労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  岐労委平成21年(不)第2号 
事件番号  岐労委平成21年(不)第2号 
申立人  X組合 
被申立人  Y会社 
命令年月日  平成23年2月22日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が(1) 申立人組合から平成21年4月以降申入れのあった組合員X2ほか2名の賃金減額問題及び労働条件に関する労働協約を議題とする団体交渉に応じなかったこと、(2) 上記(1) に係る救済申立ての後、22年2月から5月までの間に行った団交において組合の要求した財務諸表等の具体的な資料を提示して説明しなかったこと、(3) 同年6月からX2の賃金を減額したこと及び7月23日付けで同人を解雇したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 岐阜県労委は、会社に対し(1) 誠実団交応諾、(2) X2に対する22年6月からの賃金減額及び7月23日付け解雇がなかったものとして取り扱うとともに、既に支払った賃金額との差額を支払うことを命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、具体的な資料を提示し説明するなどして誠実に団体交渉を行わなければならない。
2 被申立人は、申立人の組合員X2に対する平成22年5月10日付け労働条件通知書による賃金減額及び同組合員に対する同年7月23日付け解雇がなかったものとして取り扱うとともに、当該賃金減額及び解雇がなければ得たであろう賃金相当額と既に支払った賃金額との差額を同組合員に対して支払わなければならない。
3 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人会社が平成21年4月以降組合から文書で申し入れられた団体交渉に応じなかったことについて、正当な理由があるか。
  会社は当時は業務が多忙であったため応じることができなかったと主張するが、各団交の申入れ時において団交に応じられないほどに会社が継続して業務多忙であったと認めるに足る証拠はない。また、会社はX2らの組合加入の確認を取ることができなかったことから団交に応じることができなかったと主張するが、組合加入の事実は委任状などで確認することもできるのであって、本人から確認が取れなかったからといって、団交を拒否する理由にはならない。したがって、会社が各団交の申入れに応じなかったことについては正当な理由があったとは認めることができない。
2 会社は、本件申立て以降に開催された団交において、賃金体系や賃金額の決定の根拠に関する資料を提示して説明を行ったが、なお不誠実であったか。
  会社による資料の提出により労使の実効的な議論が一定程度可能になったと解されるが、こと賃金減額の根拠に関しては組合が求める具体的な資料を提示しての説明はしておらず、会社の対応は不誠実であったと解さざるを得ない。
3 22年6月からのX2の賃金減額は、組合員であることを理由として行われた不利益取扱いといえるか。
  会社が本件賃金減額を内容とする労働条件通知書をX2に送付した時期は、組合が同人らのそれまでの賃金減額問題に関し、会社に団交を申し入れた時期、本件申立てを行った時期、会社との間で団交を行っていた時期と符合しており、当然のことながら、会社は同人に関するこうした組合活動が行われていたことを十分に認識していたということができる。また、組合が主張するように、会社は本件申立て以降に「業務についての注意」文書をX2に繰り返し送付するようになっている。こうした事実からは、本件賃金減額は、X2が組合に加入して団交を申し入れ、また本件申立てなどの組合活動にかかわったためになされたものと推認することができ、これを覆すに足りる証拠はない。
4 X2の解雇は、組合員であることを理由として行われたものといえるか。
  会社が解雇を予告した時期は、組合が会社の事務所及び社長の自宅周辺において抗議活動を始めるとともに、当委員会への追加申立てを行い、X2が岐阜地裁への賃金仮払仮処分の申立てを行った時期に符合している。また、社長は団交等の申入れにも応じようとせず、同人や組合との接触を拒み続けている。
  こうした事実からは、本件解雇は、仮にX2の技術が劣っていたとしても、そのためだけになされたものではなく、同人が組合に加入して団交を申し入れ、また本件申立てなどの組合活動にかかわったためになされたものと推認することができる。 
掲載文献   

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