労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 大阪府労委平成20年(不)第79号
事件番号 大阪府労委平成20年(不)第79号
申立人 X労働組合
被申立人 Y株式会社
命令年月日 平成22年4月13日
命令区分 一部救済
重要度  
事件概要  本件は、被申立人会社が、①会社が経営する大学の専任教員である組合員X1の労働条件について申立人組合が申し入れた団体交渉において、交渉を短時間で打ち切ったり、就業規則の提示に応じないなど、不誠実な対応を行ったこと、②X1に対して、休職期間が満了し、自動退職となったとする旨の文書を送付して失職させたこと、③X1に退職手続を進めるよう求める書類を送付したこと、④大学のホームページにX1が退職したとする虚偽の情報を掲載していること、がそれぞれ不当労働行為に当たるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労委は、会社に対し①誠実団交応諾、②文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
命令主文 1 被申立人は、申立人が申し入れた申立人組合員X1の退職及び復職に関する事項を議題とする団体交渉に、会社の就業規則を提示して説明するなどして、誠実に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。


年 月 日 
X労働組合
執行委員長 X2 様
株式会社Y
代表取締役 Y1
当社が、平成20年11月19日における団体交渉において、貴組合が求めているにもかかわらず、就業規則を提示するなどして説明しなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
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3 申立人のその他の申立てをいずれも棄却する。
判断の要旨 1 争点1(X1の失職は、組合員であること又は組合活動を理由とする不利益取扱いであるとともに、会社から組合を排除しようとする支配介入であって、労組法7条1号及び3号に該当するか。)
(1)会社は、平成20年10月24日付自動退職通知によって、X1を失職させたところ、X1は、休職期間満了前である10月10日、会社に復職願を提出していたが、会社は、X1が復職の手続を行わなかったとして、休職期間の満了により、同人を失職させたのであるから、X1が復職願を提出した以降の両者間の経緯等について、検討する。
(2)会社は、X1の休職期間の満了日である10月23日の翌日の時点において、復職のために不可欠な産業医との面談を受けなかったことから、復職が可能であるとの要件が満たされないとして、就業規則の規定に基づき、X1を自動退職扱いとし、失職させたとみることが相当である。
X1が、10月23日が休職期間の満了日であることを知らなかった可能性は否定できないが、このことは、X1の休職期間の満了による失職を決定したことが不当労働行為であるか否かの判断に影響を与えるものではない。
(3)会社が就業規則の適用結果として、休職期間満了日をもってX1を退職としたことは、X1が組合員であること又はその組合活動を理由として行った不利益取扱い及び会社から組合を排除しようとして行った支配介入であると認めることはできない。よって、この点に関する組合の申立ては棄却する。
2 争点2(組合との団交中であるにも関わらず、会社が、X1に退職に関する書類の提出を求めるなどしたことは、労組法7条3号に該当するか。)
会社が、組合との間で未だ決着のついていない問題について、組合を無視してX1個人に働きかけ、意思決定を求めようとして、11.10確認通知をX1に送ったとみることはできず、むしろ10.24自動退職通知送付後、一定の時間が経過した後、単に退職に伴う通常の手続きの一環として行われたものとみることができるのであり、11.10確認通知のX1への送付について組合を弱体化させる支配介入に当たると認めることはできない。よって、この点に関する組合の申立ては棄却する。
3 争点3(会社が、X1が退職した旨の情報をホームページに掲載したことは、労組法7条3号に該当するか。)
X1は会社とのやりとりについて自らのホームページ等で情報提供を行っていたことから、マスコミ等から会社に対し、X1についての問い合わせがあっても不自然ではなく、会社が、会社とX1とは既に関係がなくなっている旨を公に周知する必要性を感じたとしても無理からぬところであり、また、ホームページに掲載された情報は、X1が退職したという事実とその日付のみであることを考え併せると、会社がX1に対して嫌がらせ、もしくは報復として、当該ホームページ掲載を行ったとまではいうことができず、組合に対する支配介入に当たると認めることはできない。よって、この点に関する組合の申立ては棄却する。
4 争点4(20年10月6日、27日及び同年11月19日に開催された団交における会社の対応は、労組法7条2号に該当するか。)
(1)組合は、会社が、組合の求める資料を提示しなかったこと、組合員の労働条件や退職根拠を説明しなかったこと、及び組合の理解を求めようとしなかったことが不誠実団交に該当する旨主張するので、検討する。
ア 組合の求める雇用契約書の提示については、本来X1が所持しているべきものであり、会社が、10.6団交でX1から示してもらうよう述べ、その提示を拒否したことのみをもって、会社の団交態度が不誠実であったとまでみることはできない。
イ 組合の求める就業規則の提示について、10.6団交で会社が、大阪キャンパスで閲覧するよう返答したことについては、会社には就業規則の労働者への周知義務はあっても、書面交付の義務まではなく、組合は実際に就業規則を閲覧できているから、会社の対応を不誠実であったとまで認めることはできない。
ウ 一方11.19団交については、組合が「自動退職」の根拠について就業規則等を提示して説明するよう、事前に通知で求めており、また、X1の退職とその根拠となる就業規則に関してが交渉の中心となることは当然予想されたにもかかわらず、会社は、就業規則を組合に提示せず、それに基づいて条文を示しての具体的な説明も行わなかったことが認められるから、このような対応は不誠実であったといわざるを得ない。
(2)組合は、会社が団交会場を1時間しか借りていないことを理由に団交を打ち切ったことが団交拒否であると主張するが、会社が団交会場を1時間しか借りず、それを理由に10.27団交及び11.19団交を終了したことは、組合に対する配慮を欠く面は確かにあるが、実際には、団交は3回開催され、一定、交渉も行われているのであるから、このことをもって、団交拒否もしくは不誠実団交に当たるとまでいうことはできない。
(3)組合は、会社が、事前にX1の復職後の業務を議題とすることに同意していたにもかかわらず、これを拒否したことが団交拒否に当たると主張するが、会社が、事前にX1の復職後の業務を議題とすることに同意していたからといって、10.27団交において、10.24自動退職通知を即時に撤回せず、X1の「『復職後』の業務」について組合との交渉を行わなかったことが不当であったとまでいうことはできない。
(4) 以上のとおりであるので、11.19団交において、会社が組合に、就業規則等を示して説明を行わなかった対応は、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
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