労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  戸田工業 
事件番号  山労委平成21年(不)第2号 
申立人  日本化学エネルギー産業労働組合連合会戸田工業労働組合 
被申立人  戸田工業株式会社 
命令年月日  平成22年12月9日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人会社が、申立人組合との間で締結した「社会保険料の労使負担割合を35対65とする内容の労働協約」に基づき実施していた、従業員に対し社会保険料の15%を補助する取扱いを廃し、負担割合を労使折半に改めるに当たり、①組合と誠実な交渉を行わなかったこと、②社内の過半数従業員が加入する多数組合との交渉を優先させて合意成立を図るという組合差別を行ったこと、③上記労働協約を一方的に解約の上、多数組合との合意内容(上記補助の廃止及び代償措置)を強行実施するという組合に対する支配介入を行ったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 山口県労委は、申立てを全て棄却した
命令主文   本件申立を棄却する。 
判断の要旨  1 会社が本件補助の廃止に際して申立人組合との間に行った労使協議会及び団体交渉における一連の交渉態度は、実質的な団体交渉拒否に該当するか。
 会社は本件の一連の労使交渉において、各種資料を提示の上、同社の置かれている厳しい現況を説明し、また、本件補助廃止の必要性に係る認識について繰り返し述べていることが認められ、結果として組合から合意を得るには至らなかったが、一般的にはこれらの対応は必要かつ十分なものであったと評価できる。
 また、組合は、会社は頑なな交渉態度を貫いていた旨主張するが、会社が一連の労使協議の中で順次譲歩案を提示していったことが認められるのに対して、組合は本件補助の100%を別手当で支給することを求め続け、譲歩案を提示した事実はない。
 以上のことから、会社が実質的な団体交渉拒否をしたとする組合の主張は採用できない。
2 会社が本件補助の廃止に際して行った一連の説明や交渉対応につき、組合と多数組合との間で、不当な差別が認められるか。
 会社は、外形的には両組合と平等に交渉を行ってきたことが認められ、会社が組合との交渉を排除したことはない。また、本件について多数組合から当委員会にあっせんの申請がなされ、合意に至ったが、その後、会社は組合に対し、当該合意に至ったあっせん案の内容と同様の労使協定を締結するよう提案している。さらに、会社は当該あっせん終結後にも労使協議会を繰り返し開催し、組合から具体的な譲歩案の提示があればその内容を協議する旨伝えていたのであるから、会社が不当に組合の意見を排除していたものとも認められない。よって、会社の対応に不当な差別取扱いがあったとはいえない。
3 会社が本件労働協約を解約したことは組合に対する支配介入に該当するか。
 会社は昭和49年に締結された本件労働協約の協定書を紛失しており、社会保険事務所等から本件補助は健康保険法等の趣旨に反するとの改善指導を受けて、本件補助の廃止と代償措置の運用開始に向け就業規則変更の手続きをとった際、組合の意見書によって初めてその存在を認識した。しかし、本件労働協約の解約は、法の定めに則って事務的に行われたものというべきであって、当該協定書を紛失していたことなどの不手際が認められる点のみをもって、会社の対応が支配介入の意図に基づいたものであったとまではいえない。また、組合は、会社が本件労働協約を一方的に破棄したことが支配介入に当たると主張するが、これは組合自身が「法の趣旨に反する労働協約は解約し、別手当の支給を要求する」旨、本件労働協約の解約を容認し、代償措置の条件面に係る交渉を行うべきであると主張していることと矛盾する。
 以上のことから、会社による本件労働協約の解約自体は直接支配介入行為に該当するものとすることはできない。 
掲載文献   

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