労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  三一書房 
事件番号  中労委平成13年(不再)第45号 
再審査申立人  株式会社三一書房 
再審査被申立人  三一書房労働組合 
命令年月日  平成17年 4月20日 
命令区分  再審査棄却(初審命令をそのまま維持) 
重要度   
事件概要  会社が、経営再建過程において、(1)組合から申し入れのあった賃金カットの中止等を議題とする団体交渉に応じなくなったこと、(2)労働協約を即日破棄すると通告したこと、(3)組合員6名を懲戒解雇したこと、(4)組合員4名を停職処分に付したこと、(5)平成10年11月以降の賃金を組合員全員に支払わなかったこと、(6)組合及び組合員を誹謗中傷する文書を配布したこと等が不当労働行為であるとして争われた事件である。初審東京都労委は、会社に対して、(1)懲戒解雇された組合員6名に対する原職復帰とバックペイ、(2)申立を取り下げた2人を除く組合員10名へのバックペイ、(3)労働協約の解除がなかったものとしての取り扱い、(4)組合員を非難・中傷する文書配布により支配介入の禁止、(5)団体交渉の拒否及び第1項ないし第4項についての文書交付、(6)(4)を除く他の各項についての履行報告を命じ、その他の申立てを棄却した。

会社はこれを不服とし再審査を申立て、上記初審命令のうち(1)と(6)の取り消しと、再審査被申立人の本件申立てを棄却するとした。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  2130 雇用主でないことを理由
会社は、組合員が会社の代表取締役社長はY1代表ではなくY2であるとしているのであるから、Y1を代表者とする会社と組合員の間に雇用関係はないと主張するが、(1)組合員がY1代表を会社の取締役として認めない行動をとっているが、法的な雇用関係は法人である会社と組合員らの間に存在していたこと、(2)組合員らとY1代表の間の指揮命令関係が従前どおりではなかったとしても、もともと本件は、Y1代表が代表者としての権限に基づき会社の行為として行った行為が不当労働行為に当たるとして申し立てられていること、(3)申立て当時YY1は会社の法的代表であること等から、組合員と雇用関係はないとする会社の主張は失当であるとされた例。

2130 雇用主でないことを理由
会社は、組合及び組合員がY1代表の指揮命令に服さないと表明し、Y1代表の命令に従っていないのであるから、本件申立ては義務を履行しないで権利のみを行使するものであって、権利の濫用であると主張するが、組合がY2を代表と認めて、Y1代表の指揮監督に服さなかった背景には、会社の株主間で争いがあったため、組合がY2を代表者と考えたことに理由がないとは言い切れないこと、組合が行った行為の中には行き過ぎた面も認められるが、取締役が団交に応じないまま、一方的に本社社屋をロックアウトし、組合員らを懲戒処分に付し、賃金を支払わなかった等々の当時の労使関係に徴すれば、 組合がY1代表の命令に従わなかったことをもって、本件申立てが権利の濫用ということはできないとされた例。

2249 その他使用者の態度
2120 交渉委任
2230 不穏当な態度
2235 その他組合の態度
会社が問題視している団交の態様は、(1)長時間の軟禁状態といいうるものではなく、組合員が自らの要求の実現を迫ったり、また、退出を希望した取締役の前に立ち一時制止したことはあったものの、実力で退出を阻止したとか、暴力がふるわれたとの疎明はないこと、(2)本社社屋のロックアウトまでの間に14回の団交申入れに一度だけ書面で回答したのみで、一度も団交に応じていないこと、(3)ロックアウトの翌日に突然取締役がそろって辞任し、弁護士に団交を委任したとの意思表明は、基本給カットや労働協約改定についての一定の白紙撤回合意を反故にするとともに、団交における追求を避けるための便法であったと指弾されても仕方のないものがあること等から、会社が団交に応じなくなった理由として挙げる主張は、いずれも団交を拒否する正当な理由ということはできないとされた例。

2304 経営事項
2245 引き延ばし
2235 その他組合の態度
組合の申し入れた団交議題は、いずれも組合員の労働条件に密接に関係するものであり、また、組合の団交申入れ先が会社の法的な代表者であるY1ではなくY2であったという事情を勘案しても、初審命令が、組合が14回にわたり申し入れた団交に会社が応じないことは不当労働行為に当たるとし、その救済として文書交付を命じたことは相当であるとされた例。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社は、自ら定めた就業規則に反する手続と内容で以て組合員6名を突如各懲戒解雇処分に付したこと、さらに当時、会社と組合が厳しく対立していたことを勘案すると、経営再建策をめぐって活発な活動を展開する組合と組合員らを嫌悪した会社が、組合員らの言動をことさら大げさに捉えて懲戒解雇という過酷な処分を課して不利益に取り扱うとともに、もって組合の活動を弱体化することを企図したものであって、各懲戒処分を不当労働行為に当たるとした初審判断は相当であるとされた例。

3103 労働協約締結をめぐる行為
会社は、一方的に労働協約を破棄すると通告したのみで、(1)労働協約に定める有効期間延長の協議も行わず、予告期間を設けることなく即日破棄を通告していること、(2)会社が同通告をした理由として挙げる行為は、労働協約を即日破棄するほど重大な事情とは認められないこと、(3)通告に至るまでの労使関係をみると、労使の対立が激化していたと認められること、(4)会社は通告の翌日に本社事務所のロックアウトと組合三役の懲戒解雇を行っており、通告はむしろ翌日に行ったロックアウトが協約違反とならないようにするためのものであったと推測するのが合理的であること、(5)会社による破棄通告は、経営再建策をめぐって活発な活動を展開する組合と組合員らを嫌悪し、その活発な活動の根元となっている労働協約を即日破棄することにより、もっぱら組合活動の弱体化を意図したものであり、これを組合運営に対する支配介入行為に当たるとした初審判断は相当であるとされた例。

1400 制裁処分
4600 対抗的団体に対する措置(解散・団交禁止・協定破棄・経費援助の停止等)に触れた例
4422 その他
組合員6名に対する懲戒解雇を含む各懲戒処分が不当労働行為である以上、その救済として各懲戒処分がなければ得られたであろう賃金相当額の支払いを命じ得ることはいうまでもなく、退職した組合員3名についても、申立てが取り下げられていない以上、在職中の賃金について救済を命じるのが相当であり、本件ロックアウトはその正当性も疑わしい上、会社の再建を進める上で組合の存在が障害となることから組合活動の拠点である本社社屋から閉め出し、かつ、賃金不払い措置によって組合員の生活を困窮させ、団交を求めストを反復継続する組合の闘争力を減殺することを主に狙ったものと判断せざるを得ず、したがって、本件ロックアウトを理由とした賃金不払いは組合員らに対する不当労働行為であって、ロックアウト期間中も賃金相当額の支払いを命じた初審判断は結論において相当であるとされた例。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
2625 非組合員化の言動
会社が3回にわたり文書を全社員に配布したことは、全社員に会社再建に向けた協力を要請したものと認められる記載もあるが、文中の表現の大部分は、不穏当な表現を用いてことさらに組合や組合員らの言動を非難・中傷したものと認められ、これら3文書の配布は、取締役らが出社しなくなった日以降のことであることからすれば、自らは出社することなく、全社員に協力を要請するという形を取りながら、実は組合員らの離反を企図したものと判断せざるを得ず、したがって、これら3文書の配布行為を支配介入行為に当たるとした初審判断は相当であるとされた例。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献   
評釈等情報   

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