概要情報
事件名 |
さくら生コン |
事件番号 |
中労委平成22年(不再)第18号 |
再審査申立人 |
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部 (「組合」) |
再審査被申立人 |
有限会社さくら生コン(「さくら生コン」) |
命令年月日 |
平成23年6月1日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
さくら生コンが、平成20 年8月19 日付けの組合員の雇用問題等についての団体交渉申入れに対し、組合員はさくら生コンが雇用する従業員ではなく、Y3輸送会社に雇用される従業員であるから、さくら生コンは団体交渉を求められる立場にないとして、これに応じなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。
大阪府労委は、組合員の雇用確保について、さくら生コンは、使用者と同視できる地位にあるということはできないとして、組合の救済申立てを却下したところ、組合は、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 組合は、(1) さくら生コンの業務は、4社(さくら生コン、Y1社、Y2社及びY3輸送会社、以下「さくら生コンら4社」)が渾然一体となっており、従業員はいずれの企業に所属するのか不明確である旨、(2) Y3輸送会社には社内の指揮命令体制はない旨、(3) 業務指示等はさくら生コンの業務体制の中に完全に組み込まれていた旨主張するが、いずれの主張も失当である。
すなわち、(1) 「Y2社は、工事業者から生コンの注文を受け、売買契約を締結し、Y1社に発注」、「Y1社は、Y2社や他の商社から、生コンの注文を受け、生コンを販売」、「さくら生コンは、Y1社から生コンの注文を受け、生コンを製造」、「Y3輸送会社は、Y2社との間で業務委託契約を締結し、Y2社が取り扱う生コンの輸送業務を受託」していることからすると、さくら生コンら4社は、継続的な取引関係にあったことは認められるが、それぞれが独立した主体として事業活動を行っていると判断される。(2) 組合員の募集・採用、賃金額の決定等は、Y3輸送会社の代表者らが行っていたことからすると、Y3輸送会社は形式上も実態上も組合員の雇用主である。(3) Y1社の出荷係も組合員に対して業務指示を行っていたものであるが、Y1社の業務としてこれを行っていたのであり、さくら生コンの指示等に基づいてこれを行っていたとは認められない。
2 組合は、さくら生コンら4社を含む取引関係にある会社で構成されるY企業グループあるいはY2社のZ取締役を通じて、さくら生コンがY3輸送会社を支配しているとの趣旨の主張をする。
確かに、(1) Y3輸送会社はY企業グループに属し、Y3輸送会社の代表者は、Z取締役のアドバイスを受けている可能性があること、(2) Y3輸送会社を立ち上げたのは、Z取締役による勧誘が契機となっていること、(3) Y3輸送会社の代表者は、Z取締役から言われ、営業活動に出るようになったこと、(4) Y3輸送会社の事業活動停止に当たって、Y3輸送会社の代表者はZ取締役と面談していることが認められる。
しかしながら、上記(1) ないし(4) の事実が認められるとしても、これらはいずれもZ取締役がY2社の取締役としての立場で行ったもので、これを受け入れるか否かについてはY3輸送会社の代表者が自己の責任で判断していたと推認され、現に、上記(2) ないし(4) についてはY3輸送会社の代表者が自らの意思で決断していることからすると、さくら生コンの支配力が組合員の労働条件等に及んでいるということはできない。
3 以上のとおりであるから、さくら生コンは、Y3輸送会社の従業員である組合員の労働契約上の雇用主ではなく、また、組合員の基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配力を有している者ということもできない。従って、さくら生コンは、組合員との関係において、労働組合法7条の使用者に該当するものとはいえない。 |
掲載文献 |
|