概要情報
事件名 |
茨城県 |
事件番号 |
中労委平成20年(不再)第12号 |
再審査申立人 |
常南交通労働組合 |
再審査被申立人 |
茨城県 |
命令年月日 |
平成21年1月14日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
|
事件概要 |
1 本件は、県が、(1)県立養護学校及び聾学校(「学校」)のスクールバス運行業務を委託するバス事業者の選定方法を随意契約から一般競争入札に切り替え、常南交通株式会社(「常南交通」)の労働組合である組合の組合員を同社に解雇させるなどしたこと、(2)組合が申し入れた入札条件等に係る団体交渉に応じなかったことが不当労働行為に該当するとして、茨城県労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審茨城県労委は、本件救済申立てを却下したところ、組合は上記1(2)を却下した部分に不服があるとして、再審査を申し立てた。
|
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
(1) 設立経緯、資本・人事及び業務受発注面
常南交通は、養護学校教育の義務化が行われた昭和54年度に、県からの受託要請に応える形で設立された会社であるが、設立に際し県から出資や職員の派遣は受けておらず、また、設立後も運行業務の委託者ないし受託者であること以外に、県と同社との間には一貫して資本面及び人事面の関係は認められない。
(2) 賃金及び労働時間面
常南交通における従業員の賃金及び勤務時間は、同社の就業規則において定められており、同社がその就業規則を定めるに当たり、県が何らかの関与をしたことをうかがわせる証拠はない。
(3) 業務内容面
ア 担当乗務員の決定
運行業務委託契約書に付随する仕様書(「仕様書」)においては、受託者は、スクールバスの各運行コース(「コース」)の乗務員をその年度において同一の者とし、当該年度途中の変更には県の承諾が必要とされていたが、相当数の乗務員を変更した受託者もあり、また、県がその変更を承諾しなかったこともなかった。
また、学校の校外学習の際のバスの借上げについては、学校は乗務員の指定までは行っておらず、年度内は同一の乗務員とすることを求める仕様書は適用されていなかった。
イ 乗務員の業務内容の決定
仕様書においては、各コースごとに、配車するバスの型、始発バス停、運行経路、停留所数、学校発着時刻などが詳細に定められていたが、これらの規定は、県が、その運行業務の利用者である障害児童生徒の運送を安全かつ確実に行うために必要な事項を定めたものであって、委託の趣旨を超えるものではないことから、この規定をもって、県が乗務員の雇用主と同視できる立場にあったものとは認められない。
また、県は、受託者に運行業務に係る安全運行マニュアルの作成を求め、学校がその修正を指示していたが、県が示す当該マニュアルに盛り込んでほしい項目をどのように具体化して当該マニュアルを作成するかは、各受託者の裁量に委ねられていた。
さらに、常南交通の乗務員の研修参加は、乗務員の業務内容全体のうちのごく一部にすぎず、また、教職員のスクールバスへの同乗やスクールバスに装備されている携帯電話についても、県が、運行中の乗務員に対して、緊急時などにごく一時的に指揮命令をしたにすぎない。
(4) 結論
以上のことから、県が、常南交通の従業員の基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していたことを裏付けるに足りる事実があったとは認められないことから、県は、組合員(すなわち、常南交通の従業員)との関係において、労働組合法第7条の使用者としての地位にあるとはいえない。
|
掲載文献 |
|
|