労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 小西産業
事件番号 滋賀県労委平成21年(不)第4号
申立人 なかまユニオン
被申立人 株式会社小西産業
命令年月日 平成22年7月1日
命令区分 一部救済
重要度  
事件概要 被申立人会社は申立外A社に労働者を派遣し、又は業務を請け負っていた事業者であるが、A社が会社との契約関係を打切り、補償金を支払うことを決めたことから、会社はこれを原資として従業員に一律20万円の退職慰労金を支払うこととしたところ、申立人組合はこれを不服として、従業員の雇用の確保等を求めて団交を申し入れた。会社は、組合員には退職慰労金の支払いを保留し、非組合員には支払いを行ったところ、組合員数名が支払い場所に赴き、支払いを求める事態が生じた。
本件は、支払現場における会社顧問Y1及び社員Y2の発言、団交におけるY1の言動、ならびに会社が組合に対して発した「団交に関する通告書」の内容が、それぞれ不当労働行為にあたるとして申し立てられた事件である。
滋賀県労委は申立ての一部を認め、会社に文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
命令主文 1 被申立人は、申立人に対し、本命令書受領後2週間以内に、下記内容の文書を手交しなければならない。


年   月   日
なかまユニオン
執行委員長 X 様
株式会社小西産業
代表取締役 Y3  
 当社が行った次の行為は、滋賀県労働委員会において労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。つきましては、本件について謝罪するとともに、今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
 ・当社顧問が、平成21年5月15日に従業員寮において、非組合員に対して同日 支払うこととしていた退職慰労金について、組合員に対しては支払うことができないが、組合を脱退すれば支払う用意がある旨を申立人組合員らに対して告げたこと。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること)
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2 申立人のその余の申立ては棄却する。
判断の要旨 1 争点1(平成21年5月15日に従業員寮において、会社顧問Y1が組合員に対して行った発言は、組合への支配介入にあたるか。)
(1) 組合員に対する呼出について
 会社は、元々、同日には非組合員に対してのみ退職慰労金を支払う予定であり、その場に組合員が来訪することすら予想していなかった旨を主張する。しかし、会社が非組合員だけを呼び出し、組合員は除外するという明確な区分をしていたとは認めがたい。会社は、積極的に、脱退を働きかけることを目的として、退職慰労金の支払い現場に組合員を招集したとまではいえないとしても、その場に組合員が来た場合には、組合を脱退して全面解決に応じることを条件に、退職慰労金を交付する用意があったものと認めるのが相当である。
(2) Y1の発言について
 Y1の発言は、交渉窓口を組合に限定する趣旨の説明の域を超えており、組合脱退を勧奨する効果があったことは否定しがたい。また、会社、とりわけY1が、組合を一貫して強く嫌悪していることは明白であり、組合員が脱退することを歓迎する意図であったことは否定できない。そうすると、Y1の発言のうち、少なくとも組合からの脱退に触れた部分については、組合の弱体化を意図する不当労働行為といわざるを得ない。
2 争点2(平成21年5月15日に従業員寮において、社員Y2が組合員に対して行った発言は、会社の利益を代表する者の発言として、組合への支配加入にあたるか。)
 Y2の発言は、その内容自体に問題があることは明白ではあるものの、使用者の発言と評価することはできない。したがって、不当労働行為にあたるとはいえない。
3 争点3(平成21年5月15日夜の団交におけるY1の言動は支配介入にあたるか。)
 本件団交における会社の組合嫌悪の態度は明白であるものの、団交席上でのY1の言動は、組合員に対して脱退を強要したり勧奨したりしたものとはいえず、不当労働行為にあたるとはいえない。
 4 争点4(会社が組合に対して発した本件通告書は、組合およびその役員に対する誹謗中傷だとして、支配介入にあたるか。)
  本件通告書の作成者の意図はさておき、本件通告書には、そもそも組合を弱体化させる効果があったとは認められず、支配介入の不当労働行為にあたるとはいえない。
 5 結論
  以上のとおり、組合が主張するもののうち、平成21年5月15日に従業員寮において、Y1が組合員に対して行った発言は、組合員の脱退を勧奨するものであって、労組法7条3号の支配介入の不当労働行為に該当するが、同日の従業員寮での組合員に対してのY2の発言、本件団交におけるY1の言動、本件通告書の記載は、いずれも同条同号の不当労働行為には該当しない。
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