概要情報
事件名 |
大阪府労委平成22年(不)第66号 |
事件番号 |
大阪府労委平成22年(不)第66号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
有限会社Y |
命令年月日 |
平成23年11月8日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社でアルバイトとして就労していたCは、平成22年7月11日、工事現場において会社の従業員Dと口論になり、同人から殴打された。同日の工事終了後、会社の社長はCに対し明日から来なくてよい旨述べた。7月28日、Cは申立人組合に加入し、組合は会社に対し、同人への治療費の支払い、解雇予告手当の支払い、有給休暇の補償、休業補償の支払い等を議題とする団交を申し入れた。本件は、会社が1回は団交に応じたものの、その後の団交申入れに対して、雇用関係の終了及び民事調停への申立て等を理由に応じないことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は、会社に対し、文書手交を命じた。
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命令主文 |
1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X労働組合
執行委員長 A 様
有限会社 Y
取締役 B
当社が、貴組合から平成22年9月6日付け及び同月15日付けでなされた団体交渉申入れに応じなかったことは、大阪府労働委員会において労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。当社は、このことを誠実に受け止めます。
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判断の要旨 |
1 被申立人会社と組合員Cとの雇用関係について
会社は、同社とCとの雇用関係は平成22年7月11日に合意解約により終了していると主張する。しかし、Cの雇用を巡っては、23年1月24日の労働審判での調停により、22年7月11日付けでCが合意退職したことを会社と同人が確認して解決するまでは、両者間で争いが続いており、本件申立ての時点(22年10月22日)では当該雇用関係が22年7月11日の合意解約により終了しているということはできない。
2 会社による民事調停の申立てについて
会社は、第1回団交の後、民事調停に解決の場を移すこととし、申立人組合にはその旨を通知することなく、22年8月21日、Cを相手方として民事調停を申し立てるとともに、9月8日、組合に通知書を送付し、団交ではなく裁判の手続により本件解決を目指す考えであり、団交には応じられない旨、組合に回答したとみることができる。しかし、会社には、第1回団交及びその後の対応を経てもなお解決をみていない義務的団交事項が残っていたのであり、組合がそれについて団交による解決を求めている以上、団交に応じる義務があるのであって、民事調停による解決を図ろうとしているからといって、会社の団交応諾義務が消滅しないことは明らかである。
3 労働審判での調停成立について
会社は、上記1の労働審判での調停により、同社とCとの間で賃金債権が存在しないことを相互に確認し、同人の雇用に関する争いはすべて解決しており、当委員会において解決を図る事項は存在せず、救済の必要はなくなった旨主張する。しかし、本件申立て後の調停の成立は、22年9月6日及び同月15日の団交申入れに会社が応じなかったことに正当な理由があるかどうかの判断を左右するものではなく、また、調停が成立し、Cの雇用を巡る問題について合意に達したからといって、団交拒否の事実に対し文書掲示又は手交を求めることについては、当然に被救済利益が失われるものではなく、救済の必要はなくなった旨の会社主張は採用できない。
4 結論
以上のとおりであるから、会社が22年9月6日及び同月15日の団交申入れによる団交に応じていないことに正当な理由があるということはできず、会社の団交拒否は労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
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掲載文献 |
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