労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  京都新聞社 
事件番号  中労委平成21年(不再)第19号 
再審査申立人  京都新聞社労働組合(「組合」) 
再審査申立人   
再審査被申立人  株式会社京都新聞社(「会社」) 
再審査被申立人   
命令年月日  平成23年4月6日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 会社は、グループ経営化に伴い、会社を会社、Y1社及びY2社の三社に分社した。
 その後、有期雇用社員の契約更新は3年を上限とするとのルール(3年ルール)がY1社の契約社員であるX1及びX2に適用されて雇止めとなる問題(本件雇止問題)に関し、組合が、雇止撤回の決定権を有するのは会社であるとして、会社に団体交渉を申し入れたところ、会社は、Y1社固有の問題であるとしてこれに応じなかった。
 本件は、上記会社の対応が不当労働行為に当たるとして、救済申立てのあった事件である。
2 京都府労委は、会社は組合との団体交渉に応じる義務がある使用者とはいえないとして組合の救済申立てを却下したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨   本件雇止めに関する団体交渉について、会社は、労働組合法第7条の使用者に当たるかどうか。
1 労働組合法第7条にいう「使用者」は、同法が助成しようとする団体交渉を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者を意味し、労働契約上の雇用主が基本的にこれに該当するものの、必ずしも同雇用主に限定されるものではない。雇用主以外の者であっても、当該労働者の基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者は、その限りにおいて同条にいう「使用者」に当たると解される。
2 三社は事業の組織と機能において密接不可分な関係にあり、グループ一体となった経営が予定されていたことが認められ、Y1社設立後は、会社は、Y1社の株式の100パーセントを所有し、役員は全員会社の取締役等が兼務するなど、Y1社の経営に対する強い支配力を有していたものと見られる。また、Y1社の売上げの9割強を会社の委託業務等が占め、業務委託料は会社が決定しているなど、Y1社は、経済的にはほぼ完全に会社に依存した経営を行っている事業体であるといえる。もっとも、Y1社の法人格が形がい化している証拠はなく、また、独立した活動を行っているから、Y1社が実体のない企業で、完全に会社の一部組織と化しているとは認め難い。
3 そして、Y1社の契約社員については、Y1社開業の際に雇用契約手続等を行ったのは会社であるが、開業後はY1社が契約社員規程等の定めに従ってその雇用労働条件を管理しており、契約の更新、勤務時間の管理、人事管理や基本的労働条件の決定等について、会社は現実的・具体的な関与をしておらず、Y1社が現実的・具体的に決定してきたということができ、会社の使用者性は基本的には認め難いというべきである。
4 ところで、3年ルールは、会社の内部組織であるY1社開業準備室が作成したY1社の契約社員規程に定められたものであるから、会社がY1社に導入したものと評価できる。しかしながら、Y1社の契約社員であるX1及びX2の雇用主はY1社であり、また、上記(3)のとおり、同人らの労務管理及び賃金、年次有給休暇等の基本的労働条件に関しては、Y1社が労組法上の使用者であることが明らかであるから、X1及びX2に3年ルールを適用したことについて会社が労組法上の使用者であるというためには、グループ会社としての一体的経営における両社の関係や、3年ルールをY1社開業時に導入したのが会社であることをいうだけでは足りず、その運用について会社が現実的かつ具体的に支配していたことが必要である。
 しかるところ、3年ルールは、分社化の前後を通じ会社やその子会社において必ずしも厳格に運用されていたとは認められず、また、会社は、Y1社の契約社員の雇止めについてはY1社独自の問題であるとの態度を一貫して取り、さらには、Y1社は、組合との団体交渉で、3年ルールについてY1社独自で変更しあるいは運用できるものではなく会社が決定しているとはしていない。加うるに、会社は、グループ各社が自らの判断に基づいて、3年ルールを独自に改定ないし改廃できるものである旨を言明している。
5  以上によれば、3年ルールの運用について、会社が現実的かつ具体的な支配を及ぼしているとまで認めることは困難である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
京都府労委平成20年(不)第8号 却下 平成21年5月14日
 
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