労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  
概要情報
事件名 サン・パートナー外1者
事件番号 福岡県労委平成21年(不)第4号
申立人 福岡地区合同労働組合
被申立人 株式会社サン・パートナー、株式会社サニクリーン九州
命令年月日 平成22年5月13日
命令区分 一部救済
重要度  
事件概要 本件は、被申立人会社Y1に派遣労働者として雇用され、被申立人会社Y2で就労していた申立人組合の組合員X1に対し、①Y1が平成21年3月31日の雇用契約期間満了後、X1との雇用契約を更新しなかったこと、及び②Y2が同日をもってY1との労働者派遣契約を終了し、X1の直接雇用もしなかったことが、それぞれ労組法7条1号及び3号に該当し、また、③Y1が、X1の未消化分年休の取扱いに係る同年2月11日付団交申入れ、派遣契約終了理由に係る2月13日・25日付団交申入れ及び6月8日の団交申入れに応じなかったこと、並びに④Y2が、X1の派遣契約終了理由、契約継続及び直接雇用に係る団交申入れに応じなかったことが、それぞれ労組法7条2号に該当するとして救済が申し立てられた事件である。
福岡県労委は、Y1に対し①X1を21年4月1日から1年間雇用したものとして取扱い、その間の賃金相当額を支払うこと、②X1の未消化分年休の取扱いに係る団交申入れの誠実応諾、③前記②の団交について、出席者・開催場所の労使協議が整うまでの間、出席者を各8名以内とし、福岡市内で応じること、④本件不更新並びに、21.2.11、2.13及び2.25付け団交申入れの不応諾が不当労働行為であると認定された旨の文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。
命令主文 1 被申立人株式会社サン・パートナーは、申立人組合員X1を、平成21年4月1日から1年間、同社の派遣労働者として雇用したものとして取り扱い、同人がその期間就労していたならば得られたであろう賃金相当額として、958,800円を支払わなければならない。
2 被申立人株式会社サン・パートナーは、申立人が平成21年2月11日付けで申し入れた申立人組合員X1に係る年次有給休暇の未消化分の取扱いを議題とする団体交渉に、誠意をもって速やかに応じなければならない。
3 被申立人株式会社サン・パートナーは、上記2の団体交渉について、団体交渉の出席人数及び開催場所に係る労使協議が調うまでの間、出席人数を双方8名以内として、福岡市内で応じなければならない。
4 被申立人株式会社サン・パートナーは、本命令書写し交付の日から2週間以内に、次の文書を申立人に交付しなければならない。
------------------------

平成 年 月 日
福岡地区合同労働組合
代表執行委員  X2 殿
株式会社サン・パートナー
代表取締役    A
株式会社サン・パートナーが行った下記の行為は、福岡県労働委員会によって不当労働行為と認定されました。
今後このような行為を行わないよう留意します。

(1) 貴組合員X1氏との雇用契約を平成21年3月31日をもって終了し、契約更新しなかったこと。
(2) 貴組合の平成21年2月11日付け、同月13日付け及び同月25日付け団体交渉申入れに対し、開催場所及び出席人数について条件を付し、これに固執して団体交渉に応じなかったこと。
------------------------
5 その余の申立てを棄却する。
判断の要旨 本件の主な争点は次のとおり。
(1)会社Y1が、組合員X1の雇用契約を更新しなかったことは、同人が組合員であること又は正当な組合活動を行ったことを理由とする不利益取扱いに該当するか。また、組合に対する支配介入に該当するか。
(2)組合の21.2.11、2.13、2.25及び6.8付団交申入れに対するY1の対応は、正当な理由のない団交拒否に該当するか。
(3)会社Y2は、X1の労組法7条の使用者に該当するか。
(4)Y2が、労組法7条の使用者に該当する場合、同社が21年3月31日をもってY1との労働者派遣契約を終了したこと及び同年4月1日以降X1を直接雇用しなかったことは、同人が組合員であること又は正当な組合活動を行ったことを理由とする不利益取扱いに該当するか。また、組合に対する支配介入に該当するか。
(5)Y2が、労組法7条の使用者に該当する場合、同社が、組合の21.2.13、2.27 及び3.10付団交申入れに応じなかったことについて、正当な理由があるか。
1 Y1がX1との雇用契約を更新しなかったことについて
(1)本件不更新の不利益性については、X1が21年4月以降も雇用契約が更新されることに期待を抱いたとしても、無理からぬものであったといえ、本件不更新は不利益な取扱いであると認められる。
(2)Y1の主張する不更新理由は、いずれも合理性に欠けるものである。
(3)本件不更新は、Y1が、X1が組合員であることを嫌悪し会社から排除しようとして行ったものと判断せざるを得ず、同時に、もって組合の組織・活動を弱体化させるものと認められることから、労組法7条1号及び3号に該当する。
2 組合の団交申入れに対するY1の対応について
(1)21.2.11、2.13及び2.25付団交申入れについては、Y1は団交の開催場所及び出席人数について合理性の認められない条件に固執して、団交を拒否したものと判断せざるを得ず、労組法7条2号に該当する。
(2)21.6.8付団交申入れについては、Y1が同日に団交要求書を受け取らなかったことのみをもって、団交を拒否したとまではいえず、したがって、労組法7条2号に当たるとまではいえない。
3 Y2が労働者派遣契約を終了したこと及びX1を直接雇用しなかったことについて
(1)Y2が、Y1からの申出を受けて労働者派遣契約を終了させたことが、X1に対する不利益取扱いに該当する余地はなく、その余の点を判断するまでもなく、労組法7条1号及び3号の不当労働行為の成立は認められない。
(2)Y2とX1の間に雇用契約が成立しているとの組合の主張は認められず、同社がX1を直接雇用しなかったことを不利益取扱いと評価することはできない。加えて、Y1がX1に雇用契約終了を通知する以前に、Y2がX1の組合加入を知っていたことを示す事実が認められないので、同社がX1を直接雇用しなかったことについて、労組法7条1号及び3号のいずれについても不当労働行為の成立は認められない。
4 Y2が組合の団交申入れに応じなかったことについて
(1)労組法上の使用者とは、雇用主以外であっても、労働者の労働条件等に関して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合については、その限りにおいて、使用者に当たるとみるのが相当である。
(2) 組合が不当労働行為にあたる団交拒否であると主張する各事実に関して、Y2がかかる地位にあったかどうかを検討すると、21.2.13、2.27及び3.10付団交申入れのいずれについても、Y2が雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとはいえず、当該団交に応ずべき使用者には当たらず、Y2の対応は労組法7条2号には該当しない。
掲載文献  

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約412KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。