概要情報
事件名 |
両磐酒造(不利益取扱い、支配介入) |
事件番号 |
岩労委平成23年(不)第1号の2 |
申立人 |
両磐酒造労働組合 |
被申立人 |
両磐酒造株式会社 |
命令年月日 |
平成23年9月6日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が①組合員X2及びX3を勤務実績が悪かったこと等を理由に配置転換したこと、②組合員X4に対し、休日出勤命令に従わなかったこと、入社後6か月間の仕事内容が悪いこと等を理由に試用期間を延長したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
岩手県労委は、会社に対し①組合員であることを理由とした配置転換及び試用期間の延長の禁止、②申立人組合に対する加入妨害及び脱退勧奨の禁止、③文書掲示、④履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。
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命令主文 |
1 被申立人は、申立人の組合員に対し、組合員であることを理由に配置転換及び試用期間の延長をしてはならない。
2 被申立人は、申立人組合に対する加入妨害及び脱退勧奨をしてはならない。
3 被申立人は、本命令書受領の日から7日以内に、縦55センチメートル、横80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に下記のとおり楷書で明瞭に記載し、事務所内の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。なお、年月日は文書を掲示した日を記載すること。
記
年 月 日
両磐酒造労働組合
執行委員長 A 様
両磐酒造株式会社
代表取締役社長 B
当社が行った下記の行為は、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると岩手県労働委員会で認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1)貴組合員X3氏に対し、組合員であることを理由に配置転換を命じたこと。
(2)貴組合員X4氏に対し、組合員であることを理由に試用期間を延長したこと。
(3)貴組合への加入妨害及び貴組合員への脱退勧奨を行ったこと。
4 被申立人は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
5 申立人のその余の申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
1 組合員X2の配置転換について
組合員X2については勤務状況に問題があったこと及びアルコール依存による問題行動があったことから、被申立人会社が同人を営業部から製品工場に配置転換したことは、業務上の必要性があり、当該配置転換には合理性があると認められる。また、その他に会社に不当な動機や目的があったとも認められないことから、不当労働行為意思があったともいえない。したがって、配置転換の不利益性を判断するまでもなく、労組法上の不利益取扱いには当たらない。
2 組合員X3の配置転換について
会社は、X3の配置転換の理由について、同人が他の従業員に瓶詰作業を教えなかったこと等を主張するが、そのような事実は認められず、配置転換の業務上の必要性が存在しないことから、当該配置転換の合理性は認められない。一方、X3が申立人組合の執行委員長であることや平成22年3月から4月にかけて会社が団交を拒否していることを考え併せると、会社には不当労働行為意思があったと認められる。また、X3は当該配置転換により、長年培ってきた経験を生かすことができなくなったことが認められることや、工場の製品担当の長から営業部車輌係(配送)に異動させられたこと等から、不利益な取扱いを受けたものと認められる。以上のことから、本件配置転換は不利益取扱いに当たる。
3 組合員X4の試用期間の延長について
X4が平成22年12月23日に出勤しなかったことは、形式的には休日出勤命令に違反しているようにみえるが、休日出勤の一連の経過及び上司である統括リーダーの了解をとっていたことからすると、命令に違反したとまでは断定できない。また、会社はX4の6か月間の仕事内容が悪いと主張するが、会社の社長及び管理職は仕事ぶりをほとんど見ていなかったことから、会社が仕事内容の評価を適正に行っていたとは認められない。
会社の業務課長は、X4の組合加入後、同人に対し、「組合に入ると試用期間が延びる」と話したが、これは組合加入が試用期間延長の理由であることを端的に示すものである。
以上から、X4に対する試用期間の延長に合理的な理由はなく、会社には不当労働行為意思があったと認めざるを得ないことから、当該試用期間の延長は不利益取扱いに当たる。
4 会社業務課長等の発言は、支配介入に当たるか。
上記3の業務課長の発言及び会社の次長が平成23年1月6日、X4に対して行った「組合に入ると賃金も上がらないし、社長から良く思われないから組合を抜けろ」との発言は、同人の組合加入を知らなかったとしても、組合への加入妨害若しくは組合員への脱退勧奨となり、組合への支配介入に当たる。
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掲載文献 |
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