労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  社会福祉法人琴丘ふくし会 
事件番号  秋田県労委平成21年(不)第1号 
申立人  特別養護老人ホーム希望苑職員労働組合 
被申立人  社会福祉法人琴丘ふくし会 
命令年月日  平成22年12月8日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要    被申立人法人が①申立人組合との夏季賞与に係る団体交渉において、組合に対して支給額の根拠を十分に説明しなかったこと、②夏季賞与の回答を決算後に行ったこと、③夏季賞与を妥結前に一方的に支給したこと、④賞与支給後の団体交渉を長期延期したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
  秋田県労委は、法人に対し文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。
命令主文  1 被申立人社会福祉法人琴丘ふくし会は、本命令書写しの交付の日から1週間以内に、下記の文書を特別養護老人ホーム希望苑職員労働組合に交付しなければならない。(大きさはA4判とし、年月日は交付する日を記載すること。)
平成 年 月 日
特別養護老人ホーム希望苑職員労働組合
執行委員長 X1 様
社会福祉法人琴丘ふくし会
理事長 Y1

 当社会福祉法人が、平成21年夏季賞与に係る団体交渉において、貴組合に対して支給額の根拠を十分に説明しなかったこと、夏季賞与を妥結前に一方的に支給したこと及び賞与支給後の団体交渉を長期延期したことは、秋田県労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 当社会福祉法人は、今後このような行為を繰り返さないようにします。

2 申立人のその余の本件救済申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 団体交渉における被申立人法人の説明不足について
 法人が団体交渉で夏季賞与の支給率を回答した際、理事長は正規職員の支給率について本来であれば基本給の1.90ヶ月であるが、理事長の判断で1.93ヶ月としたと説明したが、1.90ヶ月の算定根拠及びプラス分0.03ヶ月の根拠については説明しなかった。組合は法人に対して具体的な算定根拠を示すように要求していたのであり、法人の説明はいわば結論を述べたに過ぎず、不十分である。このような法人の態度は、賞与の支給額を決定するための団体交渉における誠実交渉義務を尽くしたものとはいえない。また、法人は、過去に賞与の算定根拠を示した資料を職員に配布したことがあるにもかかわらず、今回は決算書を組合に提出しただけで、それ以外の説明資料の提出をしなかったのであるから、説明資料の点からも誠実交渉義務を尽くしたとはいえない。
2 法人が夏季賞与の回答を決算後に行ったことについて
 賞与が就業規則により業績配分とされているから業績が確定する決算後でないと回答できないという法人の考え方には一定の合理性があること、また、組合から早期回答に向けた具体的な提案などの働きかけがなされていないことを考慮すると、法人が決算後に夏季賞与の回答をしたことについては、あながち誠実交渉義務に反しているとはいえない。
3 夏季賞与の一方的支給について
 6月22日の団体交渉において組合の書記長が、今後は団交で決まったことについては協定書を取り交わすようにしたいと申し入れ、理事長が了承した。法人は、それにもかかわらず、また、夏季賞与の団体交渉が妥結していないことを十分に認識しながら6月30日に全職員に夏季賞与を一方的に支給したのであるから、この支給に正当な理由があるとはいえず、団交拒否といわざるを得ない。法人は、支給後に夏季賞与額が別途合意された場合には追加支給も想定していたと主張する。しかし、これは、既成事実を先行させることにより、団交による合意形成を実質的に制約し、形骸化するものといわざるを得ず、妥結前の賞与支給を正当とする理由にはならない。
4 法人による団体交渉の長期延期について
 法人は、理事長の繁忙を理由に団交の期日を2週間延期したが、その延期理由に正当性は認められず、組合に対する説明も不十分であったと認められることから、法人の対応は不誠実であったといわなければならない。 
掲載文献   

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