労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本サイロ 
事件番号  中労委 平成13年(不再)第18号 
再審査申立人  日本サイロ株式会社 
再審査被申立人  全日本倉庫運輸労働組合同盟 
再審査被申立人  日本サイロ労働組合 
命令年月日  平成16年 7月 7日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)人事制度の改定を契機に平成10年7月1日付で組合員である専任部長のX1を参与に、X2ら5名の専任課長を参事にそれぞれ降格発令し、賃金・一時金を減額したこと、(2)同年10月1日付及び11年1月5日付で組合委員長X1及び組合員X2に職場待機を命じ、同年11月22日にX1らに自宅待機を命じたこと、(3)交渉員を制限するなどして誠実に団交に応じなかったこと、(4)36協定の更新手続から組合員を除外したこと等が不当労働行為であるとして、争われた事件で、千葉地労委は、会社に対し、(1)上記(1)の降格発令の撤回、原職復帰及びバックペイ、(2)X1及びX2に対する職場待機命令・自宅待機命令の撤回及び復帰業務の誠実協議、36協定更新手続から組合員を除外することによる支配介入の禁止を命じ、その余の申立てを却下ないし棄却した。会社は、救済部分を不服として再審査を申し立てたが、中労委は、初審命令の一部を変更し、その余の再審査申立ては棄却した。 
命令主文  Ⅰ 初審命令主文を次のとおり変更する。
1 再審査申立人日本サイロ株式会社は、再審査被申立人日本サイロ労働組合の組合員6名に対する次の平成10年7月1日付け異動発令がなかったものとして取り扱い、原職に相当する職務階層に就けなけれぱならない。
 また、これに伴い、原職に相当する職務階層に就けるまでの間、当該異動発令がなければ同人等が受けるはずであった月例賃金及び夏期・年末一時金と既支給額との差額を支払わなけれぱならない。
 ア X1専任部長の参与への異動発令
 イ X2専任課長の参事への異動発令
 ウ X3倉庫課専任課長の参事への異動発令
 工 X4業務課専任課長の参事への異動発令
 オ X5サイロ課専任課長の参事への異動発令
 力 X6サイロ課専任課長の参事への異動発令
2 再審査申立人日本サイロ株式会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、再審査被申立人に下記内容の書面を手交するとともに、縦90センチメートル以上、横80センチメートル以上の白紙の全面に下記内容を墨書し、再審査申立人会社本杜と千葉事業所のそれぞれ社屋内であって従業員が見やすい場所に、10日間以上掲示しなければならない。
    記
 日本サイロ労働組合
   執行委員長 X1 殿
 全日本倉庫運輸労働組合同盟
   中央執行委員長 X7 殿
  年 月 日

        日本サイロ株式会社
         代表取締役 Y1  印

 中央労働委員会によって、当社が行った下記(1)の行為は、労働組合法第7条第1号に、下記(2)の行為は同条第3号にそれぞれ該当する不当労働行為であると認定されました。
 当社は、中央労働委員会の命令書主文に従い、その内容を誠実に履行するとともに、今後このような行為を繰り返さないように致します。
 (1)平成10年7月1日付けで貴組合の組合員X1氏を専任部長から参与に異動発令したこと、及び同X2氏を専任課長から、同X3氏を倉庫課専任課長から、同X4氏を業務課専任課長から、同X5氏をサイロ課専任課長から、同X6氏をサイロ課専任課長からそれぞれ参事に異動発令したこと。
 (2)平成11年2月15日付け36協定の締結に際し、その締結当事者である労働者の過半数代表者の選出手続に、貴組合の組合員を参画させなかったこと。
  (注:年月日は手交又は掲示した日を記入すること。)
3 平成8年10月1日付けのX3倉庫課長の同課専任課長への異動発令及びX4業務課長の同課専任課長への異動発令に係る救済申立てを却下する。
4 その余の救済申立てを棄却する。
Ⅱ その余の再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  5124 その他の審査手続
本件初審申立ては、組合の委員長らが代理人を伴って地労委に出頭して申し立てているから、初審申立書の押印が代理人のみであっても、施行通達が不許可とする代理人による申立てに当たらないとされた例。

1200 降格・不昇格
平成10年異動発令は、会社が、組合に加入した後も脱退することなく組合に留まり、労基署に申告するなど活発な組合活動を展開した管理職組合員及び組合を嫌悪し、組合員X1ら6名を専任部長・専任課長から参与・参事に降格発令して経済的不利益を課したものであり、これは労組法7条1号の不当労働行為に該当するとされた例。

4413 給与上の不利益の場合
組合は、後日、平成10年異動発令による参与等への降格に伴う減額賃金の緩和措置についての確認書を締結し、同年人事制度改定を内容とする就業規則の変更届へ同意する旨の意見書を提出しているものの、同年異動発令による個々の組合員の不利益は残存しているので、このことに係る被救済利益は失われないとされた例。

1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員X1及びX2に対する職場待機命令及び自宅待機命令は、会社の退職勧奨に応じない同人らを業務に従事させないなどの精神的苦痛と経済的不利益を与えるとともに、同人らを見せしめ的に遇することにより組合活動の弱体化を企図したもので、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たるとされた例。

2900 非組合員の優遇
平成11年36協定の更新については、組合が過半数割れしており36協定締結当事者ではなくなっているものの、当該協定更新手続きに組合員を参画させなかったことは、組合員であるが故に一従業員として参画できる手続きから排除したものと言わざるを得ず、労組法7条3号の不当労働行為に当たるとされた例。

1401 労務の受領拒否
4414 その他の不利益の場合
5008 その他
組合員X1及びX2に対する職場待機命令及び自宅待機命令は不当労働行為に該当するが、会社とX1らは別件民事事件において和解を行い、和解条項も履行されていることからすると、この部分の被救済利益は既に失われたとして、このことに係る初審命令の救済部分が取り消された例。

4610 P.Nに併せて文書手交を命じた例
平成11年36協定の更新手続に組合員を参画させなかったことは不当労働行為に該当するが、同12年以降の更新手続には組合員も一従業員として参画する方式に改められ、同様の対応が繰り返されるおそれもないので、初審命令のうち支配介入の禁止を命じた部分を取り消し、文書掲示及び交付を維持した例。

業種・規模  倉庫業 
掲載文献   
評釈等情報  中央労働時報 2004年 10月10日 1033号 23頁 

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