労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  金星函館ハイヤー 
事件番号  北海道地労委 平成14年(不)第18号 
申立人  全国自動車交通労働組合総連合会・函館金星自動車労働組合 
被申立人  金星函館株式会社 
命令年月日  平成16年 4月23日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)1人組合となったことを理由に団体交渉を拒否していること、(2)新賃金体系の導入に係る団体交渉において組合の資料提出要求を拒否したこと、(3)組合の合意がないまま賃金体系を変更したことが不当労働行為であるとして争われた事件で、会社に対し、(1)組合員が1名であることを理由とする団体交渉の禁止及び賃金体系見直しに係る誠実団交応諾、(2)(1)の履行に至るまでの間の、旧賃金体系に基づき算定した賃金相当額と既支給額との差額支払、(3)文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が一人組合であるとして団体交渉の当事者性を否定し、申立人の申し入れる団体交渉を拒否してはならず、改めて申立人と平成14年賃金体系見直しに係る団体交渉を行い、平成8年9月3日付け和解協定書を踏まえ、見直しの必要性について、経営資料を提示し具体的に説明するなどして誠実に対応しなければならない。
2 被申立人は、審問終結時に申立人組合に加入していた組合員に対し、平成14年8月16日から前項の履行に至るまでの、旧賃金体系に基づき算定した賃金相当額から被申立人が新賃金体系に基づき申立人組合員に支給した額を控除した金額を支払わなければならない。
3 被申立人は、次の内容の文書を縦1メートル、横1.5メートルの大きさの白紙にかい書で明瞭に記載し、被申立人会社正面玄関の見やすい場所に、本命令書写しの交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。
          記
 当社が貴組合に対して行った次の行為は、北海道地方労働委員会において、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにします。
          記
1 貴組合との平成14年賃金体系見直しに係る団体交渉において、平成8年9月3日付け和解協定を遵守せず、見直しの必要性を示す経営資料の提示を拒むなどの不誠実な対応をし、さらに、貴組合が一人組合であるとして団体交渉の当事者性を否定し、貴組合の申し入れる団体交渉を拒否したこと。
2 貴組合と誠実な団体交渉を行わないで、貴組合員に対する賃金体系の変更を実施し、貴組合の運営に支配介入したこと。
 平成 年 月 日(掲示する初日を記入すること。)
全国自動車交通労働組合総連合会・
函館金星自動車労働組合
 執行委員長 X1 様
            金星函館ハイヤー株式会社
             代表取締役社長 Y1 
判定の要旨  5140 資格審査
本件申立時、会社の従業員である組合員は一人であったが、定年退職した組合員は退職後も組合員として残ることとし、組合費も支払い続けたこと等からすると、本件審問終結時に組合に加入していた組合員は2名であると認められ、組合規約には組合員の範囲を明確に定める規定は存在してなかったが、当該定年退職者が組合に留まることは組合規約に違反するものではなく、さらに資格審査申請時の組合規約においては、従業員以外の組合加盟についての規定が整備されているから、組合が申立適格を有することは明らかであるとされた例。

2240 説明・説得の程度
2300 賃金・労働時間
企業が賃金体系の見直しをするに当たり、特にそれが労働者にとって不利益な点を含むものである場合、労働者に対し、合理性・必要性を十分説明するとともに、必要な資料を示しつつ労働者側の理解を求めるのが一般的であるのに、会社は何ら資料を提示しておらず、当該見直しの必要性を示す経営資料の提出を拒んだ会社の行為は、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2625 非組合員化の言動
2901 組合無視
会社が賃金体系の見直しについて必要な説明を欠いたまま、提案に同意していない組合員に対して賃金体系の変更を実施したことは、資料提出に関する和解協定をないがしろにするという、実質的な組合無視と言える会社の態度と相まって、組合員に不安と動揺をもたらしたもので、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

3106 その他の行為
会社支配人が、新賃金体系について他組合と合意した事実を組合に告げて組合の理解を求めようとした事実はうかがえるが、他方会社から団体交渉を求めるなど組合の理解を得ようとする姿勢も認められ、会社が他組合等と合意したことを理由として組合に合意を強制しようとしたとまではいえないとされた例。

2620 反組合的言動
組合は一人組合に当たらないから、会社が組合の当事者性を否認し、団体交渉を拒否した行為は、組合をいたずらに嫌悪し、これまでの労使関係を無視したもので、労組法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

4505 その他
4617 その他
組合の求める救済内容は、誠実団交応諾、合意なきままでの賃上げを強行しての支配介入の禁止であるが、会社の姿勢に鑑みて、救済命令を実効性あるものとするためには、単に改めて誠実な団体交渉を実施することを求めるのみならず、賃金体系の見直し前の状態に復したうえでの組合との団体交渉を命じるのが相当であるとして、賃金体系見直しに係る誠実団交応諾、当該団交応諾履行に至るまでの間の旧賃金体系に基づき算定した賃金相当額と既支給額との差額支払を命じた例。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献   
評釈等情報   

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