労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  アニマルケア 
事件番号  都労委平成23年(不)第2号 
申立人  全労協全国一般東京一般労働組合 
被申立人  株式会社アニマルケア 
命令年月日  平成23年10月4日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社の従業員らは、会社の経営や自らの雇用に不安を感じ、申立人組合に加入し、同従業員らから成る分会を結成した。組合らは、会社に対し、分会の結成を通告し、冬季賞与の支払い等を要求して団交を申し入れたが、会社は、組合らと会社との間には労働契約ないし使用従属関係が存在しないなどとして諾否を保留し、その後、組合が申し入れた組合員X2の雇止めに関する団交にも応じなかった。本件は、①会社には組合との団交に応じる義務があるか否か、②会社が団交に応じていないことが正当な理由のない団交拒否に当たるか否かが争われた事案である。  東京都労委は、会社に対し、誠実団交応諾、文書掲示及び履行報告を命じた。  
命令主文  1 被申立人株式会アニマルケアは、申立人全労協全国一般東京労働組合が、平成22年11月8日付け及び同月25日付けで申し入れた団体交渉を拒否してはならず、速やかに、かつ、誠実に応じなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、下記文書を楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
年 月 日
  全労協全国一般東京労働組合
  執行委員長 X1 殿
株式会社アニマルケア
代表取締役 Y1
  当社が、貴組合からの平成22年11月8日付け及び同月25日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
  (注:年月日は文書を掲示した日を記載すること。)

3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。  
判断の要旨  1 被申立人会社の団交応諾義務の有無について
 会社は、組合員X2は会社の総務部部長であって、労組法2条ただし書き1号に定める「監督的地位にある労働者」ないし「使用者の利益を代表する者」であったから、組合は自主性を有しない法適合性を欠く団体であり、会社に団交応諾義務が生じることはない旨主張する。
 しかし、X2は実質的にみて、その権限や責任において会社の利益を代表する地位になく、その参加を認めたとしても申立人組合の独立性を損なうものとはいえない。したがって、X2は「使用者の利益を代表する者」に該当しない。
 会社は、組合員のほとんどが会社との間で形式的にも実質的にも雇用関係ないし使用従属関係はなく、また、会社は組合に対して労働条件等について決定し得る立場にはなく、組合は会社との関係で法適合組合に求められる当事者性の要件を欠如するものであるから、会社に団交応諾義務が発生することはない旨主張する。
 しかし、組合の構成員には会社と雇用関係にある者が含まれており、組合が当該組合員の労働条件等について団交を申し入れていることは明らかであって、会社の上記主張は、およそ法的に成り立つ可能性のない独自かつ特異な見解というべく、採用の限りではない。
2 会社が団交に応じなかったことについて
 会社は、分会は団交申入れの直前に結成されたとされ、その法適合性を確認するために釈明を求めたのは当然であり、組合らから誠実な回答があり法適合性が確認でき次第、団交に臨む所存であった旨主張する。
 しかし、組合らは、組合及び分会の役員が会社の取締役Y2と面談の上、分会結成を通知し、組合規約等を手交しているのであるから、会社は、自社の従業員が組合に加入し分会を結成した事実、組合らの要求事項等を客観的かつ容易に把握することができたものといえる。そして、会社の対応をみると、法適合性についての疑義を払拭しようとして組合に働きかけていた事実は認められず、むしろ、組合らとの接触をかたくなに拒否し、意図的に組合らからの連絡を困難にしていたものといわざるを得ない。結局、会社の対応は、いわば、ためにする疑義の提示とそれへの回答の要求を繰り返し、組合との接触を拒否し続けたものであって、真に団交の実現に向けたものとはいえないのであるから、組合から誠実な回答があり次第団交に臨む所存であったとの会社の主張は到底信じ難く、採用の限りではない。
 会社は、X2が組合に加入したことから、組合らの自主性に疑義が生じたので、かかる疑義を払拭するよう求めたが、組合らからは一向に誠実な回答がなされなかったので、団交に応じないとの態度に出たことも不合理ではないとも主張する。
 しかし、X2が会社の利益代表者に該当しないことは前記判断のとおりであるから、同人が加入したことをもって、会社が団交に応じない正当な理由ということはできない。
 また、会社は、X2の職責や業務内容と組合員としての立場が矛盾すると信じるに足りる具体的事実を指摘して組合に説明するといったことは行わず、同人が利益代表者に該当すると抽象的に主張し、組合らの側で疑義を払拭するよう通知するのみであった。会社は、そもそも組合らとの交渉に応じる意思を有していなかったところ、同人の組合加入を団交拒否の口実として利用したとみるのが自然である。
 以上のとおり、組合が申し入れた団交に会社が応じていないことは、正当な理由のない団交拒否に当たる。  
掲載文献   

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