労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 兵庫県労委平成21年(不)第8号
事件番号 兵庫県労委平成21年(不)第8号
申立人 X労働組合
被申立人 株式会社Y
命令年月日 平成22年7月20日
命令区分 一部救済
重要度  
事件概要  被申立人会社の従業員であるA、B及びCは、申立人組合に加入してそのX1分会を結成した旨を平成21年3月16日に会社に通知したところ、①会社が、同月20日にAの業務を、ゴミの取り残しを理由に運転業務から助手業務に変更し、Aの賃金日額が減額されたこと、また、8月にBに対し交通事故の未報告等を理由に出勤停止処分を行ったこと、さらにAら3名に夏季賞与を減額して支給したことが、労組法7条1号及び3号に、②同年4月から6月に行われた団交における会社の対応が同条2号に、③会社のY1主任が同年3月、全従業員に対し組合に関する発言を行い、またY2係長がAに対し、分会運営に係る話をしたこと、さらに同月27日以降、会社が分会組合員に対し、15時30分に退社するよう命じたことが同条3号に該当する不当労働行為であるとして、救済が申し立てられた事件である。
 兵庫県労委は申立ての一部を認め、①Aの原職の運転業務への復帰及び賃金差額分の支払い、②Bの出勤停止処分がなかったものとしての取扱い及びその間の賃金相当額の支払い、③夏期賞与の減額相当分の支払い、④15時30分以降の勤務に係る組合員と非組合員との差別的取扱いの禁止を命じ、その余の申立てを棄却した。
命令主文 1 被申立人株式会社Yは、申立人X労働組合X1分会A分会委員長を直ちに原職の運転業務に復帰させ、同分会委員長に対し、平成21年3月20日以降、運転業務に復帰するまでの間、運転業務を継続させていた場合に支給したはずの賃金相当額と既に支給した額との差額を支払わなければならない。
2 被申立人株式会社Yは、申立人X労働組合X1分会B組合員に対して平成21年8月7日に命じた出勤停止処分がなかったものとして取り扱い、同組合員に対して当該出勤停止期間中に支給されたはずの賃金相当額を支払わなければならない。
3 被申立人株式会社Yは、申立人X労働組合X1分会A分会委員長及びB組合員に対し、平成21年9月4日に支給した平成21年夏季賞与に関して、ごみの取り残しや交通事故を理由として行った減額に相当する額を支払わなければならない。
4 被申立人株式会社Yは、午後3時30分以降の勤務について、申立人X労働組合X1分会の組合員と非組合員との間で差別的取扱いをしてはならない。
5 その余の申立ては棄却する。
判断の要旨 1 団交について(争点1)
 本件団交においては、組合側も合意達成に向けての努力が必ずしも十分になされたとはいえず、会社の交渉態度が直ちに不誠実であるとは認められない。よって、不当労働行為に該当しないと判断する。
2 Aの業務変更について(争点2)
 Aがごみの取り残しをしたことなどを理由として、その業務を運転業務から助手業務に変更したことにより、Aの賃金は、日額にして2,000円減額されるのであって、同人に明らかに不利益を課する命令である。そこで、Aのごみの取り残しが、そのような不利益を課せられてもやむを得ない程度のものであるかをみるに、会社では、従来からごみの取り残しが多数発生していたと認められるものの、これまで他の従業員に対し、本件業務変更と同様の業務変更を命じた例があったとの疎明はない。また、Aのごみの取り残しだけが、他のごみの取り残しと異なり特に重大なものであったとの疎明はない。
 Aの業務変更は、組合員であることを理由としたAに対する不利益取扱いに該当し、同時に組合に対する支配介入に該当すると判断する。
3 Bに対する出勤停止処分について(争点3)
 Bが3回も交通事故を起こしていること、うち2回は会社に報告しなかったことは、懲戒処分に値する行為である。しかし、当該出勤停止処分は、懲戒解雇の次に重い処分であり、出勤停止期間中の賃金を得られないという大きな不利益を受けるのに対し、処分理由とされた事故が自損事故あるいは被害者が軽傷を負った事故であることを考慮すれば、本件処分は重過ぎるというべきである。
会社では、従来、他の従業員に対し、交通事故を原因として本件処分のような処分をしたという前例があったとの疎明はないことをも考慮すると、結局のところ、本件処分は、Bが組合員であることを決定的な理由として行われたもので、不利益取扱いに該当し、同時に組合に対する支配介入であると判断する。
4 組合員に対する平成21年夏季賞与について(争点4)
会社は、A及びBについては、ごみの取り残しや交通事故を理由に21年夏季賞与を減額したと主張するが、既にこれらの事実を原因として、Aについては、業務変更により賃金が日額2,000円減額されていること、Bについては、出勤停止処分を受け、出勤停止期間中の賃金が支払われていないことを勘案すると、それに加えて賞与で大幅な減額をすることは、会社の裁量の範囲を逸脱したものであり、会社の上記主張には合理性があるとはいえない。
 A及びBに対する夏季賞与額の減額は、組合員であることを理由とする不利益取扱いに該当し、同時に組合に対する支配介入であると判断する。
5  会社のその他の行動について(争点5)
 Y1主任の発言及びY2係長の言動は、いずれも、組合に対する支配介入とは認められない。
 組合員に対する退社命令については、 会社が、組合員だけに対して、15時30分に退社するよう命令することは、組合が自らの残業手当の算定方法に異議を述べていることに藉口して、残業そのものを命じないという差別的取扱いをし、もって組合員を孤立させ、ひいては、組合を弱体化することを図ったとみるのが相当であり、組合に対する支配介入に該当すると判断する。
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