労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  栄光福祉会 
事件番号  福岡労委平成21年(不)第7号 
申立人  全国一般労働組合福岡地方本部 
被申立人  社会福祉法人栄光福祉会 
命令年月日  平成23年3月11日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   申立人組合の分会の分会長X2は、被申立人法人の経営する障害者支援施設に職員として勤務していたが、平成21年8月28日出勤の際、10分ほど遅刻し、その事実を隠すために正規の通勤経路を通らずに施設内に入った上、この一件についての法人事務局長らの事情聴取に対し虚偽の供述を繰り返し行った。法人は、懲罰委員会を開催して同人を10日間の出勤停止処分に処した。
 本件は、法人が①X2を上記のものを含む3件の出勤停止処分及び1件の減給処分に処したこと、②同分会の書記長X3を2件の戒告処分に処したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 福岡県労委は、法人に対し①X2に対する上記の処分をいずれも撤回し、これらの処分がなければ受けるはずであった賃金相当額を支払うこと、②X3に対する上記の処分をいずれも撤回すること、③組合への文書の手交・掲示を命じた。
命令主文  1 被申立人社会福祉法人栄光福祉会は、申立人全国一般労働組合福岡地方本部の組合員X2に対する平成21年9月9日付け出勤停止処分、同年10月28日付け減給処分、平成22年2月25日付け出勤停止処分及び同年3月17日付け出勤停止処分をいずれも撤回し、同人に対し、処分を撤回した旨を文書で通知するとともに、これら処分がなければ受けるはずであった賃金相当額130,369円を支払わなければならない。
2 被申立人社会福祉法人栄光福祉会は、申立人全国一般労働組合福岡地方本部の組合員X3に対する平成22年2月24日付け戒告処分及び同年3月17日付け戒告処分をいずれも撤回し、同人に対し、処分を撤回した旨を文書で通知しなければならない。
3 被申立人社会福祉法人栄光福祉会は、本命令書写しの交付の日から7日以内に、下記内容の文書(A4判)を申立人全国一般労働組合福岡地方本部に手交するとともに、A1判の大きさの白紙(縦約84センチメートル、横約60センチメートル)全面に下記内容を明瞭に記載し、被申立人社会福祉法人栄光福祉会が経営する栄光園の支援員室内の見やすい場所に30日間掲示しなければならない。
平成 年 月 日
 全国一般労働組合福岡地方本部
  執行委員長 A 殿
社会福祉法人栄光福祉会
理事長 B
 社会福祉法人栄光福祉会が行った下記の行為は、福岡県労働委員会によって労働組合法第7条に該当する不当労働行為と認定されました。
 よって、ここに陳謝するとともに、今後、このようなことを行わないよう留意します。
1 平成21年9月9日付けで全国一般労働組合福岡地方本部の組合員X2氏を出勤停止処分にしたこと。
2 平成21年10月28日付けで同組合員X2氏を減給処分にしたこと。
3 平成22年2月25日付けで同組合員X2氏を出勤停止処分にしたこと。
4 平成22年2月24日付けで同組合員X3氏を戒告処分にしたこと。
5 平成22年3月17日付けで同組合員X2氏を出勤停止処分にしたこと。
6 平成22年3月17日付けで同組合員X3氏を戒告処分にしたこと。 
判断の要旨  1 分会長X2に対する平成21年9月9日付けの出勤停止処分について
 X2の遅刻に係る一連の事実は、法人と職員との間の信頼関係を損ないかねないという意味で一応、懲戒することができる場合に該当するといえるが、同人の虚偽の供述が法人の業務運営に著しい影響を及ぼしたものとは認められず、また、正規の通勤経路を通らずに施設内に入ったことを外部の者に現認されてはいても、そのことによって法人に具体的な損害が発生したとの事実は認められないのであるから、職場秩序を乱したとしてもその程度は軽微なものであり、これに対してなされた10日間の出勤停止処分は過重であり、社会通念上相当なものとは認められない。
 一方、本件申立て以前において組合と法人との間には度々労使紛争が発生しており、平成20年4月になされた分会員全員の解雇を巡る紛争の経緯等を鑑みれば、職場内において組合と法人との間に相当程度の緊張関係があったことが推認できる。そして、今回のX2の遅刻等に対する法人の対応をみると、法人の業務を著しく阻害したり、職場秩序を著しく乱したりすることはないと考えられるにもかかわらず、法人による事情聴取は3時間30分にも及んでいる。このような経過や前述のような職場内での労使の緊張関係などからみると、法人は、組合員であるX2の排除を企図し、同人の言動や勤務態度に落ち度がないかということに殊更着目していたものと解される。また、9月8日に開催された法人の懲罰委員会で、X2の一連の行動が業務に支障を及ぼした程度や処分の相当性などの検討が何らなされないままに、懲罰委員長である法人事務局長が解雇相当との意見を述べたことなどからしても、法人がX2を排除しようとの意図を抱いていたと推認される。
 以上から、法人はX2が組合員であり、また、以前に解雇の撤回を求めて組合活動を行ったが故に、懲戒処分するに当たり殊更不利益に取り扱ったものと解される。また、当該出勤停止処分は、組合の分会長を懲戒処分することによって組合活動を弱体化せしめる支配介入でもある。
2 分会の書記長X3に対する3月17日付け戒告処分について
 X3は、ショートステイの利用者Aが入浴していないことを知りながら入浴サービスを行わなかったとは認められず、また、たとえ同人に過失があるとしても当時の施設内の執務状況からみると軽微なものにとどまるといわざるを得ない。したがって、X3が入浴サービスを行わなかったことは、懲戒事由には該当しない。法人がこの件について開催した懲罰委員会は、X2に対するものと同様に、X3の落ち度を殊更とがめるべく、恣意的な運営がなされていると解される。そのような状況下でなされた合理的理由に欠ける本件懲戒処分は、X3が組合員であること及び組合活動を行ったが故の濫用的な取扱いと解されるとともに、組合活動を弱体化せしめる支配介入でもある。 
掲載文献   

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