労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  中央自動車教習所 
事件番号  中労委平成14年(不再)第65号 
再審査申立人  株式会社中央自動車教習所 
再審査被申立人  全国一般労働組合石川地方本部 
命令年月日  平成17年 5月11日 
命令区分  再審査棄却(初審命令をそのまま維持) 
重要度   
事件概要  会社が、①平成13年春季賃金改定要求等に関する団体交渉に誠意をもって応じることなく、組合と妥結せずに一方的に賃金を改定した上、4月に遡及実施という従来の労使慣行に反し10月に実施したこと、②労働協約を破棄して新就業規則を実施したこと、③新就業規則による就業時間に就労しなかったことを理由に組合員の賃金をカットしたこと、④時間外労働の割増率を3割から2割5分に引き下げたこと、⑤ストライキに対する賃金カットの対象範囲を基本給から通勤手当を除く所定内賃金に拡大したこと、⑥組合のストライキ以降、組合集会のための会社施設の利用等を制限したり、朝礼において組合を誹謗中傷したことが不当労働行為であるとして争われた事件で、会社に対し、①平成13年春期賃金改定要求事項についての誠実断行応諾、②労働協約一部破棄通告及び労働協約全部解約通告の撤回、③組合員の就業時間不就労にかかる賃金カット分の支払(年5分加算)、④時間外労働の割増率を3割としての差額の支払(年5分加算)、⑤ストライキに対する賃金カット分の計算基礎を基本給としての差額の支払(年5分加算)、⑥朝礼等において組合活動を誹謗中傷したり、組合集会のための会社施設の使用等を禁止することによる支配介入の禁止、⑦文書手交・文書掲示等を内容とする一部救済初審命令を維持し、本検査審査申立てを棄却した。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  2240 説明・説得の程度
2249 その他使用者の態度
本件は春季賃金改定要求に関する労使交渉における一連の会社の対応が不当労働行為に該当するか否かを争点とするものであるから、冬時間制導入に一定の必要性、合理性が認められたとしても、会社が有額回答に至るまでの団交に形式的に応じて、有額回答できない理由の根拠、冬時間制及び査定給の導入の必要性や合理性を示す関係資料の提示に一切応じていないこと、回答額が同地区の他の自動車学校より低い理由及び賃金改定を4月に遡って実施できない理由について関係資料を提示していないこと、組合と妥結していない賃金改定を一方的に実施したこと等の一連の対応は、誠意をもって組合に説明したとはいえず、これを労組法7条2号に該当する不当労働行為であるとした初審判断は相当であるとされた例。

2305 労働協約との関係
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
会社が組合に対して昭和60年合意以来約16年間実施してきた就業時間を「労働協約の一部破棄」通告により変更し、また、労働協約の全部破棄を通告し、労働条件の変更となる新就業規則等を実施した行為は、会社が組合との団交を経ることなく一方的に冬時間制等を始めとする労働条件の変更を行ったものであるとともに、就業規則案の提示に抗議し団交申入れを行っている組合の存在を嫌悪し、かつ、組合のストライキを嫌悪しその報復措置として行ったものであって、組合の弱体化を企図した労組法7条2号及び3号に該当する不当労働行為に当たるとした初審判断は相当であるとされた例。

2625 非組合員化の言動
3106 その他の行為
組合員は会社が一方的に変更した就業時間に反対して従前の就業時間に従って退社したことに対し、会社は新就業規則等を適用して就業時間の一部が不就労であるとして賃金をカットしたと認められるところ、(1)新就業規則等の一方的な実施が不当労働行為と判断されること、(2)組合員らは従来の就業時間に基づく勤務体制の下にあること、(3)組合は組合員らを防衛するためストライキという形を整えて退社したものと理解されること等からすれば、就業時間の一部不就労を理由として賃金をカットすることは、新就業規則等の実施に反対する組合に対する報復措置であって、その弱体化を企図した労組法7条3号に該当する不当労働行為であるとした初審判断は相当であるとされた例。

2625 非組合員化の言動
3106 その他の行為
会社は、新就業規則等の実施により、時間外労働手当の割増率を3割から2割5分に引き下げたことが認められるところ、新就業規則等の一方的な実施が不当労働行為と判断されること、そうであれば、組合員らは労働協約に基づく割増率3割とする時間外労働手当を受け取るべきものであり、同手当の割増率を2割5分としたことは、新就業規則等の実施に反対する組合に対する報復措置であり、その弱体化を企図したものであると判断され、これを労組法7条3号に該当する不当労働行為であるとした初審判断は相当であるとされた例。

1204 スト・カット
2625 非組合員化の言動
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社は、分会結成以来、ストライキに対する賃金カットは基本給のみとしてきており、この取扱いは労使間の慣行として確立していたものと認められるところ、このような労使慣行を変更し、組合員に不利益をもたらすこととなる賃金カットの対象範囲の拡大を行うに当たっては、労使間で十分に協議する必要があるものと解されるが、会社は賃金カットの対象範囲拡大を提案し、話合いが必要と表明していたにもかかわらず、その後の団交において賃金カットの対象範囲拡大について一切言及しなかったこと、また、時間内組合活動についてもストライキに対する賃金カットと同じく対象範囲を拡大したものの、組合からの抗議を受けて、従前の基本給のみを対象として再計算し差額分を組合員に返還した上で、その後においてもストライキに対する賃金カットは対象範囲を拡大したままであることは、組合のストライキに対する報復措置として、ストライキに参加した組合員を不利益取り扱う意図をもってストライキに対する賃金カットの対象範囲を一方的に拡大したものと判断され、これを労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であるとした初審判断は相当であるとされた例。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社がストライキの際に組合員の待機場所として指導員室等の使用を禁止し、組合オルグの立ち入りを一切認めない等の施設使用の禁止措置をとったのは、組合員の賃金をカットしたり、組合と妥結に至らないまま賃金改定を実施し、組合の団交申入れにも応じないなど労使関係が緊迫した状況下で行われていることを併せ考えると、これら会社施設の使用禁止措置の中には首肯できる節もないではないが、実際には組合のストライキを奇貨としてことさら組合活動に制約を加えることを企図してなされたものとみるべきであって、これを労組法7条3号に該当する不当労働行為であるとした初審判断は相当であるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
Y1校長の朝礼における発言は、組合が時限ストライキを実施するなど労使関係が緊迫した状況下で行われていること及びY2社長の朝礼における発言は、賃金改定について妥結に至らない中で、組合の対応が賃金改定実施の遅延を招いたように批判していることからすると、組合を嫌悪し、全指導員を前にして公然と組合を批判することによって組合を誹謗し、組合軽視の姿勢をあらわにしたものであり、組合の弱体化を企図してなされたものとみるべきであり、これを労組法7条3号に該当するとした初審判断は相当であるとされた例。

業種・規模  教育(自動車教習所を含む) 
掲載文献   
評釈等情報   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約259KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。