概要情報
事件名 |
大阪府労委平成21年(不)第40号 |
事件番号 |
大阪府労委平成21年(不)第40号 |
申立人 |
X労働組合、Z労働組合連合会 |
被申立人 |
Y株式会社 |
命令年月日 |
平成23年7月22日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が次長職を廃止する際、(1) 次長職であった組合員に対して管理職年俸契約書に署名押印を求めたこと、(2) 次長職であった組合員12名のうち、申立人組合の統制に従って管理職年俸契約書に署名押印をしなかった7名を一般職である参事に降格させる一方、組合に脱退届を提出して署名押印した5名を管理職である副部長職に昇格させたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は、会社に対し(1) 上記の組合員7名を副部長待遇に登用されたものとして取り扱うこと、(2) 組合への文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人Y株式会社は、申立人X労働組合の組合員X3、同X4、同X5、同X6、同X7、同X8及び同X9について、平成21年7月1日付けで副部長待遇に登用されたものとして取り扱わなければならない。
2 被申立人Y株式会社は、申立人X労働組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X労働組合
執行委員長 X1 様
Y株式会社
代表取締役 Y1
当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、(1)については労働組合法第7条第3号に、(2)については同条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
記
(1) 貴組合と十分な交渉を行わないまま、次長職であった貴組合の組合員に対して管理職年俸契約書に署名押印を求めたこと。
(2) 平成21年7月1日付け人事発令において、貴組合の統制に従って管理職年俸契約書に署名押印しなかった貴組合の組合員ら7名を、一般職の参事としたこと。 |
判断の要旨 |
1 被申立人会社が、次長職であった組合員に対して管理職年俸契約書に署名押印を求めたことは、申立人組合に対する支配介入といえるか。
組合は、次長職組合員から次長職廃止に伴う労働条件の変更に関する交渉について委任を受けており、会社は新管理職制度において次長職組合員を管理職に登用するに当たっては組合の同意を得るよう努力する必要があった。また、組合は会社に対し、組合の統制に従っている組合員の署名押印がないことで個々の登用の意思なしとの判断を行わない旨の申入れをしている。したがって、このような状況においてもなお、会社が管理職年俸契約書への署名押印を次長職組合員に個々に求め続けたことは、組合員から委任を受けた組合の立場を無視ないし軽視するものであり、相当とはいえず、こうした会社の行為が正当なものであったとはいえない。
次に、会社が署名押印を求めた手法についてみると、署名押印した管理職年俸契約書の提出期限を当初平成21年6月1日と設定したこと自体は不合理とはいえないものの、その直前の団交においても労使間に意見の相違があり交渉中であったところ、会社は暫定措置等を協議することもなく、期限までに署名押印することを求めていた。こうした会社の行為は、当初設定した期限に固執しているといわざるを得ず、交渉のために十分な期間をとり、組合と誠実に交渉してきたとする会社の主張は採用できず、労働条件の不利益変更の可能性があるという、組合員に影響が大きい事項を協議するに当たり、その手法に問題がなかったとまではいえない。
以上のとおり、会社が管理職登用の条件として管理職年俸契約書への署名押印を求め続けたことは相当とはいえず、また、その手法にも問題がなかったとはいえないのであって、労働条件の不利益変更の可能性がある事項を協議するに当たって、対象労働者から委任を受けた組合の交渉権を制約するおそれがないとはいえない。よって、組合に対する支配介入に該当するといわざるを得ない。
2 会社が管理職年俸契約書に署名押印しなかった組合員を副部長に昇格させないで一般職の参事としたことは、不利益取扱い及び支配介入といえるか。
会社は、組合員7名を年俸管理職に登用しなかったのは当該7名が管理職年俸契約書に署名押印しなかったためとしているが、前記1の判断のとおり、会社が自ら設定した期限内に次長職組合員に署名押印を求めたことは支配介入に当たるところであり、これを前提にすると、署名押印しなかったことだけを理由に副部長に昇格させなかったことは組合員が組合の正当な行為をしたことの故をもって行われた不利益取扱いであるとともに、組合の弱体化を図る支配介入を行ったとみることが相当である。 |
掲載文献 |
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