労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本鋳鍛鋼 
事件番号  福岡労委平成23年(不)第1号 
申立人  全日本金属情報機器労働組合福岡地方本部鉄鋼自動車関連労働者支部 
被申立人  日本鋳鍛鋼株式会社 
命令年月日  平成23年11月15日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   申立外A社から被申立人会社に派遣されて就労していたX2は、当該派遣就労及びA社との契約が終了した後、派遣就労中の処遇に関する問題について申立人組合に相談に行き、組合に加入した。本件は、組合が申し入れた同人の正社員化や時間外労働未払賃金等に関する団交に会社が応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 福岡県労委は、会社に対し、X2の時間外労働に伴う賃金問題に関する団交に応じることを命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、申立人が行った平成22年6月14日付け、同年10月26日付け及び同年12月20日付けの団体交渉申入れのうち、次の事項を議題とする団体交渉に応じなければならない。
 (1) 36協定を超えた時間外労働に対する賃金の支払い及びその算出資料について
 (2) 36協定を超えて時間外労働を命じたことに関する経緯について
 (3) 時間外労働に対する賃金に関する遅延損害金について
 (4) 時間外労働時間の管理方法について
 (5) 休憩時間中の就労に対する賃金の支払について
 (6) 休憩時間中の就労実態について
2 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 会社は、団交に応ずべき使用者に当たるか。
 被申立人会社が申立人組合との団交に応じるべき使用者に当たるかどうかは、団交事項ごとに判断するのが相当である。
 (1)組合員X2の正社員化に関する問題
 X2と会社との間に、近い将来において労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性が存していたかどうかを検討すると、本件においては会社のマネージャーY2らが正社員化の打診をしたことによりX2が相応の期待を抱いたことが推察されるものの、打診したのは採用の権限を有していないY2らのみであり、X2と会社との間に正社員として雇用するとの明確な合意があったとはいえない。さらに、組合は、X2と会社との間に内々定が成立していたと主張するが、X2の上司がX2の正社員化が近いうちに実現するかのような発言をした事実は認められるものの、内々定が成立していたと認めることはできない。加えて、組合は、X2と会社との間に黙示の労働契約が締結されていたと主張するが、同人は本来の労働者派遣の枠組みの中で就労していたにすぎず、会社との間に黙示の労働契約が成立していたとはいいがたい。
 以上のことから、X2の正社員化の問題について、会社が団交に応ずべき使用者に当たるとすべき理由を見出すことはできない。
 (2)時間外労働に伴う賃金問題等労働時間の管理に関する問題
 会社は、派遣先事業主としてX2の業務について直接指揮命令を行う立場にあり、現実にも労働時間の管理の方法についても具体的な指示を行っていた。このことと、労働者派遣法44条2項により、派遣先のみを派遣中の労働者を使用する事業と見なして労基法32条及び36条1項が適用されることを併せ考えれば、X2の在職時に生じた労働時間管理に関する問題については会社が対応すべきものであり、かつ対応可能な基本的労働条件等に関する事項であるといえる。したがって、会社はこの問題についてA社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったといえる。
 よって、会社はX2の時間外労働に伴う賃金問題等労働時間の管理に関する問題について団交に応ずべき使用者に当たる。
 (3)X2に労働者派遣法施行令4条5号にいう「事務用機器操作」に該当しない業務をさせていることの是正
 派遣労働者が派遣先の指揮命令に基づき、労働者派遣契約で定める業務以外のものを命じられていることが事実であるとするならば、それは、派遣先が労働者の基本的な労働条件等について雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあることによるものと考えられるから、その限りで派遣先は労組法7条の「使用者」に当たるといえる。よって、会社はX2を「事務用機器操作」以外の業務に従事させたことについて、団交に応ずべき使用者に当たると一応いうことができる。
2 会社が団交に応じなかったことに正当な理由が認められるか。
 (1)時間外労働に伴う賃金問題について
 36協定を超えた時間外労働に対する賃金の支払要求及びその算出についての資料要求等が組合の申し入れた団交事項であると解されるところ、会社は労基署の指導のとおり既に賃金を支払い済みであり、解決していると主張する。しかし、会社は36協定を超えたX2の時間外労働に対する賃金支払いに際して、どのように賃金額を算出したのか全く説明しておらず、資料も示していない。また、X2が休憩時間中に就労していたことに伴う時間外手当の算出方法についても全く説明等をしていない。このように会社がX2の賃金問題の全般にわたって説明していないことからすれば、既に支払われた賃金で時間外労働の賃金が全て精算されているのかが明らかではない。
 以上のような事情からすれば、組合と会社がX2の時間外労働に伴う賃金問題について団交を実施する必要性が失われたとはいえない。
 (2)労働時間管理の是正について
 X2はもはや会社で就労しておらず、また、会社には他に組合の組合員が存在しないことからすれば、たとえ会社での労働時間管理のあり方に適切さが欠けていたとしても、そのことについて団交を実施することがもはや組合員の労働条件の改善につながるとはいえず、労働時間管理の是正の問題は義務的団交事項に当たるとまではいえない。
 (3)X2に「事務用機器操作」に該当しない業務をさせていることの是正について
 上記(2)と同様の理由により、義務的団交事項に当たるとはいえない。
3 結論
 会社が義務的団交事項であるX2の時間外労働に伴う賃金問題に関する団交に応じなかったことについては、正当な理由はなく、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。  
掲載文献   

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