労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  鴨川ヒルズリゾート 
事件番号  千労委平成21年(不)第4号 
申立人  連合ちばユニオン・ヒルズアソシエーション労働組合 
被申立人  有限会社鴨川ヒルズリゾート 
命令年月日  平成23年3月25日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が組合員に対して行った降格、減給、解雇、配置転換や、契約更新手続を遅らせたこと、組合からの脱退勧奨、退職強要等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 千葉県労委は、会社に対し①組合の執行委員長及び元組合員1名の降格をなかったものとして取り扱い、降格がなければ受けるはずであった賃金相当額と支給済みの賃金との差額を支払うこと、②組合への文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合執行委員長X1に対する平成22年1月16日付け支配人付衛生管理者への降格をなかったものとして取扱い、降格がなければ同人が受けるはずであった賃金相当額と既に支給済の賃金との差額を同人に対して支払わなければならない。
 なお、同人を復帰させるべき業務の決定及び降格がなければ同人が受けるはずであった賃金相当額の算定にあたっては、申立人と直ちに誠実に協議すること。
2 被申立人は、申立人組合の元組合員であるX3に対する平成22年2月15日付け係長への降格をなかったものとして取扱い、降格から同年3月15日までの間、降格がなければ同人が受けるはずであった賃金相当額と既に支給済の賃金との差額を同人に対して支払わなければならない。
 なお、降格がなければ同人が受けるはずであった賃金相当額の算定にあたっては、申立人と直ちに誠実に協議すること。
3 被申立人は本命令書受領の日から1週間以内に、下記の内容の文書を申立人に交付しなければならない。

 連合ちばユニオン・ヒルズアソシエーション労働組合
 執行委員長 X1 様
   年 月 日
有限会社鴨川ヒルズリゾート
代表取締役 Y1
 当社が行った下記の行為は、千葉県労働委員会において労働組合法第7条第1号及び同条第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 今後このような不当労働行為を繰り返さないようにします。
1 貴組合の執行委員長であるX1氏を、平成21年11月1日付けで料飲サービス課監督職へ変更したこと及び平成22年1月16日付けで、支配人付衛生管理者へ降格したこと。
2 貴組合の組合員であったX3氏に対し、平成22年2月15日付けで、係長へ降格したこと。
3 貴組合の書記長であるX2氏に対し、平成21年10月3日付け自宅待機命令、同月18日付け業務指示及び同月26日付け懲戒解雇処分を行ったこと。
4 平成21年9月24日、貴組合の執行委員長であるX1氏が、組合結成通知書を手渡した際、当社代表取締役Y1が、「組合なんかなんでつくるんだ」等の発言をしたこと。
     (注:年月日は交付の日を記載すること。)

4 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人会社が申立人組合の執行委員長X1を料飲部長から監督職に、また、監督職から支配人付衛生管理者にそれぞれ変更したことは、不利益取扱いに当たるか。
 X1の職名を監督職に変更したことは、同人に対しては合理的な説明のできない役職変更を強いることにより精神的苦痛を与え、他の従業員に対しては組合に加入していると不合理な役職変更などの不利益を被るといった意識を植え付けることにより、組合活動を萎縮させ、もって組合の弱体化を図る目的のもと行われた行為であるといえる。また、支配人付衛生管理者への変更は、その職務内容からみて合理的に説明することはできない。むしろ、同人が組合の執行委員長であることを理由とした不利益取扱いであり、同人を事実上の降格とすることで他の組合員を萎縮させ、組合の弱体化を企図したものと認めるのが相当である。以上から、いずれも法7条1号及び3号の不当労働行為であると判断する。
2 会社が組合員X3の役職を課長から係長に変更したことは、不利益取扱いに当たるか。
 X3を係長に降格したことは、その理由に合理性は窺われず、会社が同人に対して組合を脱退するか、係長職に降格するのかの判断を強要した結果であると認めるのが相当であるから、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いであり、また、組合弱体化を企図したものと認めるのが相当である。
3 会社が組合の書記長X2に対し、懲戒解雇したこと等は不利益取扱いに当たるか。
 会社が主張するような懲戒解雇事由があったとは認定できないから、当該懲戒解雇は無効であると判断せざるを得ない。組合が会社に組合結成を通知するやいなや、X1に対する不当労働行為が始まり、それとほぼ並行してX2に対する自宅待機、業務指示そして懲戒解雇がなされている。また、会社においては、組合嫌悪の感情を有する会長Y2が人事を始め経営全般に深く関与していた。以上を併せ考えると、会社がY2の意を汲み、組合設立に際し中心的役割を果たしたX2に対して不利益取扱いを行うことにより、他の組合員を萎縮させ、もって組合弱体化を企図してなされたものと推認できる。
4 会社はその役員や幹部職員をして、組合員に対する退職強要や組合からの脱退勧奨、組合への誹謗中傷などの行為を行わせたか。行わせた場合、それらの行為は、支配介入に当たるか。
 組合は会社の社長Y1に組合結成通知書を手渡した際、同人が「なんで組合なんかつくるんだ」などの発言をしたと主張する一方、Y1はそのような発言はしていない旨証言している。しかし、Y1の証言は極めて曖昧で歯切れの悪いものであり、全面的に信用することには疑念を持たざるを得ない。また、会社の人事等に深く関与し、会社に対して大きな影響力を持つ会長Y2が組合を嫌悪していたことなどを併せ考えると、Y1は組合が主張するとおり、組合を認めない旨の発言を行ったものと推認するのが自然である。このことは、組合の運営に対する支配介入である。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約448KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。