労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]   [顛末情報]
概要情報
事件名 神谷商事
事件番号 中労委平成19年(不再)第66号
再審査申立人 神谷商事株式会社
再審査被申立人 労働組合東京ユニオン
命令年月日 平成20年11月12日
命令区分 棄却
重要度  
事件概要 本件は、会社が、18年度の春季要求、夏期一時金及び年末一時金等に関する団体交渉(以下「一連の団交」)において財務資料の提示及び常勤取締役の出席を拒否するなどした対応が、不当労働行為に該当するとして、東京都労働委員会に救済申立てがあった事件である。
 初審東京都労委は会社に対し、一連の団交に常勤取締役を出席させ、会社回答の根拠を具体的に説明し、財務資料を提示するか、これに代わるべき具体的数値を示すなどして誠実に対応すること及びこれに係る文書交付及び掲示を命じたが、会社はこれを不服として再審査を申し立てた。
命令主文 本件再審査申立てを棄却する。
 初審命令文主文第1項を「再審査申立人は、再審査被申立人が申し入れた平成18年度の昇給、夏期一時金及び年末一時金に係る団体交渉において、実質的な交渉を行える常勤取締役を出席させた上で、財務資料を提示するか又はこれに代わるべき具体的数値を示すなどして、賃金決定の根拠を具体的かつ合理的に示して説明し、誠実に対応しなければならない。」と訂正する。
判断の要旨 (1)会社の一連の団交における対応は不誠実か
ア会社回答の根拠の説明 
 組合が財務諸表などを開示要求したのは、 要求額の正当性や妥当性を検証するなどの必要があったからで相当である。そこで、会社は、資料などを示して具体的な説明を行い、見解の対立解消に努めるべきところ、その対応は、要求を拒否する回答書を読み上げた上、回答根拠を求められても極めて抽象的かつ不合理な回答をするにとどまり、財務資料も提示しなかった。 
 会社は賃金額を決定する「労働の価値」と称する指標について組合に対し、具体的説明をすべきところこれをせず、上記返答に終始するのみであった。 また、一連の団交において組合が要求した賃金額は、従前の妥結額に固執することなく改めて決せられるべきものであるし、過去の中労委和解において将来の賃金額の決定基準に係る合意は認められないから、会社がこれに依拠する理由はない。
イ団交出席者等の選定
 X部長らは、要求を拒否する回答書を読み上げ、回答は変更しないと返答するに終始するなど、組合と議論を交わすというよりも、会社の回答や方針を一方的に伝えることのみに終始していたと見てとれる。また、長期中断していた団交が14年6月に再開されて以降、組合側に、会社に常勤取締役の団交出席をためらわせる不穏な行動があったと認めるに足りる証拠はない。
 以上からすれば、一連の団交における会社の交渉態度は、労使の相互理解のために必要な行為をしなかったものであり、不誠実であるとして労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
(2)20年3、4月の団交における会社の対応による救済利益の消滅について
会社は、20年3、4月の団交の際、X部長を常勤取締役に就任させ、同取締役は会社回答の根拠を説明し、財務関係の数値を口頭で開示しているが、同取締役の答弁の趣旨は、賃上げ額は会社が独自に決めるものということに尽きるものであり、前年度と同回答になった根拠の説明をしていないことは、対応として不十分だといわざるを得ず、救済利益が消滅したとはいえない。
(3)以上のとおり再審査申立てには理由がないが、救済方法の内容をより明確にするため、初審命令主文第1項を訂正することとする。

掲載文献  

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成19年(不)第17号 全部救済 平成19年11月6日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約175KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。