労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  協同運輸 
事件番号  福岡労委平成22年(不)第1号 
申立人  全国一般労働組合全国協議会北九州合同労働組合(ユニオン北九州) 
被申立人  協同運輸株式会社 
命令年月日  平成23年4月22日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①社内での安全会議において、組合員X2に対し、前社長の通夜に出席しなかったことを批判したこと等、②ストライキ中のX2に対し、電話で「出てこい」などと発言したこと、③ストライキ後、初めて出社した組合員X3に対し、「遅刻やないか」などの言動を行ったこと、④X2及びX3に対する安全就労確保の措置を講じなかったこと、⑤X2及びX3を休職期間満了による退職扱いとしたこと、⑥X2らの安全就労確保に関する確認書を締結しなかったこと、⑦組合が申し入れた団体交渉に応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 福岡県労委は、会社に対し①組合員に精神的苦痛を与えて不利益に取り扱い、組合の運営に支配介入することとなるような言動をしないこと、②ストライキ中の組合員に出社を要求するなどして組合の運営に支配介入しないこと、③X2及びX3に対する退職通知を撤回し、退職がなかったものとして扱うとともに、両名の今後の処遇について組合と協議すること、④誠実団交応諾、⑤組合への文書の手交・掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、次のような言動などを通して、組合員に精神的苦痛を与えて不利益に取扱い、申立人組合の運営に支配介入してはならない。
(1)安全会議において、前社長の通夜に欠席したことを理由に組合員を批判したり、新賃金体系に同意しない組合員に対する従業員の批判を制止せず、これを助長したこと。
(2)出社した組合員に対し、数分間遅刻したとしてこれを理由に、脅迫的な言動を行ったこと。
2 被申立人は、ストライキ中の個々の組合員に対し、出社を要求する趣旨の電話をするなどして、申立人組合の運営に支配介入してはならない。
3 被申立人は、組合員X2及びX3に対する平成22年2月15日付け退職通知を撤回し、退職がなかったものとして扱うとともに、両名の今後の処遇について、速やかに申立人組合と協議しなければならない。
4 被申立人は、申立人組合からの平成21年11月6日付け、同年12月12日付け及び平成22年2月12日付け団体交渉申入れに対し、誠意をもって速やかに応じなければならない。
5 被申立人は、本命令書写しの交付の日から10日以内に、次の文書を申立人組合に交付するとともに、A1版の大きさの白紙(縦約84センチメートル、横約60センチメートル)に明瞭に記載し、被申立人会社の運転手控室内の従業員の見やすい場所に14日間掲示しなければならない。
平成 年 月 日
 全国一般労働組合全国協議会
 北九州合同労働組合(ユニオン北九州)
 執行委員長 X1 殿
協同運輸株式会社
代表取締役 Y1
 協同運輸株式会社が行った下記の行為は、福岡県労働委員会によって労働組合法第7条に該当する不当労働行為と認定されました。
 今後このような行為を行わないよう留意します。
1 平成21年8月28日の安全会議において、組合員X2氏が前社長の通夜に出席しなかったことを批判したこと及び新賃金体系に同意しない組合員に対する従業員の批判を制止せずこれを助長したこと。
2 平成21年9月18日、ストライキ中の組合員X2氏に電話し、「出て来い。」などと発言したこと。
3 平成21年9月25日、組合員X3氏の出勤に際し、数分間遅刻したとしてこれを理由に、大声で怒鳴るなどの脅迫的言動を行ったこと。
4 平成22年2月15日付けで、組合員X2氏及びX3氏を退職扱いとしたこと。
5 貴組合からの平成21年11月6日付け、同年12月12日付け及び平成22年2月12日付け団体交渉申入れに正当な理由なく応じなかったこと。
6 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 安全会議において、組合員X2に対し、前社長の通夜に出席しなかったことを批判したこと等について
