労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 太平洋セメント
事件番号 中労委平成20年(不再)第20号
再審査申立人 全日本建設運輸連帯労働組合関東支部・組合員A、B
再審査被申立人 太平洋セメント株式会社
命令年月日 平成21年6月17日
命令区分 棄却
重要度 重要命令
事件概要 1 本件は、太平洋セメントが、他のセメントメーカー等と共同出資して設立したセメント運輸会社の解散に際して、セメント運輸会社の従業員である組合員A及びBに対し、太平洋セメントの子会社又は関係会社において採用するなどの雇用確保措置を講じなかったことが、不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件である。なお、セメント運輸会社は昭和39 年5月に設立され、平成18 年5月に解散したものである。
2 初審東京都労働委員会は、上記の救済申立てを棄却したところ、組合らはこれを不服として、再審査を申し立てた。
命令主文 本件再審査申立てを棄却する。(初審棄却命令を維持)
判断の要旨 当委員会も、太平洋セメントは、組合員A及びBにとって、労働組合法第7条の使用者に当たらないと判断する。その理由は、次のとおりである。
(1)使用者性の判断基準について
労働契約上の雇用主以外の者であっても、基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者は、その限りにおいて労働組合法第7条にいう使用者に当たると解すべきである。
組合らの主張のように、労働者の労働関係上の諸利益に何らかの影響力を及ぼしうる地位にある者をすべて含むと解すると、同法の使用者の範囲を拡大しすぎるものとなることから相当ではない。
(2)使用者性に係る事実の有無について
次の理由からみて、太平洋セメントが労働組合法第7条の使用者であるとする組合らの主張は採用できない。
ア 太平洋セメントのセメント運輸会社に対する指示は運送請負契約による注文者の指示にとどまり、セメント運輸会社は別個の事業者として業務を行っていたもので、太平洋セメントがセメント運輸会社の従業員の業務遂行について指示していたとはいえないこと
イ セメント運輸会社は太平洋セメント以外の業者からも運送業務を請け負っており、太平洋セメント関連の業務は、セメント運輸会社が請け負う運送業務の一部にすぎないことから、セメント運輸会社は太平洋セメントと専属的に取引を行っていたものではないことまた、セメントメーカー各社の内部輸送部門にすぎないとはいえないこと
ウ 太平洋セメントからセメント運輸会社に派遣された役員は、非常勤の取締役や監査役にすぎず、通常の業務執行や労務管理にはほとんど関与していないこと
エ セメント運輸会社の解散は、セメント運輸会社の株主総会で決議されたもので、その当時、太平洋セメントは既にセメント運輸会社の株式を所有していなかったのであり、太平洋セメントがセメント運輸会社の解散を決定したとはいえないこと
(3)結論
以上の点からすれば、太平洋セメントは、組合員A及びBの労働契約上の雇用主ではなく、また、同人らの基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有している者ということはできないから、労働組合法第7条の使用者には当たらない。
よって、太平洋セメントが同人らに対しグループ経営内における雇用確保措置を講じなかったことは、同条第1号及び第3号の不当労働行為には当たらない。
掲載文献  

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成18年(不)第25号 棄却 平成20年4月15日
 
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