労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成20年(不)第75号及び同21年(不)第32号 
事件番号  大阪府労委平成20年(不)第75号及び同21年(不)第32号 
申立人  X労働組合 
被申立人  Y株式会社 
命令年月日  平成22年11月26日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   申立人組合Xの組合員X2は被申立人会社Yに雇用され、申立外会社Aの管理する物件においてマンション管理業務を行っていたが、平成20年3月、YからAへの転籍を打診された。XはX2の転籍に伴う処遇等についての団体交渉をYに申し入れ、Yは大阪府労委にあっせんの申請を行ったが、あっせん期日においてXとYは合意に至り、確認書を交わした。
 本件は、Yが①上記の確認書において、X2の新たな就労場所を早急に用意し、労使間で誠実に協議し、決定する旨確認したにもかかわらず、同人に対し研修を受けるよう指示するばかりで新たな就労場所を定かにしないこと、②X2が研修を休んだ期間について欠勤扱いとし、その間の賃金を支払わなかったこと、③X2に解雇通告書を送付したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、申立てを棄却した。
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 確認書に関する、X2の就労準備に係る会社の対応は、組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たるか。
 被申立人会社Yと申立人組合Xは、上記の確認書が締結されてから本件救済申立て(20(不)75)を行うまでの間、双方ともにX2の就労場所について前向きに協議しようとしていたとはいいがたく、そのような状況下で同人の就労場所が決まらなかったものといえる。また、X2は、研修の必要性、内容等についてYから詳しく説明を受けることもないまま、不慣れな清掃業務等のためにその受講を命じられたといえる。このような事情に照らすと、Yによる一連の対応はX2にとって不利益なものであったとみることもできる。
 次に、Yの一連の対応はX2が組合員であるが故に行われたものであるといえるかについては、YがX2の就労場所に関してXと誠実に協議するつもりがなかったとはいえず、また、これまで清掃業務を行ったことがないX2に対して上記の研修を命じること自体は理解でき、少なくとも嫌がらせ等の目的で殊更研修を命じたとはいえない。
 以上のことからすると、Yの対応は組合員であるが故に行われた不利益取扱いであるとはいえない。
2 YがX2の賃金を減額したことは、組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たるか。
 Yは、確認書における合意はX2が労務提供可能であることを条件に同人の新たな就労場所が確定するまでの間は会社都合の休業措置とする趣旨であると考えて、同人が労務提供できなかったと認められる日等を欠勤扱いとして賃金を減額したものといえる。この取扱いが上記確認書に照らして適切であったかどうかについてはともかく、Yが確認書を意図的に無視して賃金を減額したとはいえない。X2の就労準備に係るYの対応が同人が組合員であるが故に行われたものではないという上記1の判断も併せて考えると、当該賃金を減額したことは組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たるとはいえない。
3 YがX2に解雇通告を行ったことは、組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たり、またXが本件救済申立て(20(不)75)を行ったことに対する報復的不利益取扱いであるといえるか。
 Yは、X2が研修に出席しなかったことを理由に出社を命じたが、同人が出社せず、会社に連絡もしなかったことから、就業規則の解雇事由に該当すると判断し、解雇通告を行ったとみるのが相当である。当該出社を命じたことが上記確認書に照らして適切であったかどうかについてはともかく、Yが確認書を無視して出社を命じ、解雇通告を行ったとみることはできない。
 さらに、救済申立てから解雇通告まで約5か月も経過している上、解雇通告が救済申立てを行ったが故に行われたものであるかについて、Xは具体的に主張しておらず、事実の疎明もない。
 以上のことから、Yが本件解雇通告を行ったことは、組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たるとはいえず、また、救済申立てを行ったことに対する報復的不利益取扱いであるともいえない。 
掲載文献   

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