概要情報
事件名 |
東芝 |
事件番号 |
中労委 平成13年(不再)第22号
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再審査申立人 |
株式会社東芝 |
再審査被申立人 |
X1 外9名 |
命令年月日 |
平成16年11月 4日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、組合員ら10名に対し、資格、職群・等級、役職、基準賃金及び賞与について不利益な取扱いをしたことが不当労働行為であるとして、争われた事件で、神奈川地労委は、会社に対し、組合員ら10名に対し、(1)平成6年7月1日以降、それぞれの同期同学歴者の中位に相当する資格、(2)平成6年度以降、それぞれの同期同学歴者の中位に相当する職群・等級、(3)平成6年8月30日以降、それぞれの同期同学歴者の中位に相当する役職、(4)平成6年度以降の昇給及び賞与の査定の平均、としてそれぞれあるものとしての取扱い、(5)(1)ないし(4)による是正後の賃金及び賞与の差額分の支払(年5分加算)(5)謝罪文の提示を命じた。 会社は、これを不服として再審査を申し立てたが、中労委は、資格、職群・等級、役職の同期同学歴者の中で中位者相当の取扱いについては、組合の組合員が就いている資格を限度とすること及び文書掲示を文書手交に変更するほかは、その余の救済申立ては棄却した。 |
命令主文 |
Ⅰ 初審命令主文を次のとおり変更する。 1 再審査申立人株式会社東芝(以下「東芝」という。)は、再審査被申立人X1、同X2、同X3、同X4、同X5、同X6、同X7、同X8、同X9及び同X10(以下「X1ら10名」という。)に対し、平成6年7月1日以降、それぞれの同期同学歴者の中で中位者が就いている資格にあるものとして取り扱わなければならない。但し、東芝労働組合(以下「東芝労組」という。)の組合員が就いている資格を限度とする。 2 会社は、X1ら10名に対し、平成6年4月1日以降、それぞれの同期同学歴者の中で中位者が就いている職群・等級にあるものとして取り扱わなければならない。但し、東芝労組の組合員が就いている職群・等級を限度とする。 3 会社は、X1ら10名に対し、平成6年8月30日以降、それぞれの同期同学歴者の中で中位者が就いている役職あるいはこれに相当する職にあるものとして取り扱わなければならない。但し、東芝労組の組合員が就いている役職を限度とする。 4 会社は、X1ら10名に対し、平成6年4月1日以降、第1項ないし第3項で是正された資格、職群・等級及び役職あるいはこれに相当する職にあるとして、それに相当する基準賃金(扶養加給、特殊作業加給を除く。)及び賞与を支払わなければならない。 5 会社は、X1ら10名に対し、第1項ないし第4項による是正後の賃金及び賞与の額との差額に相当する額に、年率5分相当額を加算した額の金員を支払わなければならない。 6 会社は、X1ら10名に対し、本命令受領後、速やかに下記の文書を手交しなければならない。 記 当社が、貴殿らの資格、職群・等級、役職、基準賃金及び賞与について不利益な取扱いをしたことは、中央労働委員会において労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 平成 年 月 日 X1 殿 X2 殿 X3 殿 X4 殿 X5 殿 X6 殿 X7 殿 X8 殿 X9 殿 X10殿 株式会社東芝 代表取締役Y1 印 7 X1ら10名のその余の救済申立てを棄却する。 Ⅱ その余の本件再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
4418 継続する行為を認めた例
5201 継続する行為
本件において、給与に関する申立てが前1年以内にあり、賞与は、給与の一部である本給及び仕事給を算定の基礎としているため、昇給後の本給及び仕事給に格差があるとすれば、必然的に格差が発生するのであるから、賞与についても同様であり、いずれの申立ても却下事由には該当しないとされるとされた例。
0120 政治(党)活動
0125 組織・職場活動(含証人の行為)
0200 宣伝活動
0211 その他の組合活動
組合員ら10名の活動の内容を見ると、新聞の発行、配布などについては、職場従業員が自主的に発行したもので、その内容は職場内部の問題提起が中心であり、また、労働基準監督署に対し申告をしたことなどの活動は、従業員の勤務条件の改善等を目的とするものであり、いずれも、組合員の労働条件の維持改善その他の経済的地位の向上を目指し、かつ、所属組合の自主的・民主的運営を志向している行為と認められるので、新聞の発行・配布、労働基準監督署への申告等について政党支部名等を冠したものがあるとしても、全体として組合活動であると判断すべきであるとされた例。
0200 宣伝活動
0211 その他の組合活動
1202 考課査定による差別
3700 使用者の認識・嫌悪
会社では、X1ら10名の処遇は、非組合員層を含む役職における格差では1名を除くと最低に格付けされており、昇給、資格、職群・等級が要素となる基準賃金は他の1名を除き、実在者の最低賃金に近くか賃金の最低額になっていること、従業員の処遇は、一定の職群・等級及び役職までは大部分の者が昇格等をするという意味での年功的な運用が行われていたと認められること、組合員らの業務遂行状況には各人ごとにばらつきが見られるものの、各人とそれぞれの同期同学歴者とを比較してその業務遂行状況が顕著に劣るものとはいえず、資格、職群・等級等についてこれほどまでの差をつける理由は認められないことから、本件処遇格差は、会社が、特定の思想を持つ従業員の組合活動を労務管理上格別に注視し、これら従業員を排除していく中で、職場新聞等編集委員会名義の新聞の配布、労働基準監督署等に対する申告等の組合活動を行っていたX1らについて、会社の施策に対立する独自の組合活動を行う者として嫌悪し、その活動を封じ込め、あるいは弱体化を意図し、その一環としてX1らの資格等について不利益な取扱いをしたことによるものであると認められ、不当労働行為に該当するものと解するのが相当であるとされた例。
4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
是正後の賃金及び賞与の額と現に支払った額との差額に相当する額に、年率5分相当額の付加を命じた例。
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業種・規模 |
電気機械器具製造業 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
中央労働時報 2005年 2月10日 1037号 22頁 
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