労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 大阪府労委平成20年(不)第72号
事件番号 大阪府労委平成20年(不)第72号
申立人 X労働組合
被申立人 株式会社Y
命令年月日 平成22年6月28日
命令区分 棄却
重要度  
事件概要 本件は、被申立人会社が、短期の雇用契約を反復更新してきた社員X1に対し、その申立人組合加入通知後の契約更新時に、契約期間満了をもって契約を更新しない旨明記した契約書案を提示し、その後雇止めしたことが不当労働行為に当たるとして申し立てられた事件である。
大阪府労委は、申立てを棄却した。
命令主文 本件申立てを棄却する。
判断の要旨 争点(組合員X1を、平成20年9月30日をもって雇止めとしたことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合の弱体化を企図した支配介入に当たるか。)について
1 X1の雇止めの決定時期について
会社は、本件雇止めを決定した時期が、X1の組合加入を知る以前の19年11月5日であるから、本件雇止めと組合加入とは関係がない旨主張する。しかし、会社がX1の組合加入を知る以前に、 X1の雇止めが検討されていたことは推認できるものの、時期を定めて X1の雇止めが決定されていたとまでいうことはできず、会社の主張は採用できない。
2 組合の「本件雇止めに正当な理由が認められないこと、本件雇止めが行われた経緯が不自然であること及び会社が組合に対して嫌悪感を抱いていたことを併せ考えると、本件雇止めが組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入である」旨の主張について
(1)会社が本件雇止めを行った理由について
ア 人件費の削減が会社の20年度の方針として決定されていた以上、年度途中で会社の業績が好転したとしても、人件費削減の一環としての人員削減の実施を当初の方針どおり継続することが不合理であるとはいえないから、X1の雇止めに必要性がなかったとまではいえない。また、X1の雇止めは会社の業績悪化が大きな理由である旨の会社の主張は、特段不合理であるとはいえない。
イ 組合は、本件雇止めが、解雇権濫用法理の類推を前提にした整理解雇の4要件を充たしておらず、何ら客観的合理性も社会的正当性もあるものとは認められないと主張する。しかし、会社は、X1の組合加入を通知される前から、 X1を含む人員削減を検討していたと推認されることに加え、20年度中にX1以外に非組合員7名の人員を削減しており、当該人員削減及び本件雇止めが、整理解雇の4要件を充たしているかはともかくとして、会社が本件雇止めに関して、組合員であるが故に、X1だけを差別的に不利益に取り扱ったとまではいえない。
ウ 組合は、会社が、正社員の賃上げ及び賞与支給、社内コミュニケーション費の復活、会社50周年記念誌の発行等を行っていることをもって、本件雇止めの経緯が不自然であると主張するが、その理由が社員の士気回復にあるとする会社の主張は特段不自然とはいえず、それをもって本件雇止めの経緯が不自然であるということはできない。
(2)団交における会社の対応と本件雇止めに至る経緯について
組合は、会社が、X1の家賃補給金問題についての交渉が暗礁に乗り上げた時期である第5回団交で本件雇止めを突如持ち出すとともに、「結論ありき」の不誠実な対応に豹変し、それ以降の団交では、時間切れによる雇止めを狙うかのような不誠実な対応をしたことなどから、本件雇止めに至る経緯が不自然であると主張する。しかし、一連の団交における会社の対応をもって、本件雇止めに至る経緯が不自然であるということはできない。
(3)会社が組合に対して嫌悪感を抱いていたとの主張について
ア 組合は、会社が、団交において労働条件変更に関する組合との協議約款を無視する態度を取り続ける露骨な反組合的態度をみせたこと、別組合との団交には出席していない、X1の上司を団交に出席させてX1を威圧したこと、及び19年4月には、 会社の総務部長Y1が、X1が別組合以外の労働組合へ加入することに賛成しない意向を示していること、などから、組合に対して嫌悪感を抱いていたことが明らかである旨主張する。
イ しかし、会社は、第5回から12回までの団交において、組合との協議に応じる姿勢を示し、雇止めの時期を延期する妥協案も提示しているとみることができるから、組合との協議約款を無視する態度を取り続けたとまではいえない。
また、会社側の団交出席者の選定は、原則として会社の自主性に委ねられるべき事項であり、また、一連の団交がX1の家賃補給金の支給及び同人の雇止めを中心的議題とするものであるところ、 X1の勤務に係る実務を担当していたとみられる上司が団交に出席することは、特段不自然とはいえない。
さらに、上司の団交出席が団交の進行を阻害したと認めるに足る疎明はなく、加えて、組合又はX1が、当該出席に関して特段の異議を唱えていたとは認められないから、上司の出席によりX1を威圧したとする組合の主張は採用できない。
ウ X1の組合加入前の19年4月27日の面談において、総務部長Y1が、X1の組合加入により他従業員や会社の間で対決の図式が成立することを心配している趣旨の発言をした事実が認められるものの、Y1の発言が、組合を非難したり、X1の組合加入を阻止したりする趣旨であるとまではいうことができない。
(4)以上のことから、「本件雇止めに正当な理由が認められないこと、本件雇止めが行われた経緯が不自然であること及び会社が組合に対して嫌悪感を抱いていたこと併せ考えると組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入である」との組合の主張は、採用できない。
3 以上を総合すると、本件雇止めは、会社の経営合理化のため、全社的に行われた人員削減の一環であるとみるのが相当であって、その他、本件雇止めが会社の不当労働行為意思によるものであるとする特段の事情も認められないから、組合員であるが故の不利益取扱いであるとはいえず、また、組合員を会社から排除して組合との関係を消滅させようとした組合に対する支配介入であるともいえない。
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