労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 高嶺清掃
事件番号 東京都労委平成20年(不)第39号
申立人 自治労・公共サービス清掃労働組合、自治労・公共サービス清掃労働組合高嶺支部
被申立人 高嶺清掃株式会社
命令年月日 平成22年7月6日
命令区分 一部救済
重要度  
事件概要  本件は、被申立人会社が、申立人組合及び組合支部との平成19年5月以降に組合に加入したアルバイト社員らの労働条件等を巡る交渉の過程において、①団体交渉でいったん合意し、それを次回の団交で翻したことが不誠実な団交に、②組合側の都合で予定時刻どおりに団交を開始できないため中止とするとして、会社側団交出席者を引き上げさせたことが団交の拒否に、③週40時間労働制を求めた組合要求に対して、アルバイト社員の週当たりの労働日を削減し、同人らの減収を招いたことが不利益取扱い及び支配介入に、④一部のアルバイト組合員との雇用関係を打ち切るなどしたこと、及びそれまで不定期に行っていた雇用契約書の作成を、アルバイト社員全員について一斉に行ったことが支配介入に当たるとして、救済が申し立てられた事件である。
 東京都労委は申立ての一部を認め、①アルバイト社員である組合員が19年12月ないし20年3月までの各週、就労した労働日のほか1労働日(8時間)を就労したものとして取扱い、その結果、労働時間が40時間を超えない週は一労働日の賃金相当額を、40時間を超える週は1労働日の賃金相当額に時間外割増賃金相当額を加算して支払うこと、②文書交付・掲示、③履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。
命令主文 1 被申立人高嶺清掃株式会社は、申立人自治労・公共サービス清掃労働組合及び同自治労・公共サービス清掃労働組合高嶺支部の組合員 X3、同 X4、同 X5、同 X6、同 X7及び同 X8に対し、平成19年12月ないし20年3月の間の各週について、それぞれ就労した労働日のほか1労働日(8時間)を就労したものとして取り扱い、その結果、労働時間が40時間を超えていない週は1労働日の賃金相当額を、40時間を超えている週は1労働日の賃金相当額に時間外割増賃金相当額を加算した額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合及び同支部に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の大きさの白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社内の社員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。


年  月  日 
自治労・公共サービス清掃労働組合
執行委員長  X 1   殿
自治労・公共サービス清掃労働組合高嶺支部
支 部 長  X 2   殿
高嶺清掃株式会社    
代表取締役  Y  
 当社が、貴組合と協議することなく、貴組合の組合員であるアルバイト社員の週当たりの労働日を6日から5日に削減し、何ら代償措置を講ずることなく、同人らの賃金を減少させたことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)
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3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。
判断の要旨 1 不誠実な団交について
 平成19年10月23日の団交において、会社がアルバイト社員に有休を5日付与するのは無理である旨を答えたことは、会社がいったん合意した内容を翻したとまでは認められない。また、同年11月28日の団交において、組合員X9とX10の退職に係る解雇予告手当を支払わないと述べたことは、10月23日の団交における会社の発言内容とは差異があるものの、両名の退職や懲戒解雇の状況を精査した結果、より明確な態度を示したものとみることができ、不誠実な対応とまでいうことはできない。
 両団交における会社の対応は、不誠実な交渉態度であるとまではいえない。
2 団交の拒否について
 組合は、開始時刻の遅れを理由に会社が団交を中止したのは、団交拒否であると主張する。
しかしながら、組合と会社とは、中止となった団交のいずれも1週間以内に代わりの団交を開催しており、団交が中止されたことにより、組合活動に支障が生じたとの具体的な主張も疎明もない。本来、労使間で約束した開始時刻が守られるべきであることはいうまでもなく、本件では、会社は、いずれも開始予定時刻から約30分間待機していたものであること、代替の団交を直近の時期に設定していること、及び本件団交以前にも組合に対し開始時刻の厳守を要請していたことを併せ考えれば、会社が19年11月22日及び20年3月13日の団交開催に応じなかったことをもって、正当な理由のない団交拒否に当たるということはできない。
3 週当たりの労働日の削減について
 会社が本件のような形でアルバイト社員の週当たりの労働日数を削減し、賃金を減少させたことは、アルバイト組合員及び組合に打撃を与えることによって、組合の影響力を減殺し、もって組合の弱体化を企図した支配介入に当たるといわざるを得ない。
4 アルバイト組合員に対する退職勧奨、解雇、雇止め等について
 会社によるアルバイト組合員に対する退職勧奨、解雇、雇止め等は、認定事実に照らし、いずれも組合に対する支配介入に当たるということはできない。
掲載文献  

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