概要情報
事件名 |
岐労委平成21年(不)第1号 |
事件番号 |
岐労委平成21年(不)第1号 |
申立人 |
X組合 |
被申立人 |
Y学園 |
命令年月日 |
平成23年3月22日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人法人が(1) 組合員X2及びX3に対し昇給延伸を行ったこと、(2) 非違行為により3か月の停職処分を受けた組合員X4に対し昇給延伸を行ったこと及び当該停職処分後に教科を担当させないという取扱いをしたこと、(3) X2及びX3に対する昇給延伸やX4の教壇復帰についての団体交渉に応じないこと等、(4) 職員会議等の場において申立人組合の労働委員会等への各種申立て又は組合員による裁判等の申立てについて言及したこと等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
岐阜県労委は、法人に対し、(1) X2及びX3の昇給延伸がなかったものとして取り扱い、当該昇給延伸がなければ得られたであろう賃金相当額と既に支払った賃金額との差額を支払うこと、(2) X4の教壇への復帰の問題に関して団体交渉に応じることを命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人Y学園は、申立人X組合の組合員X2及びX3に対する平成21年1月1日付けの昇給延伸がなかったものとして取り扱うとともに、当該昇給延伸がなければ得たであろう賃金相当額と既に支払った賃金額との差額を支払わなければならない。
2 被申立人Y学園は、「組合員X4の教壇への復帰問題」に関して、申立人X組合との団体交渉に応じなければならない。
3 その余の申立ては棄却する。 |
判断の要旨 |
1 被申立人法人がX2およびX3を昇給させなかったことは、同人らが組合員であること又は正当な組合活動を行ったことを理由とする不利益取扱いに当たるか。
X2らに対する昇給延伸は、X4に対する停職処分を契機として活発化した組合活動を嫌悪した法人が、その中でも特に熱心な組合活動を展開していたX2らに対して過去に例のない勤務成績不良を理由とする昇給延伸を行うことにより、組合活動の弱体化を企図したものと推認することができ、労組法7条1号の不当労働行為に当たる。
2 X4を昇給させなかったことは、同人が組合員であること又は正当な組合活動を行ったことを理由とする不利益取扱いに当たるか。
X4に対する昇給延伸は、同人が入試問題引き写し行為により3か月の停職処分を受けた後、行われたものであり、何らの懲戒処分も受けていなかったX2らの場合とは異なり、合理的な理由がないとはいえず、仮にX4が組合員ではなかったとしても同様に昇給延伸がなされた可能性を否定できないから、これが組合活動の故をもってなされたものであると認めるに足りない。
3 法人がX2及びX3に対する昇給延伸やX4の教壇復帰についての団体交渉に応じないとする理由に正当性があるか。
法人は、組合からの団交申入れに対し、昇給延伸については「回答済みで、個別回答も対応済み」として拒否したが、団交は1回行われたのみで、今後さらに進展が図られる可能性もあることなどから、当該団交拒否に正当な理由はない。教壇復帰については、法人は「回答済みであり経営の専管事項」と団交拒否の理由を述べているが、一方的に経営権に属する事項であることのみをもって団交の対象から除外する旨を通告するだけでは誠実な対応とは言い難い。また、「回答済み」として拒否したことに正当な理由はない。
4 法人が職員会議等の場で組合の労働委員会等への各種申立て等について言及した事実が存在するか。存在するならば、その事実は組合に対する支配介入に当たるか。
X4の停職処分については、制裁処分審議会委員等の関係者と組合員である職員以外の職員は組合による嘆願書への署名依頼に際して組合から一方的に情報を得たのみであって、何が起きているのかそれ以上の内実を知り得る方法はなく、法人が組合活動に対する報復措置であるかのごとき誤った認識が醸成されかねない状況であるとの危惧感を募らせ、臨時職員会議を開き法人の公式見解として当該処分を公表したこともやむを得ないことである。その際、懲戒処分の対象となった行為には触れず停職3か月という処分内容を伝達したことのみが認められ、このような態様で行われた公表について、X4に対する報復や威嚇の要素があったとまで認めることは困難である。 |
掲載文献 |
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