労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  中央自動車教習所 
事件番号  石川地労委 平成15年(不)第1号 
申立人  全国一般労働組合石川地方本部 
被申立人  株式会社中央自動車教習所 
命令年月日  平成16年 3月 9日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が、(1)平成13年度及び平成14年度一時金、平成14年及び平成15年賃上げ等に関する団体交渉において、回答の根拠を示さないなど誠実に対応しなかったこと、(2)労働協約を破棄して労働時間等を一方的に変更し、労働協約に沿って就労した組合員の賃金をカット等したこと、(3)組合員の賃上げ・一時金について差別的取扱いをしていること、(4)ストライキに対する賃金カットの対象範囲を基本給から所定内賃金に拡大したことが不当労働行為であるとして、争われた事件で、会社に対し、(1)誠実団交応諾、(2)労働協約解約通告等の撤回、賃金カット相当額等の支払(年5分加算)及び組合との協議を経ない労働条件変更の禁止、(3)一時金差額・賃金差別相当額の支払(年5分加算)、(4)ストライキに対する賃金カット差額相当額の支払(年5分加算)、(5)文書手交・掲示等を命じ、その余の申立ては棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、次の事項について、一時金及び賃上げの回答並びに「冬時間制」実施について、それらの根拠となる資料を提示のうえ、具体的に十分な説明を行なうなどして、速やかに、かつ、誠実に団体交渉を行なわなければなない。
 (1)申立人の平成13年11月5日付け要求書における年間一時金及び平成15年11月6日付け要求書における年間一時金について
 (2)申立人の平成14年3月5日付け要求書における賃金改定、平成15年3月5日付け要求書における賃金改定について
 (3)被申立人が実施している「冬時間制」について
2 被申立人は、申立人に対して平成14年4月18日付け「労働協約解約通告書」、同日付け「労働協約期間満了解約通告書」及び同月20日付け「労働協約期間満了解約通告書の説明」の各通告を撤回のうえ、
 (1)申立人組合員X1ら18名に対して行った就労時間不就労に係る賃金カット(平成14年5月分~7月分、10月分~12月分、平成15年1月分、2月分、4月分、5月分、10月分、11月分)を撤回し、同人らに対して上記賃金カット相当分として、別表(略)に掲げる金額から、賃金カットを行なったそれぞれの労働日の就労について、同人らに新就業規則に基づき支給された時間外労働手当を控除した金額及び控除後の金額に対する各控除日の翌日から各支払済まで年率5分を乗じた額を支払わなければならない。
 (2) 申立人組合員X1ら19名が平成13年10月3日から平成14年1月末、同年14年4月1日から同年6月末まで、同年10月1日から平成15年1月末まで、同年4月1日から同年6月末まで、同年10月1日から同年11月末までに間、9限・10限に就労した時間外手当として、同人らに対し、別表(略)に掲げる金額及びこれに対する各支払日の翌日から各支払済まで年率5分を乗じた額を支払わなければならない。
3 被申立人は、時間外労働手当の取扱いなど労働条件の変更にあたっては、申立人組合と協議することなく、これを行なってはならない。
4 被申立人は、申立人組合員X1ら18名に対して、各人に平成13年年末一時金の差額として31,324円及びこれに対する各支払日の翌日から各支払済まで年率5分を乗じた額を、また、平成14年夏季一時金の差額として29,751円及びこれに対する各支払日の翌日から各支払済まで年率5分を乗じた額をそれぞれに支払わなければならない。
5 被申立人は、申立人組合員X1ら18名に対して、各人に賃金差別の額として、平成15年4月分以降の賃金について、各支払日において各人の賃金の上積み是正額として10,700円及びこれに対する各支払日の翌日から各支払済まで年率5分を乗じた額をそれぞれに支払わなければならない。
6 被申立人は、申立人組合員に対し、平成15年5月分及び8月分の賃金支給際の、ストライキ実施時の賃金カット分のうち、通勤手当を除く所定内賃金と基本給差額として、別表(略)に掲げる金額及びこれに対する各控除日の翌日から各支払済まで年率5分を乗じた額を支払わなければならない。
7 被申立人は、本命令書(写)受領後速やかに、下記文書を申立人に手交するとともに、縦1.5メートル・横1メートルの大きさの白紙に明瞭に記載して、被申立人自動車学校指導員室の見やすい場所に10日間毀損することなく掲示しなければならない(文書に記載する日付は、被申立人が申立人に対して本文書を手交・掲示した日とすること)。
           記
                    平成16年  月  日
   全国一般労働組合石川地方本部
   執行委員長   X2  様
                   株式会社中央自動車教習所
                     代表取締役 Y1
   当社が貴組合に対して行なった下記の行為は、石川地方労働委員会において労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認定されました。今後このような行為を行わないようにします。
            記
  1 平成13年度年間一時金、平成14年度年間一時金、平成14年春季賃金改定、平成15年春季賃金改定及び「冬時間制」について誠実に団体交渉に応じなかったこと。
  2 貴組合員が9限・10限就労しなかったことに対して、新就業規則を適用して、平成14年5月分以降も賃金カットを行なったこと。
  3 貴組合員が9限・10限就労したことに対して、新就業規則を適用して、平13年10月分以降時間外労働手当を支払わなかったこと。
  4 貴組合と協議することなく、時間外労働手当取扱い等の労働条件を変更したこと。
  5 平成13年年末一時金及び平成14年夏季一時金を支給の際、貴組合員への支給額について、その他の従業員と差別的に取り扱ったこと。
  6 貴組合員とその従業員との間で賃金を差別的に取り扱うために、部署の新設等を装うことにより、非組合員に対し「役職手当」を支給したこと。
  7 貴組合が平成15年4月及び7月に実施したストライキに対する賃金カットの対象について、団体交渉を尽くさないままに、従来の基本給から通勤手当を除く所定内賃金に変更したこと。
  8 被申立人は、前各項を(ただし、第3項を除く)を履行したときは、当委員会に対して、速やかに文書で報告しなければならない。
  9 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  2240 説明・説得の程度
2300 賃金・労働時間
会社が、一時金の支給及び賃金改定に関する団交において数十回の団交を重ねたものの、一時金の支給及び賃金の改定を強行し、組合との合意を得るために回答額についての資料を提示するなどの努力が認められず、形ばかりの団交を取り繕っていることから、かかる会社の行為は、誠意をもって交渉したとは言い難く、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2240 説明・説得の程度
2300 賃金・労働時間
「冬時間制」の実施は労働条件の変更そのものであり、労働条件の変更として大きな影響をもたらすものであるから、会社は、団交で組合の理解を得るよう努力する必要があるにもかかわらず、組合の代案の協議等での会社の団交の対応は、十分資料等を提示し、誠実に対応、説明しようとしたと認められないから、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2305 労働協約との関係
2901 組合無視
3103 労働協約締結をめぐる行為
会社が行った、労使協議を行うことなく実施した労働協約の期間満了通告による解約手続きは、適切妥当とはいえず、労働協約を破棄し、一方的に新就業規則で定める就業規則を適用しようとすることは著しい組合軽視であり、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

