労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  ヤンマー 
事件番号  中労委平成22年(不再)第14号 
再審査申立人  ヤンマー株式会社(以下「会社」) 
再審査申立人   
再審査被申立人  アルバイト・派遣・パート関西労働組合(以下「組合」) 
再審査被申立人   
命令年月日  平成22年11月10日 
命令区分  全部変更 
重要度   
事件概要   会社が、①20年9月4日付けで組合から申し入れのあった「期間従業員就業規則」及び「誓約書」に関する事項を議題とする本件団交に応じなかったこと、②びわ工場で労務を提供していた株式会社ヤンマービジネス及び吉田産業株式会社の派遣労働者である組合員に対し、同年9月16日付けで会社に直接雇い入れる条件として、「誓約書」の提出を求めたことが、それぞれ労組法7条2号、同条3号の不当労働行為に当たるとして、申し立てがあった事件である。
 滋賀県労委は、上記のうち①の、会社が本件団交に応じなかったことは労組法7条2号の不当労働行為に当たるとして、会社に対し、文書手交を命じ、その余の申し立てを棄却したところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てたものである。 
命令主文  初審命令主文第1項を取消し、これに係る本件救済申し立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社は、本件団体交渉の申し入れに関して、労組法7条の使用者といえるか
(1) 労組法7条にいう「使用者」とは、雇用契約上の雇用主が基本的にこれに該当するものの、必ずしもこの者だけに限定されるものではない。雇用主以外の者であっても、当該労働者との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者は雇用主と同視できる関係にあり、同条にいう「使用者」と解するのが相当である。
(2) 本件についてみると、会社は遅くとも20年8月6日には派遣労働者の直接雇用を決定し、開始時期を同年9月16日として具体的労働条件及び手続きを定め、同年8月6日の派遣労働者全員を対象とした説明会(以下「8.6説明会」)等で説明し、希望する者は同月20日までに労働条件契約書を提出することを指示し、提出があれば入社手続書類を交付する旨説明していた。
 したがって、本件団交申し入れが行われた同年9月4日の時点において、会社は、組合員との関係において、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者として、雇用主と同視できる関係にあり、労組法7条の「使用者」に該当するというべきである。
2 会社が団体交渉に応じなかったことに正当な理由があったか
(1) 本件団交申し入れの協議事項である期間従業員就業規則及び誓約書は、会社が直接雇用した後の組合員の労働条件等に関するもので、義務的団交事項といえる。会社は、8.6説明会及び8.19団交において、労働条件一覧を配付しているものの、主要な労働条件の概要のみの説明にとどまり、同規則に記載されているもののうち、重要な労働条件である服務規律、退職・雇止め・解雇、懲戒等に関する事項等については、一切触れず、その上、組合からの同規則案の提示要求には応じていないことから、会社が、同規則の内容について、組合との協議を尽くしたと認めることはできない。また、8.19団交で、組合が今後の団体交渉における議論等によっては誓約書の提出に関して譲歩する余地があると受け取れる姿勢も示していた経緯からすれば、会社は、本件団交に応じ、組合の要求に応じられない合理的な理由を説明し、理解を得るよう努める義務があったというべきである。
(2) 本件団交申し入れは、直接雇用の始期が切迫した時期に、誓約書提出の判断をするためとしてなされたものであったが、会社は、誓約書の提出期限を延期し、同規則について不明な点があればいつでも説明する用意がある旨を書きそえて、拒否の回答をしたものであり、本件団交申し入れの時期・目的にかんがみれば、会社の対応にも、それなりの誠実性が認められる。また、会社は、本件団交を除けば、組合から求められた団体交渉に全てそれなりに誠実に応じ、本件団交申し入れに対しても、それなりの誠実性が認められる回答をしているが、上記のとおり、会社が本件団交申し入れに応じなかったことに正当な理由がなかったといわざるを得ない。
3 救済利益について
 その後、本件団交申し入れ後の20年9月5日、組合も期間従業員就業規則の内容を確認し、同年11月13日の第5回団体交渉で、誓約書及び同規則の内容に関わる質疑が行われ、同規則の内容に関して今後も団体交渉を継続していく旨の確認がなされたことから、組合は、第5回団体交渉までに、本件団交の協議事項については、団体交渉が実施されたものと認めるのが相当である。加えて、本件団交を除けば、会社は組合から求められた団体交渉に全てそれなりに誠実に応じ、その後も、継続的に団体交渉が実施されていることなども考慮すれば、会社による同種の団体交渉義務違反が再び繰り返されるおそれはないと認められる。したがって、本件について救済の利益は存しないというべきである。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
滋賀県労委平成20年(不)第4号 一部救済 平成22年1月29日
 
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