労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 帝塚山学園
事件番号 奈良県労委平成20年(不)第2号
申立人 帝塚山学園教職員組合
被申立人 学校法人帝塚山学園
命令年月日 平成22年5月19日
命令区分 全部救済
重要度  
事件概要  被申立人法人の定年規程第4条は、「勤続満25年を超えた者が年齢満55歳を超え本人が退職を希望するとき又は死亡退職したときは、これを定年退職と認め、退職手当その他を特別に考慮することができる」旨を規定している。申立人組合は、法人が、労使慣行(もしくは労働協約)に基づき、勤続25年以上で満55歳以上の依願退職者には全て同条を適用し、25年以上勤続し、定年退職した者に適用される退職規程別表3に基づいて退職金を支給する運用を行っていると認識していたが、平成15年5月以降、依願退職者に対しては同条が適用されていないことが判明したとして、それが退職金支払いに関する労働協約の趣旨に反し、かつ長年の慣習に反する違法な処置であり、この支給方針の変更について、組合と団交をすることなく、一方的に労働者に不利益な適用をしたことは、団交権を違法に侵害したものである、と主張して団交を申し入れたが、法人は、数回の団交と文書のやりとりにおいて、定年規程4条の文言は『考慮することができる』となっており、不利益変更には当たらないとの見解に固執し、それ以上の団交を拒否する旨回答した。そのため、組合は、法人が誠実に団交に応じないことが、労組法7条2号に該当する不当労働行為であるとして、救済を申し立てた事案である。
奈良県労委は、法人に対し、組合から申入れのあった団交の応諾及び申入れ事項への誠実な回答を命じた。
命令主文 被申立人は、帝塚山学園就業規則定年規程第4条の取扱い(規程の位置づけ、適用基準等)について、これまでの処理の変遷と、変遷した事情について十分に説明し、今後の運用について、申立人と誠実に団体交渉をしなければならない。
判断の要旨 1 争点1(定年規程第4条(特例措置)の取扱いに関する事項は義務的団交事項に該当するか。)
(1)本件定年規程4条の取扱いに関する事項は、退職金の支給という労働条件に関する事項であり、義務的団交事項にあたる。
この点について法人は、一般論として定年規程の運用・改正等が団交の対象となることは一応認めるものの、組合からの本件団交申入れは、過去の同条の取扱いについて独自の見解を法人に押しつけ、確認を求めようとしているものであり団交事項に該当しないと主張する。
しかし、組合の申入れの趣旨は、同条の取扱いに関する団交の再開であることは、平成20年2月12日付け申入書及びそれまでの団交の経過から明らかであり、法人の主張を認めることはできない。
(2)法人は、定年前依願退職者への定年規程4条、退職規程別表3の個々具体的な適用は法人の裁量事項に属し、その具体的内容については団交の対象にならないと主張するが、法人に裁量の余地があったとしても、その裁量の過程、当否を含めて団交の対象となると解すべきである。
2 争点2(法人は組合に対して十分な説明を尽くしたといえるか。)
(1)依願退職者に定年規程4条を適用し、退職規程別表3に基づいて退職金を支給することが労使慣行や労働協約になっていたか。
かかる労使慣行や労働協約が存在したとは認められないが、14年度までは同条の適用実績があるのに比して、15年度以降は皆無であり、同条の取扱いが変更されているという組合の主張には相当の理由がある。
(2)法人は、定年規程4条の取扱いや学園の財政状況等についての説明を十分に行っているといえるか。
ア 定年規程4条の取扱いについては、17年3月25日の団交で初めて議題として取り上げられ、その後19年9月13日、同21日、10月18日、11月22日の4回の団交で議題となり、文書回答もなされている。
17年の団交において、法人は、定年規程4条の適用に関する判断は理事会の権限で行うと説明しただけであり、組合の要求や質問に対して、資料を示す等合意達成のための努力をした事実は認められない。19年の4回の団交においても、法人は組合の求める財政状況や、過去の適用状況、適用基準、理事会で取扱いの変更の決定がなされたのか等についての具体的説明をしていない。
イ 法人は、「適用基準」は書面化され公表されたものではないが、内部方針又は申し送り事項として存在する公知の事実であると主張する。しかし、かかる「適用基準」の存在は疑わしいものであるといわざるを得ない。
ウ 以上の点から、法人は、定年規程4条の取扱いや学園の財政状況等についての説明を十分に行っているとは言えない。このような事情のもとで、組合が申し入れた団交に応じない法人の行為は、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
エ 法人は、定年規程4条の取扱い(規程の位置づけ、適用基準等)について、これまでの処理の変遷と、変遷した事情を組合に十分に説明し、今後の運用についても、誠実に団交をする義務があるというべきである。
掲載文献  

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