事件名 |
賛育会 |
事件番号 |
長野県労委平成13年(不)第2号
|
申立人 |
長野県医療労働組合連合会 |
申立人 |
賛育会豊野労働組合 |
被申立人 |
社会福祉法人賛育会 |
命令年月日 |
平成18年 2月22日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含
む) |
重要度 |
|
事件概要 |
本件は、法人が、①組合との十分な協議を尽くさずに就業規則を変
更し、新賃金制度を導入したこと、②新賃金制度の実施に伴い、夏季及び冬季一時金を減額支給したこと、③新賃金制度に関する
職能資格セミナーへの不参加を理由に組合役員を戒告処分にしたこと、④交渉権限のない者を代表者とする団交拒否及び交渉時間
の制限など不誠実に対応したこと、⑤労使慣行の変更及び就業10年目に昇格を行うことを定めた協約等の不誠実履行、⑥組合役
員宅への無言電話及び組合活動を誹謗中傷する電話をしたことが不当労働行為であるとして、争われた事件である。
長野県労委は、法人に対し、①誠実団交応諾、②組合を誹謗中傷するなど、組合運営への支配介入の禁止、③文書手交及び掲示
を命じ、組合役員への電話に係る申立ては却下し、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、平成12年4月1日から実施した新賃金制度につい
て、既に実施済みであり 団体交渉事項ではないなどとすることなく、誠意をもって団体交渉に応じなければならな い。
2 被申立人は、口頭や電話などにより申立人を誹謗中傷するなどして申立人の運営に支配介 入してはならない。
3 被申立人は、本命令書受領後速やかに、下記の文書(大きさはA4判とすること)を申立 人に手交するとともに、同一内容
の文書を縦55センチメートル、横40センチメートル(新聞紙1頁大)の白紙に楷書で明瞭に記載して、豊野病院、ゆたかの及
び豊野清風園におい て職員の見やすい場所に、き損することなく7日間掲示しなければならない。
記
平成 年 月 日
賛育会豊野労働組合
執行委員長 X1 様
長野医療労働組合連合会
執行委員長 X2 様
社会福祉法人賛育会
理事長 Y1
当法人が行った次の行為は、この度、長野県労働委員会により、不当労働行為であると認 定されましたので、今後再びこの
ような行為を繰り返さないよういたします。
(1)平成12年4月1日から実施した新賃金制度に関する団体交渉において不誠実な対応を とったこと。
(2)Y2ゆたかの看護課長が平成13年8月21日にX3賛育会豊野労働組合副執行委員長に かけた電話において、組合に
対する誹謗中傷や心理的圧迫を伴う発言を行ったこと。
4 申立人の申立のうち、Y3豊野病院事務長が平成12年8月12日にX1賛育会豊野労働組合 執行委員長にかけた電話に係
わる申立ては、これを却下する。
5 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 |
判定の要旨 |
2240 説明・説得の程度
2248 実質的権限のない交渉担当者
2244 特定条件の固執
法人は、新賃金制度の早期実施に固執し、団交に権限を授権していない施設の管理職を出席させ、新制度の内容を十分に説明をせ
ず、新制度の実施後も十分な説明を行っていないことからすると、法人の対応は労組法第7条第2号に該当するとされた例。
2901 組合無視
組合との合意のない新賃金制度について、就業規則を変更したことをもって労組法第7条3号に該当しないとされた例。
3106 その他の行為
法人が新賃金制度を導入して一時金を減額したことは、法人内に国家公務員の俸給表に準じて一時金を支払うという労使慣行を破
棄するものとは認められないから、新賃金制度を導入して労使慣行を破棄する不当労働行為に当たらないとされた例。
1400 制裁処分
組合が反対していることを理由に、新賃金制度に関する服務上の指示・命令である職能資格セミナーへの出席を拒否することは許
されず、セミナーへの出席を拒否した組合委員長X1及び副委員長X3を戒告処分に付したことは労組法第7条第1号に該当しな
いとされた例。
2304 経営事項
社員研修を目的とする新賃金制度に関する職能資格セミナーへの出席は、法人の経営上の判断に基づく通常の業務命令であり、セ
ミナー出席問題は団交事項に当たらないと認められ、組合の申入れた団交に応じないことをもって労組法第7条第2号に該当しな
いとされた例。
2248 実質的権限のない交渉担当者
法人は新賃金制度の実施後の団交には常務理事をはじめ法人本部の権限ある者を出席させているから、法人の対応をもって不当労
働行為といえないとされた例。
2212 交渉の場所・時間
法人と組合の間には団交の時間に関する協定は締結されていないから、法人が交渉時間を2時間としたいと申入れたことをもって
不当労働行為に当たらないとされた例。
1200 降格・不昇格
昭和55年7月に締結された昇格に関する協定は次第に守られなくなり、既に実質的に運用されていなかったと判断されるから、
法人が協定を適用しないことをもって不当労働行為に該当するとはいえないとされた例。
2240 説明・説得の程度
平成13年夏季一時金に関する団交には法人の人事担当であるY5課長が出席し、法人の収支を説明し、支給率について組合も合
意するなど実質的に協議が行われてきたと見るべきであり、団交が不誠実であったということはできないとされた例。
5200 除斥期間
5201 継続する行為
Y3事務長がX1委員長宅に平成12年8月に行った不当労働行為であるとする電話については、その後に同様の電話が反復継続
した事実もないので、労組法27条2項に基づき却下された例。
2620 反組合的言動
2610 職制上の地位にある者の言動
法人の設置する施設の施設長に次ぐY2課長が組合副委員長X3宅に夜間電話をかけ、長時間にわたり組合を誹謗中傷する発言を
行ったことは労組法第7条第3号に該当すると判断された例。
|
業種・規模 |
社会保険、社会福祉 |
掲載文献 |
|
評釈等情報 |
|