労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成21年(不)第72号・22年(不)第34号 
事件番号  大阪府労委平成21年(不)第72号・22年(不)第34号 
申立人  X労働組合 
被申立人  有限会社Y 
命令年月日  平成23年10月25日 
命令区分  一部救済(21不72)、棄却(22不34) 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①解雇した組合員X7に対する賃金保障についての団交における約束を反故にしたこと、②解雇した組合員X5の復職についての団交における約束を反故にしたこと、③組合員X2及びX3に対し、時間外勤務及び深夜勤務の指示を行わず、配車について差別したこと、車輌の駐車場所を変更したこと等、④社内での別組合の結成を援助し、申立人組合の切崩しを図ったこと、⑤組合員に対する未払残業賃金の支払いについての団交における約束を反故にしたこと、⑥組合員X4に対し、配車の指示を行っていないこと、及び会社社長の父たるY3が組合員に対して傷害を与えたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、会社に対し①組合員2名に対する深夜勤務手当相当額の支払い、②同2名に対する朝食及び昼食代に相当する金員の支払い、③文書手交を命じ、組合員X4に係る申立てを却下し、その他の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員X2及び同X3に対し、平成21年4月11日以降同年6月に被申立人の配車担当者が両組合員に深夜勤務従事の確認を行うまでの間、他の従業員と同様に深夜勤務の指示を行っていれば得られたであろう深夜勤務手当相当額を支払わねばならない。
2 被申立人は、申立人組合員X2及び同X3に対し、平成21年4月11日以降に他の従業員に支給した朝食及び昼食代に相当する金員を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
 X労働組合
  執行委員長 X1 様
有限会社Y
代表取締役 Y1
 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、(1)から(3)については、労働組合法第7条第1号に、(4)については同条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

(1)平成21年4月11日以降、貴組合員X2氏及びX3氏に対し、深夜勤務の指示を行わなかったこと。
(2)平成21年4月11日以降、貴組合員X2氏及び同X3氏に対し、ミキサー車の駐車場所を大阪府茨木市内の駐車場に変更するよう指示したこと。
(3)平成21年4月11日以降、貴組合員X2氏及び同X3氏に対し、朝食及び昼食を支給しなかったこと。
(4)別組合の結成に関与したこと。

4 申立人組合員X4に係る申立ては却下する。
5 その他の申立てはいずれも棄却する。  
判断の要旨  1 被申立人会社は、組合員5名の労組法上の使用者に当たるか。
 会社は、組合員X2及びX3はいわゆる「一人親方」で、同社の業務請負者であり、組合員X5及びX7はA商事ことAの従業員であり、同X4は会社に傭車業者として出入りしていたB興業ことBに雇用された者であって、いずれも会社の従業員ではない旨主張し、申立人組合は上記5名はいずれも会社と使用従属関係にある旨主張する。
 認定した事実によれば、X2及びX3は、会社の事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力として同社の事業組織に組み入れられ業務の依頼に応ずべき関係にあったと判断され、また、労働条件等を会社によって一方的・定型的に決定され、報酬についても労務対価性があったといえ、さらに、労務提供について一定の時間的場所的拘束があったと判断される。以上のことを総合すると、会社は両名の労組法上の使用者に当たると判断される。X5及びX7についても、同様である。
 X4については、傭車業者であるBの所有するダンプ者に乗務し、報酬も同人から受領していることなどからすると、Bは傭車業者として形骸化しておらず、一定の事業者性をもって、X4を自らの責任のもとに会社で業務に従事させていたとみることができるのであるから、会社は同人の労組法上の使用者であるとまではいえない。したがって、同人に係る申立ては却下せざるを得ない。
2 会社は組合に対し、団交においてX7に対る賃金保障及びX5の復職を約束していたと認められるか。
 認定した事実によれば、上記のような約束があったと認めることはできない。
3 会社がX2及びX3に対し、時間外勤務及び深夜勤務の指示を行わなかったこと、車輌の駐車場所を変更したこと等は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか。
 組合が会社に対しX2及びX3の組合加入を通知した後、両人への深夜勤務の指示が行われなくなったが、その後会社全体として深夜勤務回数が減少した事実は認められず、1か月半近くの間、両人に深夜勤務の割当てが全くなかったことに合理的理由を見出すことはできない。上記の組合加入通知に先立ち、X7の解雇問題等に関する団交が繰り返されていたことを併せ考えると、会社が両人の組合加入を嫌悪し、深夜勤務の割当てを行わなかったものと判断される。
 認定した事実からは、会社がX2及びX3の車輌の駐車場所を変更する合理的理由はなかったと判断される。これに加え、組合が「労働組合加入通知書及び団体交渉申入書」を提出し、両人らの組合加入を通知した直後に会社が当該変更を指示した時間的近接性を鑑みると、両人の組合加入を嫌悪した会社が両人から同僚との接触機会を奪い、隔離することによって精神的な苦痛を与えるとともに、同僚から情報を得る機会を奪うことを企図したものといわざるを得ない。
4 会社は、別組合の結成に関与したと認められるか。
 認定した事実によれば、①平成21年7月1日、会社において別組合が結成され、ミキサー車運転手であるY4が分会長に就任し、団交が1回開催されたこと、②本件申立ての審問においてY4は、団交議題について答えることができなかったこと、③同人は、分会員約20名の3か月分の組合費を立て替えて支払っていたこと等が認められる。しかし、会社の従業員でないY4が組合費を立て替えたことや唯一開催された団交の議題を答えられなかったことは、極めて不自然であり、実際に自らが自主的、主体的に別組合を組織したとは考えることができない。
 一方、Y4は夜間の配車係を任せられるなど会社からの信頼があったと考えられること、当時労使関係が緊迫した状況になっていたことからすると、会社が組合に代わる労組の結成を求めたことは容易に推認される。これらのことを併せ考えると、会社は別組合の結成に関与したと判断される。
5 会社は団交において組合員に対する未払残業賃金の支払いを約束したと認められるか。
 組合の団交メモにおいてすらも「双方の協議で確定して解決させたい」という文言までしか記載されておらず、会社が団交において組合員に対する未払残業賃金の支払いを約束したとは認められない。
6 Y3によるX2及びX3に対する傷害行為は、会社による、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合が本件申立てを行ったことに対する報復的不利益取扱いに当たるか。
 Y3は会社の営業活動や人事面で影響力があったといえるが、同人が傷害行為を行うについて、会社が同人に指示したり、同人が会社の意を体して行為に及んだことを証するに足る事実の疎明はない。したがって、Y3の傷害行為は、会社による組合員であるが故の不利益取扱い、あるいは組合が本件申立てを行ったことに対する報復的不利益取扱いであるとはいえない。  
掲載文献   

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