労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  富士運輸 
事件番号  奈労委平成21年(不)第5号 
申立人  自交総連なら合同労組、自交総連・富士運輸分会 
被申立人  富士運輸株式会社 
命令年月日  平成22年10月28日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①申立人組合からの団体交渉の申入れになかなか応じようとせず、また、団交が開催されても「できない」との回答を繰り返したこと、②団交に応じないまま、運行勤務手当を一方的に減額し、組合員の賃金を切り下げたこと、③組合との団交を拒否する一方で、別組合との団交を開催したことは不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
 奈良県労委は、会社に対し団交応諾、誠実に団体交渉を行うこと及び文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
命令主文  1 被申立人は、社長の多忙や私用を理由にするなどして申立人らの団体交渉の開催要求を拒んではならない。
2 被申立人は、基本給の改訂を含む賃金体系の改訂問題など、申立人らが協議を求める議題に関し、回答の具体的理由及び根拠となる財務資料を示すなどして、申立人らと誠実に団体交渉をしなければならない。
3 被申立人は、本命令書(写)受領後速やかに、下記の文書を申立人らに手交するとともに、同文章を縦1メートル、横1.5メートル大の白紙に明瞭に記載して、被申立人の本社及び成田支店、セントレア支店、関西空港支店、福岡支店の各玄関口付近の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
平成 年 月 日
自交総連なら合同労組
 執行委員長 X1 殿
自交総連・富士運輸分会
 分会長 X2 殿
富士運輸株式会社
代表取締役 Y1
 当社が、自交総連なら合同労組及び自交総連・富士運輸分会から平成21年3月30日以降、団体交渉の申し入れを受けていたにもかかわらず、これに対し誠実に団体交渉を行わなかったことが、奈良県労働委員会において、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにします。

4 申立人らのその余の申立てを棄却する。
判断の要旨  1 3月30日以降の団体交渉の申入れに対する被申立人会社の対応は、誠実なものとはいえず、労組法第7条第2号の団体交渉拒否に該当し、また、運行勤務手当を一方的に減額し組合員の賃金を切り下げたことは、同条第3号の支配介入に該当するか。
 組合は、3月27日にX2と会社との間で成立した訴訟上の和解において合意された団体交渉の日程調整方法に基づき、3月30日以降11月7日までの間に、15回にわたり団交を申し入れた。これに対し、会社は、組合が要求する日時に開催できない理由として「社長の私用があるため」などと特段の事情を明らかにしなかったり、社長の家族旅行など正当な理由とは言い難い理由を挙げて、団交に応じようとはしなかった。このような対応は、上記和解において合意された団交の日程調整方法に明らかに違反するものである。また、会社は8月23日の団交以降、組合がした5回の団交申入れに対し、「調整がつかないので、もう一度貴組合より日程や時間の要望の申し入れをお願いします」と回答したり、組合が要求した団交開催日を過ぎた後に回答したりするなどして、一度も団交に応じていない。以上のことから、会社は組合が求める団交について誠実に対応したとは認められず、会社の行為は労組法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
 次に、運行勤務手当を一方的に減額し、組合員の賃金を切り下げたことについては、X2の組合員だけでなく、別組合の組合員やいずれの組合にも所属していない従業員らも同手当の変更により経済的不利益を受けていることから、X2の組合員に対する不利益取扱いがあったとはいえず、したがって、それ自体としては支配介入に当たるとはいえない。
2 会社が申立人組合との団体交渉を拒否し、別組合との団体交渉を開催したのは、組合間の差別であり、労組法第7条第3号の支配介入に該当するか。
 申立人組合との団交を正当な理由なく拒否する一方で、別組合とは団交を行い、その結果に基づいて、妥結がなされていないX2の組合員に対しても、夏季一時金を支給し、さらに、運行勤務手当の変更を実施するという会社の一連の対応は組合活動の弱体化をもたらしかねないものであり、支配介入に該当するといわざるを得ない。
掲載文献  

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