争議行為等を巡って組合と会社との間が良好とはいえない関係にあったことを勘案しても変わるものではない。  
掲載文献   

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