労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成21年(不)第31号 
事件番号  大阪府労委平成21年(不)第31号 
申立人  X労働組合 
被申立人  学校法人Y 
命令年月日  平成22年10月12日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が①賃金の引下げの撤回を求める団体交渉において、賃金の引下げの根拠とする経営状況を説明するための資料の提示を拒否して、団体交渉を打ち切ったこと、②労働条件の変更についての事前協議約款を含む労働協約を締結しているにもかかわらず、賃金の引下げについて、申立人組合が質問するまで提案せず、協議を尽くすことなく団体交渉を打ち切り、組合員に賃金の引下げの同意を求めるとともに、組合員が同意しないにもかかわらず、賃金を引き下げて支給したことは不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、上記①に関し法人に対し誠実な団交応諾及び組合への文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
命令主文  1 被申立人は、申立人から平成21年3月14日付けで申入れのあった「時間単価の一律4%引き下げを撤回すること」に関して、賃金の引下げの根拠とする経営状況を説明するための資料を提示して説明するなどして、誠意をもって団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年月日
X労働組合
 執行委員長 A様
学校法人Y
理事長B
 当学園が、平成21年3月19日、同年4月9日及び同年5月11日に貴組合との間で開催された団体交渉において、賃金の引下げの根拠とする経営状況を説明するための資料を提示して説明するなどせず、団体交渉を打ち切ったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

3 申立人のその他の申立てを棄却する。
判断の要旨  1 21.3.14団体交渉申入書記載の「時間単価の一律4%引き下げを撤回すること」について、法人は、本件団交で誠実に対応したか。
 被申立人法人は、1年限りの暫定の賃下げである旨述べ、申立人組合に賃金の引下げの根拠として平成20年度年間収支を提示し、法人の経営状況の悪化を説明しているものの、賃金の引下げの根拠が法人の経営状況の悪化にあるとするならば、時間単価の一律4%引下げが必ずしも1年の暫定にどどまる状況にあったとは言い切れないのであるにもかかわらず、組合が明らかにすることを求める法人の借入金総額、土地・建物等の財産の状況について示すことなく、寄附行為により正当な理由がある場合を除いて閲覧に供することとされている貸借対照表等の提示を拒否し、その理由すら説明しなかった。したがって、法人は本件団交において賃金の引下げの根拠とする経営状況を説明するための資料を提示して説明するなどせず、団交を打ち切ったといわざるを得ないのであって、法人のかかる対応は、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
2 ①18.8.4協定書第4項は、事前協議約款であるか。②前記①が事前協議約款であった場合、法人は履行をしなかったといえるか。また、同約款を履行しなかったことが支配介入に当たるか。
 18.8.4協定書第4項が組合員の労働条件の変更について組合と事前に協議を行うことを約したものであることについては、法人が本件審査過程の尋問において認めているところであり、事前協議約款であると認めることができる。
 法人は、組合員を含む講師を対象とした賃金の引下げについての説明会で時間単価の一律4%引下げについて説明し、その後、組合が法人に対し時間単価の一律4%引下げについて質問したのに答える形で時間単価の一律4%引下げを組合に提案し、もって組合員の労働条件を変更する前に組合と協議を行ったことが認められるのであるから、法人が組合から質問されるまで組合に提案しなかったとしても、こうした法人の対応が事前協議を定める18.8.4協定書第4項の不履行であるとはいえない。
 時間単価の一律4%引下げについて3回にわたる団交により具体的な協議が行われたことが認められるのであるから、法人が平成21年4月の勤務に係る賃金について組合員が同意しないにもかかわらず、時間単価の一律4%引下げを行って支給したことの是非はともかくとして、事前協議約款を定めた18.8.4協定書第4項による労働協約の不履行であるとはいえず、組合を弱体化させることを目的とした支配介入行為に当たるとはいえない。
掲載文献  

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