概要情報
事件名 |
大阪府・大阪府教育委員会(平成18年度団交) |
事件番号 |
中労委 平成19年(不再)第57号 |
再審査申立人 |
大阪教育合同労働組合 |
再審査被申立人 |
大阪府、大阪府教育委員会 |
命令年月日 |
平成20年10月15日 |
命令区分 |
一部変更 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、大阪府(以下「府」)及び大阪府教育委員会(以下「府教委」、また、府と併せて「府ら」)が、大阪教育合同労働組合(以下「組合」)から申入れのあった非常勤特別嘱託員(以下「特嘱」)及び非常勤若年特別嘱託員(以下「若特」)の平成19年度報酬引上げ要求を議題とする団体交渉(以下「本件団交」)において、(1)本件団交事項につき決定権限を有しない府教委事務局教職員室教職員企画課長補佐(以下「教職員企画課長補佐」)を交渉担当者として出席させたこと、(2)合理的根拠を示すことなく、報酬引下げの当初提案(特嘱報酬月額2000円引下げ、若特報酬月額3000円引下げ)に固執するなどして、一方的に本件団交を打ち切ったことが労働組合法(以下「労組法」)第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、組合が救済(本件団交誠実対応及び文書掲示)を申し立てた事件である。 2 初審大阪府労働委員会は、組合が、地方公務員法(以下「地公法」)の適用される職員と労組法の適用される労働者の双方を構成員とするいわゆる「混合組合」であり、地公法の適用される職員が主体となっていること等を理由に、労組法の適用される構成員個人への不利益取扱い(同条第1号及び第4号)に関する申立人適格は認められるが、団体交渉拒否及び支配介入(同条第2号及び第3号)に関する申立人適格は認められないとして、組合の本件救済申立てを却下した。これを不服として、組合は、再審査を申し立てた。
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命令主文 |
(1)初審決定中、府を相手方とする救済申立てを却下した部分を取り消し、同部分に係る救済申立てを棄却する。 (2)その余の本件再審査申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
(1)組合の申立人適格等 大阪教育合同労働組合のようないわゆる「混合組合」(地方公務員法の適用される職員と労働組合法の適用される労働者の双方を構成員とする労働組合をいう。)も、労働組合法の適用される構成員に関わる問題については、同法第7条各号の別を問わず申立人適格を有する、と解するのが相当である。 このように解さないと、労組法の適用される組合の構成員は、労働組合加入の自由が保障されているにもかかわらず、自らの労働条件を労組法上の使用者に対する団体交渉により解決する手段を持ち得ないこととなり、不当労働行為救済制度の本来の趣旨である労働者の団結権の保護及び労働組合選択の自由の観点からして著しく妥当性を欠くこととなるからである。したがって、初審決定における組合の申立人適格を否定した判断は相当でない。 府教委は、府の執行機関の一部にすぎず、不当労働行為救済命令の名あて人たる法律上独立した権利義務の帰属主体となり得ないものと判断するのが相当であるから、府教委の被申立人適格を認めることはできない。
(2)府の不当労働行為の成否 ア 教職員企画課長補佐は、府の「管理職員等の範囲を定める規則」に基づき、教育長から交渉担当者としての指名を受けて、地公法の適用される職員の勤務条件に関する交渉に出席するとともに、労組法の適用される特嘱及び若特の勤務条件に関する本件団交に出席したものであり、関係部局との事前の協議及び調整の範囲内において回答及び交渉内容を決定する権限を有していた。また、「大阪府教育委員会事務局事務決裁規定」により、非常勤職員の報酬額の決定に関することについては、教職員企画課長の専決事項とされており、本件団交事項につき、同課長から同課長補佐に交渉権限が委任されていた。したがって、府が、同課長ではなく同課長補佐を交渉担当者として本件団交に出席させたことは合理性を欠くものとはいえない。 イ 10回にわたる本件団交の経過によれば、府らは、特嘱及び若特の平成19年度酬改定に関する提案について、その基礎となる考え方や提案理由を説明した上、これに対する組合の主張に対しては、関係部局も交えて検討を行った上で反論を行っており、また、府らの提案への対案として示された休暇制度及び勤務時間に関する組合の提案に対しても、やはり関係部局も交えて検討を行った上で、それが受け入れられない理由につき改めて説明を行っているのであって、かかる交渉態度は不誠実なものとは認められない。 また、組合は、平成19年3月15日の第9回団体交渉に至って、府らに対し、特嘱及び若特の同年度報酬引下げの提案を受け入れる代わりとして、休暇制度及び勤務時間に関係する対案を提示したが、府らは、翌月1日からの特嘱及び若特の任用手続の開始が迫っている中で、上記のように、組合のこれら提案に対しても説明や反論を行いつつ、自らの当初の回答を堅持していたのであるから、本件団交事項(これと一体をなす組合の対案を含む。)につき、両者間には歩み寄りの余地はなくなったものといわざるを得ず、なお交渉の余地があるにもかかわらず府らが一方的に本件団交を打ち切ったものとはいえない。 以上により、本件団交における府の対応が、不当労働行為に当たると判断することはできない。
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掲載文献 |
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