概要情報
事件名 |
一ツ橋電植 |
事件番号 |
東京地労委 平成12年(不)第71号
|
申立人 |
東京中部地域労働者組合 |
被申立人 |
有限会社一ツ橋電植 |
命令年月日 |
平成16年 3月16日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
|
事件概要 |
会社が、頸肩腕障害により休業し、労災認定を受けた組合員Nに関して、組合との団交により月例賃金等と労災給付金との差額の支払や職場復帰訓練(リハビリ就労)を保障すること等を内容とする労使協定が締結されたが、その後、会社がNのリハビリ就労等に関する団交に応じず、労使協定を履行しなくなったことが不当労働行為であるとして争われた事件で、会社に対し、リハビリ就労の継続を不可能としたこと及び団交拒否に関する文書手交を命じ、その余の申立ては棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人有限会社一ツ橋電植は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人東京中部地域労働者組合に交付しなければならない。 記 年 月 日 東京中部地域労働者組合 執行委員長 X2 殿 有限会社一ツ橋電植 清算人 Y1 当社が、(1)貴組合の組合員X1氏の職場復帰訓練(リハビリ就労)の継続を不可能としたこと、(2)貴組合が平成12年1月15日及び2月22日付けで申し入れたX1氏の職場復帰訓練に関する団体交渉並びに13年10月10日及び同月17日付けで申し入れた同年9月28日の会社のX1氏に対する対応及びX1氏の職場復帰訓練に関する団体交渉に応じなかったことは、東京都地方労働委員会において不当労働行為であると認定されました。 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。 (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。) 2 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 3 その余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
2249 その他使用者の態度
会社が、組合との団体交渉を拒否する理由として挙げているものは、全て会社の対応にも責任の一端があるものか、あるいは具体的な疎明がないものであり、団体交渉を拒否する正当な理由とはならないのであるから、組合が申し入れた組合員Nのリハビリ就労等に関する団体交渉に会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉で、労組法第7条第2号に該当するとされた例。
2901 組合無視
会社の団体交渉等への対応については、会社は、組合との団体交渉を全く否定し、組合の存在を無視していたとか、組合の交渉力を失墜させるべく積極的な行為をなしたとみることはできず、支配介入に当たるとはいえないとされた例。
3106 その他の行為
会社は、差額補償などを内容とする協定書等の内容を不完全ながらも履行していたが、その後も受注量の減少からの経営悪化の一途をたどり、ついに解散決議を行うに至ってるのであるから、会社は協定書等の内容を完全に履行することが困難になっていたとみるのが相当であって、会社に組合との協議を経て問題を解決する姿勢がなかったとはいえず、協定書等の履行に関する会社の対応が支配介入に当たるとはいえないとされた例。
2620 反組合的言動
会社が組合に対して「要求を通すためには手段を選ばないというような集団は人間的に信用できない」旨の文書を送付したことは、組合の情宣活動をとらえたものと考えられ、その活動には適切さを欠くと評価されてもやむを得ない面が含まれていたものと考えられること、他方、それ以外に組合を誹謗中傷した事実は認められないこと等からすると、これが組合の弱体化を企図した支配介入に当たるとはいえないとされた例。
1203 その他給与決定上の取扱い
会社がNに対する賃金等と労災給付金との差額補償を中止し、他の従業員より早く社会保険の脱退手続を行った主たる原因は、会社の深刻な経営不振であるとみるのが相当であり、Nに不利益をもたらしたとしても、同人が組合員であることないし組合の方針に従って活動したことをもって不利益に取り扱ったとまではいい難く、不利益取扱いに当たるとはいえないとされた例。
1203 その他給与決定上の取扱い
会社は、Nに社会保険料本人負担分を請求したが、Nが会社に返還した事実はないこと等から、会社が社会保険料本人負担分を請求した行為は不利益取扱いに当たるとはいえないとされた例。
1302 就業上の差別
会社がNの職場復帰訓練(リハビリ就労)に対して嫌がらせ等の対応を行い続けた根本的な原因は、組合がNの労災問題に関与してきたことで次第に問題の解決が困難となり、組合を嫌悪するに至ったとみるのが相当であり、会社がNのリハビリ就労の継続を不可能にしたことは、労組法第7条第1号の不利益取扱いに該当するとされた例。
4614 文書手交のみを命じた例
会社は法人として存続しているものの事実上倒産状態であり、現在事務所も閉鎖して事業を行っておらず、事業再開の見通しもたたないことから、会社が団体交渉に応じなかったこと及びリハビリ就労の継続を不可能にしたことについての救済としては文書手交を命じるのが相当であるとされた例。
|
業種・規模 |
出版・印刷・同関連産業 |
掲載文献 |
|
評釈等情報 |
 
|