概要情報
事件名 |
際コーポレーション |
事件番号 |
中労委平成20年(不再)第47号 |
再審査申立人 |
際コーポレーション株式会社 |
再審査被申立人 |
連合大阪ハートフルユニオン |
命令年月日 |
平成21年12月16日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 X組合が、Y会社に対し、A組合員らに関するタイムカードの手交及び未払賃金の支払を協議事項とする団体交渉を申し入れたところ、Y会社が同申入れを拒否したことについて、Y会社の対応は不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、Y会社に対し、本件協議事項に関し誠意をもって団交に応じることを命じた。
3 Y会社は、これを不服として再審査を申立てたが、中労委はこれを棄却した。
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命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
1 本件団交申入れは未払賃金の支払等を協議事項とするものであるところ、本件のように、労働組合が組合員の退職前に未払賃金について団体交渉を申し入れた場合は、当事者間において当該未払賃金の金額、支払方法等について争いが継続している限り、当該組合員が退職したとしても、当該組合員の労働条件に関し未解決の問題が残されているというべきであるから、当該労働組合は、当該組合員の未払賃金について、「雇用する労働者」の労働条件等に関する事項として団体交渉を求めることができるというべきである。
2 A らの組合加入書の写しによれば、A らは、同書面の送信日として印字されている20年1月10日ころ、X組合に対し加入意思を示し、同日ころ、X組合に加入したものと認められる。
そして、本件協議事項がA らの未払賃金等に関するものであり、A らが、本件団交拒否までに、組合を通じ未払賃金に関する紛争の解決を求める意思を放棄したと認めるに足りる証拠は見当たらないから、X組合は、本件団交申入れに関し「労働者の代表者」に当たる。
3 本件協議事項は、労働条件の中核をなす賃金及びその重要な資料であるタイムカードの取扱いを内容とするものであるから、義務的団交事項に当たる。
団体交渉は、労働組合が独立した主体として、労働者に共通して問題となり得る事項又は個別の事項に関し、団体の団結権、争議権等を背景として労働条件の維持、改善を求める手段としての意義を有するものであり、協議事項について個別的な解決が可能か否かによってその意義が直ちに失われるものではない。
4 団体交渉の開催場所は、交渉ルールの一つとして労使双方が団体交渉や事前協議等を通じて調整すべき事項であり、使用者が、労働組合の要求する団体交渉の開催場所に不満があるからといって、直ちに団体交渉そのものを拒否することは原則として許されないというべきである。
5 本件協議事項については、Y会社とX組合との間で団体交渉が一度も行われていないから、大阪府労委が、Y会社に対し、タイムカードの手交及び未払賃金に係る事項に関し誠実に団体交渉に応じることを命じた初審命令は、これを維持するのが相当である。
A は、本件団交申入れの後の20年10月ころ、Y会社の未払賃金に関する紛争の解決をC 弁護士に委任したものと認められる。しかし、依頼者の委任に基づく弁護士の交渉権限は、団結権、争議権等を背景に労働条件の集団的な改善を求めることを本質とする労働組合の交渉権限と性質を異にするものであり、前者が後者を排斥し、あるいは前者が後者に優越すると解すべき法令上の根拠は見当たらない。したがって、A がY会社の未払賃金に関する紛争の解決をC 弁護士に委任したからといって、X組合の本件協議事項に関する固有の交渉権限が直ちに失われるものではない。
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掲載文献 |
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