 X2及びX3の組合加入後、被申立人会社は社内における組合員の存在を相当に警戒し、危機感を抱いていたことがうかがえる。また、組合がX2の処遇に抗議してストライキを行ったこと及び会社の提案した新賃金体系にも同意しなかったことを考えると、会社は組合員及び組合活動に強い反感を抱いていたことが推認される。したがって、安全会議の場で、会社の管理職らがことさらにX2の通夜欠席を取り上げて追及し、さらに、会社が新賃金体系への不同意についての他の従業員からの非難を制止せず助長したことは、X2が組合員であること及び同人の組合活動を嫌悪したことによるものというべきである。X2は相当な精神的苦痛を被ったと考えられ、会社のかかる言動は労組法7条1号の不利益取扱いに該当する。また、同人の組合活動を萎縮させ、ひいては社内の組合活動に影響を及ぼすものであるから、同条3号の支配介入にも該当する。
2 ストライキ中のX2に対し、電話で「出て来い」などと発言したことについて
 この発言は、ストライキ継続中の組合員に対し、個別に接触を図り影響力を行使するものと評価せざるを得ず、組合活動に対する支配介入に該当する。
3 ストライキ後、初めて出社した組合員X3に対し、「遅刻やないか」などの言動を行ったことについて
 実際にX3が遅刻したかどうかは明らかではなく、仮に遅刻したとしても数分程度のことであり、このことについて大声で怒鳴りつけた会社の社長の言動は単に遅刻を叱責したものと評価することはできず、X3が組合員であること及び同人の行った組合活動への報復を目的としてなされた不利益取扱いである。また、X3の組合活動を萎縮させ、社内の組合活動に影響を及ぼすものであるから、支配介入にも該当する。
4 X2及びX3に対する安全就労確保の措置を講じなかったことについて
 組合は、X2らが会社の一連の言動によって精神疾患に罹患したとの前提に立ち、会社が同人らの安全就労確保のための措置を講じるべきであったとするが、どのような措置をとるべきであったかを具体的に主張しておらず、不当労働行為に当たる行為を特定していない以上、会社が安全就労確保の措置をとらなかったからといって、そのことが不当労働行為に該当すると判断することはできない。
5 X2及びX3を休職期間満了による退職扱いとしたことについて
 会社はX2らの就労の可能性を検討しないまま、就業規則を形式的に適用して退職扱いとしており、その手続は相当なものであったとはいい難い。また、前記のように、会社が不当労働行為に当たる行為を繰り返していたことからすれば、本件退職措置は治癒又は治癒見込みの診断書が休職期間内に提出されなかったことを奇貨として同人らを社外に排除することを目的としてなされたものと認められ、不利益取扱い及び支配介入に該当する。
6 X2らの安全就労確保に関する確認書を締結しなかったことについて
 団体交渉においてX2らの安全就労の確保に関する具体的合意が成立したとは認められないから、会社が確認書の締結を拒否したことは不当労働行為には該当しない。
7 組合が申し入れた団体交渉に応じなかったことについて
 X2らの安全就労の問題については平成21年10月5日に1時間余り交渉が行われたに過ぎず、十分に議論が尽くされた上で団交が行き詰まり状態になったと評価することはできない。また、実労働時間の問題など組合が申し入れたその他継続事項は、いずれも義務的団交事項であり、また、既に協議が尽くされたとも認められない。したがって、会社が同年11月6日付けで申入れのあった団交に応じなかったことは正当な理由のない団交拒否である。
 組合がX2及びX3の休職期間が満了する直前の22年2月12日、退職手続の凍結等を求めて団交申入れを行ったのに対し、会社は両名が既に退職となっており、それを受けて団交申入れ事項も変更せざるを得ないとして申入れ事項の再考を促す旨の回答を行った。しかし、こうした対応は、団交を拒否するとは明言していないものの、何ら具体的に交渉に応じる姿勢を示さず、また、両名の退職問題が団交の対象になることは明らかであったにもかかわらず、組合側に不当に再考を求めるというものであって、実質的な団交拒否に当たる。 
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