1204 スト・カット
従来就業時間外とされていた時間について、ストライキ通告を行い、就労しなかったことに対して会社が賃金カットを行ったことは、同時間は労使慣行上は就業時間外であり、元来就業の義務はないから、本件賃金カットは、労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

2901 組合無視
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
労働条件の重要な部分である時間外労働手当の取扱いの変更について、組合と協議を行わないことは、組合を著しく軽視しており、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
2900 非組合員の優遇
3106 その他の行為
一時金の支給にあたり、組合員と非組合員では支給方法が異なるため、組合に加入していた者が組合を脱退することによって、場合により一時金が減少することを会社は知っていたにもかかわらず、脱退することで一時金が減少する者について、支給額を減らさず、組合在籍時より高い一時金を支給することは、組合を脱退することによって結果的に生じる一時金における不利益を補うもので、組合からの脱退者を有利に取り扱い、組合脱退を促す効果があるものと判断されるから、労組法第7条第1号び第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

1203 その他給与決定上の取扱い
1604 その他
3700 使用者の認識・嫌悪
会社には、会社が主張するような職制が現実にあったとは考え難く、非組合員らが入社4、5年のうちに、係長職を経ることなく、いきなり新設の課長補佐職に任命されていることは、賃金差別が表面化しないための手段と推認でき、会社が、新たに管理職を設け、役職手当を支給したことは、組合員に対する不利益取扱いであるとともに、組合を嫌悪し、活動に制約を加えることを目的としたもので、労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為事件であるとされた例。

1203 その他給与決定上の取扱い
1604 その他
営業活動の実体があったことは否定できず、非組合員に対する営業手当の支給額を直ちに賃金差別であるとみることはできないが、組織として営業課を新設する必要があったと認めることはできないから、営業課長手当、営業課長補佐手当の支給は非組合員を優遇するために昇進を装った手当の支給であり、労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為事件であるとされた例。

1204 スト・カット
会社が賃金カットの対象をそれまでの基本給から通勤手当を除く所定内賃金に変更したことは、既に別件命令で不当労働行為であると判断されているところであるから、同命令以降、会社が組合との間でどのような交渉、協議を行ったかが問題とされるが、この点について、賃金カットの対象の変更を、その後においても組合と協議した事実は認められないから、本件賃金カットは、労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとされた例。

業種・規模  教育(自動車教習所を含む) 
掲載文献   
評釈等情報   

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